【歴史/地理/一般常識】通訳案内士試験1次合格へのアプローチ
こんにちは、なおきまです。
今回は全国案内士試験の1次試験科目である日本歴史/日本地理/一般常識について書こうと思います。
この3科目に対して私が何を意識し、どんな教材を使い合格を勝ち取ったのかについて、最新の試験の概要・情報を踏まえて記載したものとなっております。
私が通訳案内士試験の対策を始めたのは2017年の年明けくらいです。英語は英検1級で免除、その他3科目を6~7か月で合格レベルに持っていきました。当時の職場はかなり人手不足で、月8-10回の当直などかなり厳しい勤務でしたが、何とか平日1-2時間&休日4-5時間程度の学習時間を捻出していました。
私は2017年度の合格者なので、実際に受けていない通訳実務、そして科目免除となった外国語には本記事では触れません。
記事の作成にあたっては日本政府観光局(JNTO: Japan National Tourism Organization)や観光庁のウェブサイト、最新の試験ガイドラインや施行要領を参照するとともに直近5年分の過去問をチェックし、私が受験した2017年からどう変わったのかを踏まえて記載しております。また最新の参考書の内容も確認して記載しました。
2024年度の試験はこの記事公開時点であと約3週間後ですが、直前期の詰めに使えそうな部分だけ利用いただければと思います。
⚠️注意事項⚠️
・本記事は問題集ではありません。あくまでも合格者の立場から自分が受験したときの対策法をベースに、現在の最新情報と過去問に基づき試験への向き合い方、分析、使用教材とおすすめ教材などを記載し、学習のヒントにしていただきたいという意図で書いたものになります。
・ガイド人材の活性化に係る調査・検討会(観光庁)の中間とりまとめのp13には「全国通訳案内士としての必要な知識を問うべき筆記試験として、外国語科目については難易度を高く保ち続けることが相当であるが、日本地理、日本歴史、一般常識については、これまでの試験より基礎的な知識を問うものとして試験が実施されるよう、試験方法を定めることが適当である。これらの筆記試験科目に係る変更については、受験者への周知等も考慮しつつ所要の検討等を行った上で2024 年度(令和6年度)試験から順次実施することが望ましい。」と記載があります。基礎的な知識がどのようなものかはまだはっきりとしないので、難易度が下がる前提での記述にはしておりません。
・2024年度試験を意識した記載の部分もありますが、試験対策への取り組み方やどのように試験を分析しているかについては普遍的な要素ですから、2025年度以降に受験予定の方にとっても参考になるように記載しました。
以下、目次から本編となります。
1. 全般〜受験にあたって〜
(1) 敵を知る
受験を決めたらまず、JNTOのサイトにアクセスし、最新の通訳案内士試験施行要領と試験ガイドラインを確認します。当該年度分が出されるのは毎年4-6月と本試験ギリギリなので、まず前年度のものでも問題ありません。発表されたら必ず最新版も確認しましょう。
全国通訳案内士は国家資格です。国家資格ということは、求められる素養は政府の方針・施策に左右されるということです。
簡単に言えば、試験で問われるのは「国としてこういう方針で海外からの旅行者にアピールしていくから、国家資格である案内士の皆さんはしっかり理解した上でガイドしてね」という内容です。
この政府の方針や施策は観光白書、そしてJNTOと観光庁のサイトを中心に情報収集が可能です。
例えば2023年度の一般常識第1問には「明日の日本を支える観光ビジョン」の問題が出ていますが、これは観光庁ウェブサイトで入手できる「明日の日本を支える観光ビジョン」のPDFを読んでいれば簡単に正解できます。この問題の内容については長らく政府目標として定められていましたので、他の資料にも載っていると思います。
政府施策を理解しながら学習していくと大きく迷わずに済みます。海外観光客が訪れる人気観光地に加えて、政府が推進したい施策に強く関係する地域についても優先的に押さえていきましょう。ただしJNTOのウェブサイトを調べていくと細かい検討会の議事録なども出てきますので、深追いし過ぎないよう気をつけてください。
どれだけ効率化しても、かなりの量のインプットが必要になりますので、受験を決意したら心してかかりましょう。
