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#15 シャドーイングの処方箋

こんにちは、なおきまです。

医師として勤務しながら英語の学習を継続し、時事英語や医学英語を中心に学んできました。大手通訳学校を同時通訳科まで含め修了、2023年からは医学系の招聘講演に対し通訳をする機会もいただくようになりました。

検定としては2024年3月時点で英検1級、TOEIC LR990&SW400、国連英検 特A級、全国通訳案内士、工業英検1級、JTFほんやく検定1級(日英、医薬)、ビジネス通訳検定(TOBIS)1級などを保有しています。また、今は能率協会の一部になった技術英語協会主催の「技術英語指導者養成基礎コース」を修了しています。

今回の記事は、英語の学習方法の1つ「シャドーイング」についてです。

シャドーイングとは音声を聞きながら、聞こえた英語に少し遅れて発話していく練習法です。

(音声)I study English every day.
   (自分)I study English every day.

という感じです。

今回はシャドーイングの練習法と、私なりに取り入れているやり方をご紹介します。

シャドーイングの英語学習への効果は賛否両論があるのは知っていますが、私は一時期シャドーイングが英語学習のほとんどを占めていた時期もあり英語力向上に大きく貢献してくれた練習法の1つです。

どんな練習法も正しく意識をもって行えば効果が出ます。シャドーイングもそうです。ただ、シャドーイングは効果が出るような意識をもって行い続けるのが難しい練習法なのだと思います。

そのため、私が意識していることも含めこの記事を書くことにしました。シャドーイングを練習方法として取り入れる方々の参考になれば嬉しいです。

なお、本記事は「Dr. Englishの学習カルテ」という、私が2020年まで更新していたブログ記事の増補改訂版になります。

シャドーイング練習法

まずシャドーイングの練習法の、一般的な過程を記載します。慣れてきたら過程を少し端折っても大丈夫です。

まずリスニング教材を聞きます。教材は、読んだとしたら返り読みをしないで読み進められる程度に易しいと感じる難易度がおすすめです。

教材を何回も聞いて、現時点での自分の実力で可能な限り細かく、単語の全てを拾うことを目標に聞きます。時にはディクテーション(聞こえた英語の書き出し)を併用します。

限界だと思ったところでスクリプトを確認します。

スクリプトを見た上で、聞こえなかった部分がちゃんと音として認識できるか、確認します。この段階で知らない語彙、解析できない文法事項を調べます。

その後、疑問点が解決した英文を何度も音読します。

すらすら読めるようになったら、シャドーイングを行います。

シャドーイングを始めてみて、中々難しいと感じたときは音読やオーバーラッピング(スクリプトを見ながら音声を聞き、音声にかぶせるように読み上げていく)を併用して少しずつ慣れていきます。

スラスラと、苦も無くついていけるようになるまで何度もやります。

以上が、一般的なシャドーイングの練習法です。

シャドーイングで意識すること(基本編)

シャドーイングのやり方や手順を紹介しましたので、何を意識して行うかを書いていきます。

最初のうちは、次のことを意識して練習するとよいと思います。

  • 「意味」を意識したシャドーイング

  • 「音」を意識したシャドーイング

  • 「意味」と「音」の両方を意識したシャドーイング

「意味」では文字通り、「何を言っているのか」を意識します。文法事項にも注意を向けます。

「音」では、発音・アクセント・イントネーションなどを音声に似せていくことを意識します。

これらをしっかり意識して「最後の練習から数日あけて、1回目でノーミスでシャドーイング出来る」くらいが、その教材を一旦終える目安ではないでしょうか。

新しい教材と1つ前の教材の復習を並行するイメージです。

シャドーイングで意識すること(応用編)

シャドーイングを含め、様々な学習を継続すると英語力としてだんだんと地力がついてきます。

すると、上記のやり方では物足りなくなってくるかもしれませんので色々と工夫をしていきます。

物足りなくなったら教材の難易度を上げるという方法もありますが、ここでは私が取り入れている練習法を紹介します。

①初見シャドーイング

文字通り、事前のリスニングや音読のステップをすべて省略し初めて聞くときからシャドーイングを行います。

事前に音声を聞かず、スクリプトを見ず、シャドーイングだけを繰り返して完全再現を目指します。

特に初見の時が重要で、何が来るかわからない状態で中身を理解しながら必死についていくという、とても負荷の高いトレーニングです。

限界だ、というところで黙って聞いてみます。

わかったらシャドーイングに戻ります。

聞いてもだめならスクリプトを見ます。

またシャドーイングに戻ります。

理解しながら正確にシャドーイングできるようになったら、スクリプトを読み込むもよし、暗唱するもよし、好きに使って勉強します。

なお、シャドーイング自体が負荷が高いトレーニングです。シャドーイングでは英文の音を真似たり、意味を処理したりする訓練を行います。前半に書いたように、自分の実力からするとかなり易しいと感じる英文でやるのがセオリーです。

