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#004 『myogとガレージブランド』

もともと何かに嵌ると、とことんやりたくなる性分ではあると思う。そして、熱しやすくて冷めやすいとか、興味のあることばかりやるとか、言われることもある。

キャンプを始めて、御多分にもれずお気に入りのギアを集め始めた。アウトドアのセレクトショップに足しげく通い、ネットで情報を集め、YouTubeの「買ってよかったもの10選」などでインプットを増やした。

一口にキャンプと言っても、色々な方向性があることを知った。スノーピークに代表されるオートキャンプは、車で行き来することが前提なのでギアが多少大きかったり重くても問題ないし、それよりも快適性や性能重視。逆に、山に登って過ごすための装備を目指すならば、快適性を多少削ったとしても小さくて軽いギアの方が良い。それを追求した先にあるのがUL(ウルトラライト)という世界だ。だから、どこを目指すのかによって揃える装備が変わってくる。

テントをどうするか、寝袋は何が良いか(しかも季節によっても変わってくる)、マットは、ザックは、クッカーは、ナイフは、焚き火台は…

わたしは、ズブズブっと音をたてるように、深淵なる〈ギアの沼〉にはまっていった。

ギアを集め始めた頃に撮影した写真。使い始める前のピカピカな状態が懐かしい。

ギアの沼にはまって間もなく、〈myog〉という自分でギアを作る文化があることを知った。myog(ミョグ)というのは〈Make your own gear〉の略称。DIY(Do it yourself)の山版とも言えるもので、UL系のロングディスタンスハイカーが装備の軽量化を図る中で、市販のプロダクトでは飽き足らずに自分達でギアを作り始め、その思想が登山やキャンプなどの世界に広がったものだ。

要するに、大手メーカーが作らないような、こだわりのアイテムや攻めたギアを自分達で作り、フィールドテストを繰り返しながらどんどん自分好みにブラッシュアップしていくという文化だ。

更に、myogから発展して、自分のブランドを立ち上げて商品化している〈ガレージブランド〉なる強者たちがいることを知った。そこには、大手メーカーが販売する安心安全のギアに加えて、ガレージブランドの作るこだわりのギアも選択肢に入れつつ、装備を自分好みのラインナップに育てていく熱狂的なファンが沢山いることを知った。

人気のガレージブランドのアイテムは、ウェブショップでもリアルショップでもいつも完売状態で、入荷しても一瞬で売り切れてしまう。ガレージブランドの強者たちの中には、いたずらな販路拡大を目指さず、自分達の作れる範囲で回しているケースも多いと聞く。

欲しい人はたくさんいるけど、販売量はさほど多くない。いつもSOLD OUTなガレージブランドのアイテムを見ていると、彼らが作るこだわりのプロダクト以上に、そのスタイル自体がかっこいいと思えた。

本当に欲しい場合は、そのガレージブランドのSNSをフォローして、フェスやイベントの出店情報をキャッチして、朝イチにそれを買いに行くのだ。イベントは日本全国で行われるのだが、多くの場合はイベントの開場前から、ギアを欲したアウトドア好きによる長蛇の列ができる。

オープン前から長蛇の列ができるアウトドアイベント。
THE FLAPPERLAND DOORS(2022年5月、埼玉県長瀞町にて)
人気のガレージブランドが多数出店していたこともあり、
会場はアウトドア好きで賑わっていた。

少し話が脇道にそれたが、myogという世界を知った私は、ギアを自分で作るという思想に夢中になった。

昔からバッグやサコッシュやポーチ等の袋物が大好きで、気に入ったものがあると同じようなものをつい何個も買ってしまう。myogでは、それが自分で作れるというのだ。バッグを自分で作れるなんてそれまで考えたこともなかった。

もともとモノ作りは大好きで、だからそこに近いところで仕事をしていた訳だが自分で作るという考えはあまりなかった。いや、正確にいうと興味はあったが、そこに踏み出す機会も勇気もなかった。

myogのいいところは自分が納得すれば良いという点である。下手でもいいし、使って壊れても誰からも文句を言われない。この低いハードルは、いとも簡単に超えることができて、わたしはmyogを始めた。

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