(2) 免除科目の利用と読み取れること
次に免除科目についてです。これも施行要領から確認できます。数年かけて免除科目を取って1次試験を突破する計画を立てることも可能です。
科目免除の制度を利用しなくても、免除となる検定・資格からおおよその難易度を推定できます。
2024年度の日本歴史であれば、歴史能力検定2級以上、2020年度センター試験日本史B 60点以上とされています(共通テストは免除適用外)。
科目免除をもらえるということは、出題者側が「歴史能力検定2級合格やセンター試験6割が難易度的あるいは知識量的に本試験と同等以上である」と考えているということです。
必ずしも傾向や難易度が一致するわけではありませんが、一定のレベル感をイメージとして持った状態で勉強を始められます。
何かの尺度を持ったうえで勉強をすると、何もなしに突っ込んでいくよりはるかに心理的に楽に勉強できます。
難易度の感じ方には個人差がありますので、まずこうした情報であたりをつけ、実際に勉強していきながらそのイメージを修正しつつ勉強していきましょう。
(3) 試験対策の基本となる2つのアプローチ
試験対策には大きく2つのアプローチ法があります。それぞれの利点欠点を意識して自分に合う方法をとりましょう。
まずは過去問から入るやり方。過去問を解いた後、出題されたトピックの該当箇所を参考書で読み込み周辺知識を補強していきます。利点は繰り返し出題されている分野を中心に対策できること、短期間で見ると得点上昇が早いことなどです。欠点は体系的な理解をしにくいため量が多いと苦労をしやすいこと、新出問題に対応しにくいことなどです。特に問題になるのが、周辺知識の補強する上でカバー範囲が不十分だと合格レベルに達しない可能性があることです。
次が参考書から入るやり方。参考書を読み込み、全体のインプットすることに重きを置きます。場合によっては過去問以外の問題集を挟みます。利点は体系的に内容を整理できるため記憶しやすいことや参考書を一通り読み込むので新出問題や捻った問題に対応しやすいこと、得点の期待値が高いことなどです。欠点は時間がかかることです。
どちらの方法でも合格できますが、個人的には後者の参考書を読んで全体を把握するやり方をおすすめします。一通りの学習の後に過去問を解き、問われた内容と周辺事項を補強するのが網羅的にカバーできるため合格率も高めることができると思います。ただ時間のない方は頻出分野を詰め込んだ方が得点を最大化できる可能性もあるのでよくよくご検討ください。
また、JNTOと観光庁のサイトについては定期的にチェックし、試験情報や施作の確認、最新情報の入手を怠らないようにしましょう。
(4) 通訳案内士試験用対策書の注意点
通訳案内士試験の対策書は過去問をベースに作られていますので、新出問題に対応できるとは限りません。本当は過去問で8割取れるくらい知識をカバーしたらどんな新出問題でも7割くらい取れるのが健全な勉強の結果といえますが、試験対策書のみで勉強してから過去問を解くと本来の実力以上の点数が取れてしまう可能性があります。試験対策書や過去問は重要な教材ですが、それ以外の教材もできるだけ使うようにしてください。私が使ったものはこれから述べていきます。
2. 日本歴史の対策
(1) 概要
私は日本歴史については
・外国語以外では初めに勉強をするべき科目である
・日本歴史を制するものは1次試験を制する
という認識を持っています。
理由は非常にシンプルで、通訳案内士試験の中で最も対策しやすい科目であり日本地理や一般常識などにも「効いてくる」からです。
性質上、他の科目の対策は知識の詰め込みになりやすいです。
例えば日本地理。北から南に向かうと、五稜郭を勉強したかと思えば三代丸山遺跡、伊達政宗像を通り日光東照宮、江戸城から鎌倉の大仏、平城京と思えば吉野ヶ里遺跡、島原・天草一揆の原城を回って桜島。
地域ごと観光地を見ても、ある特定の地域内の観光地同士を比べても時代背景がバラバラです。
これが歴史の流れを押さえておくと激変します。「この観光地はどの時代の、どの文化を背景としているのか」を意識して勉強できると地理の学習はかなりスムーズにいきます。
日本歴史という知識の背骨に、日本地理で問われる観光地の知識や背景・一般常識で問われる文化的な事柄が紐づいていきます。
大量のインプットに関連性が生まれ、覚えやすい・記憶に残りやすい・試験の時に思い出しやすい状態を作れます。
