【C向けサービスの成長エンジン】バイラルの伸ばし方
W fundの佐藤です。
スタートアップやメガベンチャーでPM・事業企画の経験を経て、現在シードアーリーステージの主にBtoC/BtoBtoCサービスを中心に投資活動をしています。
今回も最近複数のtoCサービス運営者と話題に上がった、バイラル改善の方向性について整理したいと思います。バイラルはtoCサービスの重要な成長エンジンですのでプロダクト開発/運営中の皆さんのヒントになれば幸いです!
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1. C向けサービスの成長エンジン
まず、バイラルの重要性についておさらいです。
"C向けサービスの成長エンジンは4つしかない"
C向けサービスが大きく成長していく時、主要な持続的成長エンジンは以下の4つに集約されると言われています。企業はアクティブユーザー・コンテンツ・資金を燃料としてエンジンに投入し成長サイクルを回していきます。
バイラル :口コミ,招待等
コンテンツ :SEO,YouTube等
パフォーマンスマーケティング:リスティング広告等
セールス :アウトバウンド,インバウンド等
これはユーザーが新サービスを知る経路が限られていることが影響しています。最近使い始めたサービスのある方はそのきっかけを思い出してみてください、おそらく"友人からオススメされたから"、"Youtubeで見かけたから"、"Googleで上位に表示されたから"といったパターンが多いのではないでしょうか?
瞬間的なユーザー獲得の起爆剤としては、PR・メディア掲載・イベント・有名人に取り上げられる等々(19のトラクションチャネル参照)多くのアイデアがあるかと思いますが、持続的にある程度のボリュームのユーザー獲得ができるチャネルは上記の4つに集約されるということは私の経験からも納得感があるかと思います。(事業立ち上げ初期においてはむしろスケールしない泥臭い施策が重要です!)
中でも今回取り扱うバイラルは、ユーザーからマネタイズをしていないサービスや、競争激化や規制等によりCPAが高騰しているサービスにとって外せない成長エンジンとなります。
2. バイラルの計測方法
バイラルを測る指標としてバイラル係数(Kファクター)があります。
K(バイラル係数) = ユーザー1人当たりの招待数 x コンバージョン率
新規ユーザーが更に新規ユーザーを呼ぶことを踏まえると、計算上バイラル係数が1以上であればユーザー数が指数関数的に増えていくこととなり(対象セグメントが飽和するまで)、バイラル係数が1未満であれば等比級数の和( 初項÷(1-K) )までユーザーが増えていくことになります。
バイラル係数のベンチマークは、各サービス特性や同じサービスでも成長段階によって異なるため、一概には言いづらいですが0.5~1.0くらいで良い数値と言われることが多いかと思います。
仮にK=0.5であった場合でも、ある時点で獲得した1,000人のユーザーが計算上バイラルのみで2,000人まで増えることとなりますので、ユーザー獲得のベースラインを引き上げ獲得コストを押し下げる効果がわかるかと思います。
計算式にはあらわれてませんが、そもそも招待を送るアクティブユーザー数(= 新規ユーザー数 x その時点の継続率)が新規ユーザー獲得数の前提となっていることにはご注意ください。
また、現実的には、ある瞬間に全ての友人への口コミが完了するというよりも、じわじわ増えていくことが予想されますので、ここでもアクティブユーザーを保持するリテンションレートが重要となります。
3. バイラル強化の検討ポイント
バイラルでのユーザー獲得数を増やすためには、計算式の通り、" 1人あたりの招待数 x コンバージョン率"のいずれかの変数を改善することとなります。今回は特に"1人あたりの招待数"の数や頻度を改善する方向性についてフォーカスしたいと思います。
まず、バイラルの形は大きく以下の5分類に分けられます。それぞれのパターンを活用しバイラルを加速する施策を考えることになります。
バイラル① 内在的バイラル
内在的バイラルとは、複数人での利用を前提としたサービスに見られるバイラルの形です。個人で閉じるものでなく、友人や仕事相手と一緒に使うことで価値が発揮される類のもので、5分類の中でも最もバイラル係数が高く、PMFしたサービスは指数関数的に成長していく傾向があります。
- LINE、Slack、oVice、TimeTree等。
例えば、カレンダー共有アプリの「TimeTree」は元々家族とスケジュールを共有するために登場したサービスなので、1人がDLすれば必然的に数人が使い始めることとなります。さらにTimeTreeは家族だけで閉じずに、指数関数的にサービスを広げるため、家族以外の職場や各種団体でのユースケースを認知させることでバイラル係数を高めています。
バイラル② コラボレーション
