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縁は異なもの
初めてご来店のお客さま
そんなお客さまと話をする流れになる時があるのですが、そういう時は
「あぁ~、やっぱり」
と不思議な縁を感じることが多いものです。
あるサローネ(私たちのカフェでは“イベント”のことを“サローネ”と呼んでいます)に初めて参加くださったお客さまの職業が「扇絵師」だと聞いて、私の脳裏にある記憶がよみがえり、それが滔々と口からこぼれ出しました。
それは有料CS放送で企画放送されていた「美術のゲノム」という番組。
この番組は、経年変化して製作当時と色が変わってしまった美術品を、デジタル技術を駆使して創られた当時の色を再現して観賞しよう、という美術番組。
私の口をついて出た話は、俵屋宗達の「風神雷神図屛風」が取り上げられた回のこと。
番組ではデジタル復元師の方がさまざまな識者に歴史的見地を確認しながら、復元をしていくのですが、「風神雷神図屛風」の時は浅草の扇屋の主が識者として関わっていました。
そして、出来上がった製作当時の色合いのデジタル復元「風神雷神図屛風」。
「これは扇絵師出の俵屋宗達の作だから、屏風も扇に見立てて、扇の要の位置に座して観るのがいい」
と扇屋の主が言われ、その位置に座し、デジタル復元屏風を前にした扇屋の主が発した最初のひとことが私は忘れられなかったのです。
そのひとこととは
「・・・・欲しい!」
扇絵というと、それを思い出しました。
と私が滔々としゃべり終えたとき、その扇絵師のお客さまがひとこと、
「それ。うちの師匠です。」
残念ながら、師匠は鬼籍に入られていらっしゃったのですが、お客さまと私、二人して
「師匠に言わされましたね。「ちゃんと覚えとけよ!」って感じで」
と笑い合いました。
死せる孔明生ける仲達を走らす
ならぬ
死せる師匠生ける弟子を通わす
というご縁話でした。