これが日本歴史を最初に勉強すべきと考え、日本史を制する者は1次試験を制すると考える理由です。
次に試験形式についてです。日本歴史と聞くと、年号と出来事の知識問題、写真や図を見て仏像や建造物の設問に答える問題を思い浮かべると思います。過去にはそのような問題以外にも出題があります。
元々全国通訳案内士試験では文化史や観光地に紐づけた設問があったのですが、2015年頃からこの傾向は顕著になりました。私が受けた2017年度も観光地関連の設問がそれなりに出ましたが、2019年度を見ると「もはや地理では?」と思ってしまう出題もあります。
2020-2021年度に落ち着きを見せ、以降はまた「日本史の試験」として多くの方がイメージするような出題傾向に戻っています。
試験傾向は変わっていきますから、対策を始めるにあたっては必ず最新の過去問で出題傾向をチェックするようにしてください。
形式が何であっても日本歴史対策としては、まず時代の流れ(通史)を押さえることが大切なのは変わりません。
早い段階で時代の流れ、出来事、重要人物を押さえていきましょう。
合格基準は70点ですが、80点を目指して勉強することをおすすめします。1年に1回しかないので、多少点が下振れしても合格基準を下回らないことを目標に取り組むことが理想です。
(2) 教材選びと取り組み方
日本歴史対策の参考書としては、高校学参が最も優れていると思います。受験参考書業界という厳しい競争を勝ち抜いた参考書は分かりやすく、しかも1000円以下の本も多いです。
通訳案内士試験の日本歴史では難関大学入試に出題されるような細かい内容は問われませんので、大学入試標準レベルの参考書をベースの通史教材としてよいかと思います。
また通訳案内士試験では宗教、建築、文学といった文化史としてまとめられている範囲からの出題も多いです。
通史に加えて、文化史用の本やイラスト・写真が充実した本を用いることをお勧めします。
私が主に使った教材は、
①詳説 日本史 (山川出版)
⇒通史の基本教材
②詳説 日本史ノート (山川出版)
⇒知識のインプット
③ヒストリア日本史
⇒アウトプット、知識の整理
④日本史図録(山川出版)
⇒寺社、仏像など様々な項目の参照用
⑤過去問
です。通史のメイン教材にした①は高校の日本史の教科書ですが、これは知識量的には十分というか超過しており、人によっては読みにくいと感じるようです。書店で読みやすいと思った標準レベルの参考書であれば大丈夫と思います。
②は①の補助教材です。穴埋め問題集のようななワークブックで、一旦穴埋めしたら暗記用のインプット教材として利用しました。
③は知識のアウトプットのための問題集です。基本的な事項を網羅的に確認できます。解説も理解が深まるように書かれておりわかりやすいと思いました。大学入試の中上位くらいまでをカバーしているのでいわゆる「標準問題」といえるでしょう。通訳案内士試験としては十分と言えます。この問題集と過去問で知識を定着させました。
④は必須といっていいと思います。山川出版社のものは大変すばらしい出来ですが、他の出版社の図説でも大丈夫です。フルカラーで大量の建造物や歴史的資料の写真が載っていて、年表もまとまってる。それでいて1000円しないような破格です。通史を終えたらとにかく問題を解きながらパラパラとめくってみるとよいと思います。
⑤の過去問については勉強を始めた本当に最初、何もやる前に2~3年分は解いてみるといいと思います。そして最初は復習を全くしないで点数だけ出せばOKです。最初に復習をしなければ、通史を一通りやった後にどれだけ伸びているか、ほぼ初見状態の過去問を使いまわして比較できます。知識が体系的に整理されていない状態で過去問の復習しても、理解+記憶に落とし込むのは困難と思います。
高校学参がお勧めな理由としてもう1つ。
通訳案内士試験の対策書では頻出分野のみ簡潔にまとまっているというケースが多く、流れを理解しながらやれる本が少ないと考えています。
比較的新しい本に、全国通訳案内士試験「歴史」合格!対策(三修社)があります。こちらは電子版を持っていますが、よくまとまっていて歴史対策に使いたいところです。とはいえ私としては最初は高校学参を用いて学習した方がよいと考えます。
一通り通史をやった後に「合格!対策」を読む方が学習効果が高いと思います。この本は2024年7月17日時点で紙版の新品がAmazonに出回っていないので絶版か、近日中に改訂されるのかもしれません。
