見たこともない表情
「昭和の風貌(かお)展」という写真展が開催されたことがあります。
昭和を代表する6人の写真家によって撮影された、俳優、スポーツ選手、作家、政治家など、激動の中で新たな時代を切り開いていく「昭和の風貌(かお)」とも言えるヒーロー・ヒロインたちのモノクロ写真が一堂に会した写真展で、フリーランス写真家のお客さまが撮られた写真も展示される、ということで観に行きました。
フリーランス写真家のお客さまが撮られた人物は、
よく知っているものの、この方のこんな表情見たこともない
という写真がたくさんありました。
そのひとつは、ノーベル文学賞受賞者の方。
国語の教科書などでおなじみの和装でちょっとしかめっ面のご表情はどこえやら。
洋装で、ご自分の所蔵の書画骨董でしょうか?を一面に広げて、指をさしている表情は実に柔らかで、「こんな一面もお持ちなのだなぁ~」と、写真を見ていて気持ちがほっこりしました。
そしてもう一方、写真を見ていて気持ちがほっこりしたのが、総理大臣もお務めになられた方の写真です。
こちらは打って変わって、和装でこたつ
傍らにはにこやかに微笑まれるおくさまがいらして、お食事中の風景。
その方の見慣れた口を真一文字にキッと結んで、血気あふれる表情はどこえやら。
写真に撮られていることなどお忘れになられたかのような、とても和やかな表情をされています。
それもそのはずで、この方の写真をご覧になられた実の娘さんが、フリーランス写真家のお客さまに、
「パパのこんな表情、見たことない」
とおっしゃられたのだそうです。
「だから、その方に写真を焼いてさしあげたんだよ」
と、後日談を教えてくださいました。
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