【C向けサービスのPMF達成ステップ】④トラクションを作る
ベンチャーキャピタルW fundの佐藤です。
スタートアップやメガベンチャーでPM・事業企画の経験を経て、現在シードアーリーステージの主にBtoC/BtoBtoCサービスを中心に投資活動をしています。
前回は「ステップ③熱狂にフォーカス」と題してユーザーを満足させるプロダクトを作るプロセスについてご紹介しました。
今回はPMF達成の「ステップ④トラクションを作る」を整理していきたいと思います。トラクションはPMFの証左として重要です。
toCプロダクト開発/運営中の皆さんのヒントになれば幸いです!
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1. トラクションとは
「トラクション」とは、事業成長の兆しや顧客需要を示す成長のことを言います。トラクションを示すことで事業の成長性を説得力を持って社内外に伝えることができます。
下図は弊社W fund支援先「パラレル」がPMFを確信した際のトラクションです。マッチングサービス形式のVer.1アプリから、ボイスチャットの音質問題にフォーカスしたVer.2アプリを出した結果DAUが急増(インタビュー)、事業の成長性を力強く示すことが出来ています。
「トラクション」を⽰す指標
トラクションを示す指標は、売上やMAUといった価値提供ができていることがわかる本質的な指標で、それが増加することで成長を予期させるものであると説得力があります。
逆に確からしさがわからない指標としては、ユーザーが時間的・金銭的コストを払っていないもの、例えば「SNSのいいね数」「登録ユーザー数」「安過ぎるクーポンを出した上での販売数」などがあります。
ビジネスモデルや事業状況により以下のような指標が用いられます。
「トラクション」を⽰す成⻑率
急成長の水準として、プロダクト初期のベンチマークとして有名なものが、過去Y Combinatorに参加した優れたスタートアップの成長率をもとにした「週次7%の成長率」です。
プロダクト初期は、"【C向けサービスのPMF達成ステップ】③熱狂にフォーカス"のnoteにあるように少人数のユーザーでも愛されるプロダクト作りが肝要であるため、例えば絶対値で「来月に5万MAU」を目標として、顧客セグメントや広告効果が不明瞭な中で強引なPRや広告等を行うよりも、先週・先月からの成長率を指針に、目の前の熱量の高いユーザーに向き合い以下のような観点からプロダクトの改善を推し進めていきます。
大きく成長していった人気C向けアプリの初期のユーザー獲得手段も、以下のように目の前のユーザーに直接向き合い、スケールしない泥臭い手法が中心となっています。自身のサービスの"N1(一人の顧客)"に有効な手法はどれか参考にしてみてください。
2. 成長エンジンの検討
上記のようにスケールしない泥臭い手法で初期顧客セグメントにリーチし、"【C向けサービスのPMF達成ステップ】③熱狂にフォーカス"のnoteにあるプロダクト開発や検証を進め、「流入 ~ 継続利用 ~ 収益化」に至るファネルを改善、ユーザーに愛されるプロダクトとなりActivation(活性化)やRetention(継続)が改善され「バケツの穴」が埋まってきたらスケールに向けた活動に進みます。
Activation・Retentionの改善はこちらのnoteも参考にしてみてください。
"C向けサービスの成長エンジンは4つしかない"
C向けサービスが大きく成長していく時、主要な持続的成長エンジンは以下の4つに集約されると言われます。企業はアクティブユーザー・コンテンツ・資金を燃料としてエンジンに投入し成長サイクルを回していきます。
以下、それぞれの成長エンジンについて紹介します。
「バイラル」
既に初期のユーザーから口コミが発生している場合や、SNSのようにユーザーが多い程に価値が増すプロダクトの場合は、バイラルで事業拡大を加速できる可能性があります。
バイラルでのユーザー獲得数を増やすためには招待の数や頻度を改善することが重要になります。以前noteで大きく以下5つの方向性に分類、整理してみましたので参考にしてみてください。
「SEO」
ユーザーが直接解決策を想起せず検索し問題の解決に取り組むサービスの場合はその検索プラットフォームで上位に表示されることが重要になります。
SEOについては多くの対策ノウハウが書籍等でまとめられているので具体的な改善方法はそちらを参考に頂ければと思いますが、初期のスタートアップとしては、まずどんなカテゴリー/キーワードを狙うべきなのか、狙ったカテゴリーで上位を取っていけるのか、エコノミクスが合うのかを確認することで、メインの成長エンジンとして機能し得るのか検証していくことをオススメします。