正直、日本歴史の個別の事象をひたすら丸暗記するのはかなりの苦行です。通訳案内士試験の勉強は一般的に数ヶ月以上の長期戦ですから、流れを理解し歴史そのものに興味を持てるよう、工夫して勉強しましょう。
3. 日本地理対策
(1) 概要
通訳案内士試験における日本地理は多くの受験生にとって「どこから手をつけていけば分からない科目」であると思います。
観光地は無数にあり、それぞれについて調べるだけで膨大な時間がかかってしまいますから、なるべく短い勉強時間で多くのことを、できるだけ身になる形で(少なくともマーク式テストで問題なくアウトプットできる程度には)身につけることが必要です。
以下のことを意識します。
・全国通訳案内士に求められていることを理解する
⇒先に述べたように政府の観光施策・方針をよく理解し、重点が置かれている観光地を中心に対策を立てましょう。
・広く浅く+濃淡
⇒京都や奈良などの有名観光地はもちろん、全国幅広く網羅する必要あり。ここで政府の観光施策や過去問が優先順位をつけるヒントとなります。
・地図帳を必ず使う
⇒学校の授業で使うような地形とか気候ばかりが載っている地図帳ではなく、旅行用の地図帳というものがあります。地図帳として地形などが載っているだけでなく、観光地や特産品の情報もカバーされています。
上記に加え、日本歴史の項で述べた通り、歴史との関連を意識しましょう。
一口に東京といっても江戸時代と昭和では全く状況が違いますが、それぞれの時代を象徴する観光名所があります。
繰り返しになりますが、歴史を軸に観光地の文化を整理しながら学ぶことをおすすめします。
多くの観光地が何らかの歴史的意味を持っていますから、誤解を恐れずにいえば通訳案内士試験の日本地理は日本の歴史を地域別、建造物別、文化別のレンズで見ている試験ともいえます。
「時間の軸」(=縦軸)で歴史を眺める日本歴史の土台がしっかりしていると、「地域別の軸」(=横軸)で歴史を眺める日本地理の学習がスムーズです。
一方、日本歴史が固まっていないとどんな時代だったのかよくわからないまま大量の地理のインプットを行うことになり、いつなのかどこなのか、記憶がめちゃくちゃになりやすいのです。
日本歴史を制するものは1次試験を制する、です。
日本歴史同様、合格基準は70点ですが80点を目指して勉強することをおすすめします。
(2) 教材選びと取り組み方
日本地理は高校で履修する「地理」とは全く異なるので高校学参が使えません。
前述のとおり、全国通訳案内士に期待されることを理解し、海外からの旅行客に人気の観光地、日本の主要観光地を押さえることに注力します。
そのために私が使った教材は、
①最新版の観光白書、JNTO&観光庁のウェブサイト
繰り返しになりますが、試験対策はまずここからです。
例えば私が受けた2017年度の前3年くらいの過去問を見ると、JNTOのサイトに載っている「広域周遊ルート」が頻出していました。観光白書にも掲載されており、これこそ政府がどこの観光地を推しているか=通訳案内士試験に出やすい分野です。私の年も実際出たと記憶しています。
この観光白書、1次試験が行われる8月の時点では前年度のものまでは書籍で入手できますが、その年の最新版は観光庁ウェブサイトからPDFを入手するしかありません。しかしこの最新版を読むことは非常に重要です。
早めに勉強を始めた方は、受験する年の前年の白書を読んでおき、最新版が出たらすぐに読み始める準備をしておくとよいでしょう。
②完全制覇 国内旅行地理検定試験/過去問(一ツ橋書店)
各地域ごとの節末にある空欄補充問題をひたすら繰り返しました。後半には模擬試験形式の問題が多数収録されており、通訳案内士試験と形式は違うものの知識の確認に役立ちます。網羅的に地名や河川などの名前を覚えることができます。ここで用語を押さえ、地図帳を見ることを繰り返します。
空欄補充問題だけ解いていてもかなり細かい知識を聞いてくるので、知識量としてはちょっとやり過ぎの感は否めません。JNTOサイト、過去問、次に紹介する旅地図を参考に、出ないと思われるものは削ってしまって差し支えないと思います。
私がこの本を選んだ理由は「詳しいから」です。予測しにくい日本地理の問題は少し広めにカバーして、何がきても大丈夫なように備えることとしました。
③旅地図 日本(昭文社)
