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京都の休日

「これ、誰だかわかる?」

フリーランス写真家として活躍されてこられたお客さまが撮られた1枚の写真
焦点が合っているのは白髪の好々爺然とした外国の方
山高帽やちょび髭はないものの、笑顔の優しい目には見覚えが・・・

無声映画時代の世界三大喜劇王のおひとりでありました。

喜劇王は大の親日家としても知られていて、日本にも何度か訪れています。
この写真は戦後に来日されたときの1枚。

場所がちょっと変わっていまして、そこは銭湯の脱衣所。
喜劇王は脱衣所の椅子に腰掛けて、隣にはパートナーの女性。
その御大を遠巻きに囲むように居合わせた人々。隣の脱衣所のからは壁の上から身を乗り出して見ている人も。

撮影されたのは、戦後なお日本の風情が残されている、ということで喜劇王のお気に入りの場所であった京都。

京都に移動してきた喜劇王。
その日は朝から、ホテルの部屋から喜劇王が出てくるのを今か今かと待ち構えるカメラマンがホテルのロビーに集結していたそうです。報道会社や出版社のカメラマンがロビーの一等席を占拠していたため、フリーランスのお客さまは、地下街に通じる従業員が使う階段近くの腰掛けに陣取っていたそうです。

ふと、地下街に通ずる階段の方を見ると、なんと、地下街を歩いていく喜劇王の姿が
お客さまは、誰にも気付かれないように静かに階段を下りて行かれたそうです。

「だから、この日は僕だけが撮影できたんだよ」

その写真はパパラッチ的なものではなく、とっても和やかな雰囲気の写真。
喜劇王の京都の人との自然な交流が収められていました。
いかにも人を食った喜劇王らしいエピソードとともに収められた写真でありました。

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