「パフォーマンスマーケティング」
サービスのLTVが十分に高い場合はfacebookやgoogle等の広告を活用することでユーザーを集めていくことができます。顧客のライフタイムバリュー(LTV)と顧客獲得コスト(CAC)については、一般に「LTV/CAC>3」が健全な水準と言われています。(回収期間についてはこちらもご参考まで)
類似サービスや足元の実績を基に、自身のサービスがどのくらいのLTV(ARPUや継続率等)であるのか、CACはどのくらいの水準になるか、またLTV/CACを競合よりも高めていける優位性を作れないか、といったポイントを整理しメインの成長エンジンとして機能し得るのか検討してみましょう。
「セールス」
toCサービスの拡大期に主要なチャネルになることはあまり多くありませんが、対象となるユーザーやキーマンをリストアップできる場合は直接営業していくことが早いと考えられます。この場合も、営業やCSの人件費に基づきCACを算出しLTV/CACが健全な水準となるか検討してみましょう。
3.マーケット x プロダクト x マネタイズ x チャネルのフィット
大きく成長するサービスは上記の成長エンジンを最大限活用できていますが、そのためにはマーケット(ターゲット顧客/課題) x プロダクト x マネタイズ x マーケティングチャネルが整合している必要があります。
下図に資産運用サービスを例に出していますが、マーケット(ターゲット顧客/課題)次第で、フィットするプロダクト提供価値、マネタイズ方法、成長エンジンがそれぞれ異なることがわかるかと思います。
自身のサービスが、どのくらいのユーザー数xARPUの構成で売上数億~数十億円を形作るのか、ARPUも踏まえどの成長エンジンを活用しその規模までスケールしていくのか、その道筋やエコノミクスの検証を進めていきましょう。
バイラルで成長するモデルならバイラル係数が、広告やセールスで成長するモデルならLTVとCACの改善が、またSEOの場合は狙っているプラットフォームで検索上位を取れるかが重要となります。
それが確認できればスタートアップ・フィット・ジャーニーのいわゆる「Product Market Fit」ができている状態です。
また、スケールにあたり求められる組織体制も、マーケット(ターゲット顧客/課題) x 提供プロダクト x マネタイズ x マーケティングチャネル次第で異なります。
PMF後は"採用しないと顧客の要望に対応できない"状態になりますので、このフェーズになれば成長戦略と並行して「スケールのための組織設計」も本格的に進めていきましょう。
4. まとめ
今回は事業成長の兆しや顧客需要を示す「トラクション」について紹介しました。トラクションを確認することで事業の成長性を説得力を持って社内外に伝えることができます。
以下に検討ポイントをまとめます。参考にしてみてください。
これまで全5回の本シリーズで整理してきた内容をクリアにできると、"【C向けサービスのPMF達成ステップ】⑤PMFを示す"のnoteにて、ご紹介した以下の「PMF」に至る状態となってるかと思います。
アイデアを考え・ユーザーを理解し・解決策をユーザーが満足するプロダクトに落とし込み・実績を示すトラクションを作る、このプロセスにはメジャーなC向けサービスでも数ヶ月~数年かかっていますので、根気強く進めていく必要があります。
そのためシード期はその時間軸を踏まえた資金繰り、バーンレート、チーム体制を逆算して考える必要があります。例えば、ランウェイが18ヶ月ならシリーズA調達活動に3~6ヶ月かかるとして12ヶ月強でトラクションを示す必要があります。初期版のプロダクトリリースにかける時間、顧客獲得にかける時間を12ヶ月後から逆算して計画しておきましょう。
最後に、PMFに至ることでスタートアップは急成長していくことになりますがPMFは一度達成すれば終了するものではなく、マーケットの変化や、新しい顧客セグメントへの拡大に伴い何度も行っていく必要があります。以下のFacebookの例でもグローバル化、モバイル化と何度もPMFを達成し急成長を続けていることがわかるかと思います。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
引き続き、起業家・PM・エンジニアの方々がベストプラクティスをシェアしていけたらと思っています!
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それでは次回のnoteでまたお会いしましょう!
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