旅地図は写真が多く、重要な観光地はピックアップされて短い解説がついているので読んでいても飽きにくい旅行用地図です。過去に出題された地域の多くがこの地図で解説がついている場所なので、過去問や上記の完全制覇~とも相性◎です。その他、旅に出たくなる日本地図(帝国書院)なども通訳案内士試験との相性はよいと思います。私はこの2冊を買い、メインの地図帳は旅地図でした。
④過去問
対策を始める前にまず直近5年分を、少なくとも2-3年分は解きます。日本歴史同様、最初は点数のみ出し復習はしません。①~③で一通り勉強した後に復習しました。
また、日本地理の学習は「日本歴史の知識を頼りに知識を詰め込むこと」といって差し支えないです。そのため日本歴史とは逆に要点集、まとめの意味合いが強い全国通訳案内士試験用の参考書が威力を発揮します。
近年発売のものは、全国通訳案内士試験「地理」合格!対策(三修社)が挙げられます。日本歴史でも触れたこのシリーズは私の時代にはなかったもので、これだけ情報量が揃った本があるのはうらやましい限りです。しかも2024年4月に改訂版が出ています。常に歴史という軸を見失わないように学習しましょう。
1つ私の経験を紹介します。私の受験したころ、政府が推していた「広域周遊ルート」の公開資料の中に「トリップアドバイザーで外国人に人気の観光地〇位」といった記述があり、政府機関が情報サイトをチェックしていることがうかがえます。後から知りましたが、トリップアドバイザーは2015年から政府と観光について協力をしていたようです。
余裕があればでよいので、政府関係資料の中からこういう情報を見たら該当するウェブサイトをチェックする、というのもよい対策になると思います。
4. 一般常識の対策
(1) 概要
一般常識は正式には「産業・経済・政治及び文化に関する一般常識」が科目名です。つまり範囲はない(=無限に広い)といって差し支えありません。
大きく分けて、
・海外渡航者の動向(人数や推移など統計)
・観光に関わる施策、政府事業
・特に国内開催の大きなイベントや国内の興行(文化、スポーツなど)
・世界遺産
・社会問題
などが幅広く出題され、対応するにはかなり広い知識が必要になります。
今まで世の中の出来事をどのくらい追いかけてきたか、自分の日々の過ごし方をダイレクトに問われているようなものです。
例えば通勤中に芸能やスポーツ、ちょっとした国内外のニュース記事をYahoo!ニュースで見ていただけでも、
「ああ、なんか聞いたことあるな」
となれば正答できたり、その時忘れていても勉強するうちに点が伸びてくるのも早いです。
過去問を解いてみて、ある程度この「なんか聞いたことある」という既視感が持てる人は実はそんなに苦労しません。一方で背景知識が少なく、過去問を見ても生まれて初めて聞く用語に圧倒された人には鬼門になります。
まず自分がどちらなのかを見極め、「圧倒された人」だった場合は教材を多めにやるなどして学習量を増やしましょう。日本歴史を一番最初に勉強するべき科目と位置付けましたが、一般常識が苦手と判断出来たら日本歴史の勉強が習慣化した段階で並行して始めることをおすすめします。
合格基準は50点満点で30点ですが、歴史・地理同様に余裕を持って40点を目標に対策することをおすすめします。
(2) 教材選びと取り組み方
一般常識は概要に述べた通り、試験範囲は事実上無限です。ただ毎年出されるものもあるので、そこから潰していきます。
① 観光白書、JNTO/観光庁ウェブサイト
一般常識の前半の問題は観光白書に掲載される海外からの旅行者の動向や統計です。また政府が重点を置く観光施策についても出題されます。対応するためには通訳案内士試験を受験する年の最新の観光白書を読みましょう。2024年度のものは6月に国土交通省のウェブサイトから入手できます。その他、観光白書や各ウェブサイト上に出てくる施策・法制についても目を通しておきます。
② 一般常識関係書籍
時事問題や一般常識に関する書籍は色々と出ています。苦手意識があるならば1~2冊読んでおくとよいでしょう。
・図解でわかる時事重要テーマ100(日経HR編集部)
・図解丸わかり時事用語(ニュース・リテラシー研究所)
・朝日キーワード20XX(朝日新聞出版)
このあたりが私が読んだことある本です。他の類書でも問題ないと思います。
③ 通訳案内士試験用の一般常識対策書