コラボレーションによるバイラルとは、"個人利用でも価値あるサービスに友人・同僚を招待することで一層価値あるサービスになる状態"のことをさしています。内在的バイラルのように共同利用を促進するサービス設計とすることで、本来個人個人に届ける必要があったサービスが、バイラルやネットワーク効果を生み出し急成長することができます。
- Googleドライブ、Miro、PayPay等。
例えば、Googleドライブは個人のファイル保管やドキュメント作成ツールとしても利便性の高いものですが、共同編集者をインバイトすることでファイルの共有や編集効率がより高まるサービスとなっており、バイラルでの利用者獲得や一人一人のストレージ使用量を増加しアップセルに繋げることが期待されます。
バイラル③ インセンティブ
次は招待にインセティブを付けることでバイラルを加速させる方向性です。
インセンティブには、招待した人・された人がサービスをお得に利用出来るようになる経済的なものや、希少なサービスに限定アクセスできるようになるようなプレミア感/FOMOを利用したものがあります。
- Dropbox、Uber、Clubhouse等。
例えば、Clubhouseでは著名人のアーカイブが残らないトークが聞けるサービス設計に加え招待枠を制限しその希少価値を強調することで招待する人・される人の利他的利己的インセンティブを金銭を使わず最大化していました。
バイラル④ 埋め込み
"埋め込み"とは、通常の生活の中にサービスを埋め込み自然にサービスを見かけさせるという意味で使っています。
例えば多くの人が以下のような形で生活の中で自然に新サービスを見かけたことがあるかと思います。
・iPhoneからメールを送ると「iPhoneから送信」と文末に表示
・写真加工アプリで加工した写真に透かしロゴが入る
・TikTokやnoteで作られたコンテンツをシェアする
・友人の家でフードデリバリーサービスを体験する
オンライン・オフライン問わずユーザーが、友人や同僚に製品を使用していることを示すチャンスや話題にするチャンスがあります。
バイラル⑤ 純粋な口コミ
口コミの多くは、期待を超える驚くべき体験をした際に誰かに伝えたくなる思いから発生します。プロダクト側で意図することが難しい類のものですがどんなサービスでも起こり得るものです。
基本的な施策としては、感動した際にシェアしやすいようにSNSボタンを配置したり、シェアしやすいスクショにデザインしておくといった環境を整える施策や、フォロワーが多いユーザーに取り上げてもらうといった施策がよく取り入れられています。
より本質的な施策として、歯科矯正D2C「Oh my teeth」のインタビュー記事を紹介します。
上記の通り、Oh my teethはユーザーが抱える課題やサービスに期待してくれているポイントをクリアにした上で、感動につながる体験をKPIで設定し再現性ある感動を作り上げることで多くのクチコミを生み出していることが分かります。
4. まとめ
今回はtoCサービスのバイラルを改善する方向性について紹介しました。これら5つのパターンは組み合わせることも可能です。
以下に検討するためのポイントをまとめます。参考にしてみてください。
バイラル① 内在的バイラル
・端的に何と言って友人をサービスに誘わせますか?
・ユースケースを別の友人/家族/同僚等に横展開できますか?
バイラル② コラボレーション
・共同利用することで便利になることや楽しくなることはありますか?
・スムーズに共同利用モードに移行できますか?
バイラル③ インセンティブ
・招待する人/される人の利己的/利他的なインセンティブは何でしょう?
・それはLTVと見合っているコストですか?
バイラル④ 埋め込み
・ユーザーが友人にサービスの利用を示すチャンスはありますか?
・ユーザーが自社サービスで画像/動画/文章を作るメリットはありますか?
バイラル⑤ 純粋な口コミ
・ユーザーが感動する体験は何ですか?
・感動した際にシェアしやすい状態になっていますか?
最後に、プロダクトにバイラルによる成長サイクルを組み込むにあたっては、単に流行のプロダクトを真似るだけでなく、プロダクトの本質的な価値と整合したバイラル設計が大切です。
有料のプロダクトを友人に勧め友人に価値を理解してもらうためには経済的インセンティブを付けることが有効でしょうし、映えるコンテンツを作成するサービスであれば他SNSにシェアする際に自社サービスを話題にするチャンスがあります。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
この他にもバイラルの上手な事例をご存知の方はぜひ教えてください!起業家・PM・エンジニアの方々がベストプラクティスをシェアしていけたらと思っています!
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・9月14日(水) 17:00~17:45
それでは次回のnoteでまたお会いしましょう!
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