絵には人柄が表れる
長年フリーランス写真家として活躍されてこられたお客さまが、写してこられた題材は多種多様に渡ります。
中には雑誌社の企画などもあって、当時存命だった世界の画家の巨匠を撮るシリーズも、そんな企画のうちのひとつだったそうです。
お客さまが撮られたのはスペインの巨匠。同じシュルレアリスムの画家ですが、その作風、そして人柄は対象的なおふたり。
まず撮影に行かれたのは、ヒゲの形を特徴的にセットしている奇人と評される巨匠。
その巨匠の家の門扉からは高台にある住居につながる階段が見える構造。
呼び鈴を押して待つことしばらく。
その階段を下りてくる巨匠は、ヒゲはいつものカタチにピシッと固め、白いガウンを羽おり、片手には金色のステッキを持って突きながら、もう片手は巨匠の歩みを支えるように寄り添う美女の肩にかけて降りてこられたそうです。
それはもう、いかにもその巨匠らしい登場シーンに、お客さまも感動されたそうです。
そしてもうひとり。こちらもシュルレアリスムの画家として有名なカタルーニャの巨匠。
その巨匠の家は周囲をぐるりと塀で囲まれた佇まい。呼び鈴を押すと、庭師らしき人物が扉を開けてくれました。
訪ねた理由を伝えると、庭師然とした男性は、無口のまま「ついてこい」というような合図とともに歩き出したので、お客さまと同行の方はその庭師然とした男性の後をついていったそうです。
前を行く男性に案内された部屋に入り、椅子に座ると、その庭師然とした男性はふたりの前にある椅子に腰掛けたそうです。
そう、その庭師のような男性こそが巨匠だったのです。
その当時、カタルーニャの巨匠は体調が思わしくないために、撮影の約束の時間は30分とされていたそうです。
撮影時間の30分が過ぎると、主人の体調を気遣う奥方が「時間を過ぎましたよ」と来るのですが、当の巨匠はその奥方を手で「まぁまぁ」と制して、とにかくいろんなものを見せてくれたり、話してくれたそうです。
それは奥方が来るたび繰り返され、本当に長い時間、応対くださったそうです。
巨匠たちのまさに評判どおりの振る舞いの対比にとても感動した
と話されるお客さまの話を聞くだけで、私は感動致しました。
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