通訳案内士試験用の参考書としては「一般常識といえばコレ!」という本は残念ながらあまりなさそうですが、全国通訳案内士試験 地理・歴史・一般常識・実務 パーフェクト対策 新装改訂版(ジャパンタイムズ出版)をやっておくとよいでしょう。
一問一答形式なので地理・歴史については参考書学習がある程度進んでからの方がよいかと思いますが、一般常識は解いてみてわからなかった部分を調べて知識を増やすことも有効な対策になります(そもそも体系的な学習が難しいため)。
④ 一般常識用問題集 (通訳案内士試験以外)
通訳案内士試験以外にも「一般常識」という科目の問題集は存在します。就活用、公務員試験用などが最も一般的と思います。就活用か公務員用どちらか1冊、余裕があればそれぞれ1冊やっておくとよいでしょう。
⑤世界遺産の書籍
日本の世界遺産については頻出なので必ず押さえましょう。あくまで日本の世界遺産が問われますから、それにフォーカスした本を用いることをお勧めします。
私の場合、知っておきたい!日本の世界遺産がわかる本(まなぶっく)(メイツ出版)を使いました。
今は2020年に出た改訂版が最新のようですが、前版が2017年4月末の発売、すなわち試験の直前期に発売されていました。古い本を使うと新しく登録されたものが載っていないなどで追加で調べる手間が発生することから、当時最新の本1冊で済ませたいと考えた結果です。
このまなぶっくシリーズ、小学校高学年くらいを対象にした本のようですが、通訳案内士試験に大変役立ちました。
数が多いわけではないので、登録申請中のものも含めて一通り頭に入れておきましょう。
⑥ 過去問
過去問は基本的に歴史・地理と同様に使います。数年分まず解いて、復習はしない。勉強をある程度進めてから解き直して復習する。
幅広く出題されていますので、JNTOや観光庁のサイトでまだ出ていない政府施策や取り組みを見つけたらチェックしておきましょう。
⑦時事問題、経済社会系書籍
経済の仕組み、政治の仕組みなどがさっぱりわからないという場合は、先にそちらの知識をざっと入れた方が①~⑤の学習が捗るかもしれません。
例えば池上彰氏の政治のことよくわからないまま社会人になった人へ(マメハチドリ)や政治のしくみをカラー図解で読み解く! 池上彰の 政治のニュースが面白いほどわかる本 (中経出版)などです。これらには経済版もあります。このような入門書籍は池上彰氏以外にも様々な著者から出ていますので、読みやすそうなものを選ぶとよいと思います。その他、中学校の公民の参考書や高校の政治経済、現代社会などの参考書もアリです。
①や②を読んでいて理解できない、ついていけないという場合は社会・政治などの基本知識が不足している可能性があるので上記のような書籍で補完した方が結果的に得点につながる可能性があります。試験日までにある程度余裕があるなら読んでおくとその後の学習をスムーズに進めることができるでしょう。
⑧日々の日本での流行、重要イベントを追う
一般常識は日本での出来事、日本にかかわる重要なイベント、政策などが出題されます。基本的には日々のニュースを丁寧に追っている人ならかなりの部分正解できるということですし、本来それが最良の対策のはずです。
最新の重要な事柄も出題されますので過去の出題ベースで対策するだけでは不十分です。最新の時事に基づいて出題されそうな分野を学んでおく必要があります。
いくつか主なものを書きます。
・国際博覧会(万博)に関する問題が2019年に出ていますがそれっきり。大阪・関西万博は2025年です。普通に考えれば、政府は万博から全国に海外からの旅行者を誘導したいはずです。と思って調べると、観光庁による「大阪・関西万博に向けた観光庁の取り組み」という資料がありますし、JNTOによる「持続的な観光・消費額拡大・地方誘客の実現に向けた訪日プロモーションを展開~2023 年度はインバウンド回復に向けた取組を加速~」というプレスリリース資料があります。またその資料にはいくつもの観光地名や用語が載っています。調べておくといいことがあるかもしれません。
・日本で開催されたラグビーのワールドカップの出題が過去にありました。日本を湧かせた2023年のWorld Baseball Classic (WBC)も、2023年度の設問に入れるには間に合わなかったイベントでしょう。試合が行われたのはどこ?WBCで活躍した主な選とそのチームは?2023年シーズン後にメジャーに行ったのは?プロ野球両リーグの優勝チームは?
・2017年には映画「君の名は」に関する設問がありました。劇場版で「千と千尋の神隠し」を抜いた「鬼滅の刃」の出題はまだありません。興行収入はいくらでしょうか?主題歌の名前、歌手名、原作者は?
私が今年受けるならこの辺は押さえておくと思います。ここ数年の流行、大きな出来事は出題されやすいです。
このように幅広い一般常識ですので、紹介する教材も多岐にわたってしまいました。
基本的には受験を決めた瞬間から⑧日々のニュースを追うことをスタートし、①観光白書+JNTO&観光庁ウェブサイト、④ 一般常識用問題集 (通訳案内士試験以外)、⑤世界遺産の書籍、⑥ 過去問を用いて対策するのが良いかと思います。
苦手意識があれば適宜③ 通訳案内士試験用の一般常識対策書を取り入れて穴を埋めていきましょう。また自分の「一般常識力」に合わせ、必要だと感じた方は② 一般常識関係書籍、⑦時事問題、経済、社会系書籍で補完しましょう。
私の場合は元々国際情勢・時事関係の本を何十冊と読んでいて、そこに②や⑦にあたる本が何冊か含まれていました。また、話題のニュースを追うくらいはしていました。よって対策として新しいのは①&⑤をよく読み④&⑥を解くというのがほとんどでした。それでも当時は最も不安な科目でした。
ぜひお読みいただいた皆様におかれましては1発で1次の筆記を突破し、知識がフレッシュなまま2次面接に臨み、合格という最高の結果を得ていただければと思います。
まとめ
長い記事でしたが、お読みいただきありがとうございます。
この記事では対策に用いる参考書や私がどう勉強したかだけでなく、試験に関する情報をどのように分析するか、どのような意識を持って学ぶと記憶に残りやすいのかなどを説明してきました。
簡潔にまとめると、
日本史を制する者は1次試験を制する。通史の知識をベースに文化史を整理しよう。
日本地理は地域・観光地のレンズを通して歴史を眺めている。日本歴史の知識も総動員して、数多くの観光地の知識を整理しよう。
一般常識の範囲は無限大。苦手なら早めに対策をはじめよう。観光白書、流行や大きなイベントは要チェック。
通訳案内士は国家資格。観光白書、JNTO/観光庁ウェブサイトの最新情報を収集し続けよう。
です。特に日本歴史を軸に勉強する大切さについて強調してきました。範囲の広い通訳案内士試験を対策するにあたり、歴史の理解は知識の整理の拠り所となります。ぜひこの点を意識して勉強してみてください。
通訳案内士試験は試験範囲が膨大かつ実施が年1回という、厳しい試験です。なるべくなら1回で決めたいと思うのが人間の性(さが)ではないかと思います。この記事が皆様の試験対策、ひいては合格に寄与できるならばこれほど嬉しいことはありません。
しかし残念ながら、そして当然のことですが、どれだけ良い勉強法を仕入れても、YouTube動画やブログの記事をいくつ読んでも、自分が机に向かいテキストを開き、文章を読み問題を解かねば実力も点も上がりません。それはこの記事も然りです。少し余裕を持って合格するつもりで勉強することをおすすめします。
もちろん勉強への取り組み方は千差万別ですので、私が書いてきたことをすべて取り入れる必要はありません。ぜひ使えそうな考え方、教材を採用してください。勉強をしていくうちに、「どう勉強していけばやりやすいか」がわかってきます。闇雲に取り組んでしまうと迷路に陥ってしまう通訳案内士試験対策ですが、少しでも光明が見えたり、何か対策に取り入れられるヒントを見つけていただけたならうれしく思います。
以上になります。改めてお読みいただきありがとうございました。
皆様の合格を心より願っています。
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