特にこの練習法は、

・初見で聞いたor読んだとしたら、分からないことが1つもないだろうと思われる教材でのみ行う(人名など固有名詞を除く)
・固有名詞が出てきても慌てずに処理できる(知識として知っている可能性の高いテーマ or 音で再現し、シャドーイングを続けることが可能)
・シャドーイングに慣れていて、普通の練習法ではすぐに負荷を感じなくなってしまう

という場合に行うことをおすすめします。固有名詞以外で「聞いてもだめ」だと、教材がこの練習には難しすぎると思われます。

例えば英検1級に合格した、くらいだとTOEICのリスニング問題では難し過ぎる印象です。英検2級のリスニング問題でできるかをまず見るのがお勧めです。

私はJapanTimes社説集で音声を1.25倍にして初見シャドーイングを行っています。テーマや固有名詞によっては難しく感じる記事もあり、適宜1.0倍速に下げてます。

大量の情報を初見で処理することは脳の情報処理力を向上させる非常にいい訓練、初見シャドーイングでした。

②意識するポイントを増やす

初見シャドーイングよりは始めやすいアプローチかもしれません。

先ほどは「意味」「音」の2つを意識する、と書きました。

ポイントを増やすということは、下記のようなことを意識することになります。

  • 音やリズムを追う

  • 文構造(SVOCM)を追う

  • 意味の塊(句・節など)を追う

  • 論理展開、因果関係を追う

  • 自分の知識と対照する

  • 情景を思い浮かべる

  • 脳内で意見を述べる

  • 脳内で訳す

などがあります。

ここからは例文を用いて説明します。以下の英文を使ってシャドーイングすると仮定します。

(例文)
I make it a rule to study English every day in order to improve my speaking skills.

英文をシャドーイングしながら、

  • 音やリズムを正確に再現しようとする

  • 「Iが主語、makeが動詞、itが目的語、a ruleが補語でSVOC、仮目的語の後にto以下があって・・・」と品詞分解

  • 「make it a rule to do -- という塊、to study Englishという塊・・・」と意味の塊や句・節ごとに英文を解析

  • 文章の前後から「それでスピーキングを鍛えたいということか。ということは・・・」と論理の流れを理解

  • この英文の後に具体的な練習法が出てくるなどして「ああ、このやり方は知ってるな」など知識と比較対照

  • 毎日勉強している人を頭で映像化

  • 「その練習法は、自分もやって効果があったからおすすめだな」などと自分の考えを脳内で作る

  • 「スピーキング力を鍛えるために毎日英語学習することにしている。」 のように脳内で日本語に直す

といったポイントを意識して行います。

これも非常に負荷が高いです。

できれば複数同時にやりたいところです。全部は難しいですが、「意味の塊を意識しながら情景を思い浮かべる」など2-3個なら訓練すればできるようになると思います。

でもシャドーイングしながら「これは主語」と頭の中でその都度唱えていたら訳したり、「これはSVOCの構文で・・・」と他のことを考えられません。

ポイントは非言語的な「認識」で行うことです。

「これが主語」と言わなくても、「I have a pen.」と言ったら主語はIだと意識しなくても認識できると思います。

無意識とは違います。意識をし、認識しているのですが、訳す時以外は言語化しない。手に持ったスマホを見て「手に持っているのはスマホだ」と意識しなくてもスマホを持っていることは認識しています。その感覚に近しいです。

そして、「耳に入ってくる英文を捌き、口に出してついていく」というシャドーイングの手順に割く負担が少ないほど、これらに対して意識できる脳の作業メモリが増えます。

「手に持ったスマホ」とまではいかないにしろ、シャドーイングにしっかり慣れてから行ってみるとよいかと思います。

まとめ

最後の方は少し難しい話になりましたが、シャドーイングについて説明させていただきました。

耳+脳+口がそれぞれ同時に違うことを処理しているので難易度は非常に高く、多くの練習を要します。

ただ、意識を持って行うシャドーイングは、「次の情報」を頭に思い浮かべ文章を構成しつつ、口は「今の内容」を発声しているという、普段私たちが普段日本語を話すときに自然にやっていることを英語で行う練習にもなっています。英文を組むのと日本文を組むのは違うため、文法・構文などをしっかり意識することが付け加わっています。

日本語と英語は文法構造からして違いますが、ある程度次に何を言うか決まっていないと流暢に話せないことは共通しています。上記はその練習も兼ねています。

シャドーイングしているときだけでなく、実際に自分の意見などを述べるときも上記のような思考回路が一定程度介在しています。無意識に組み立てられる英文のレパートリーが増えていくにつれてシャドーイングも、自分の考えを述べるスピーキングも上達していきます。

初見シャドーイングができる、または複数のことを同時に意識できる英文は、本来は無意識のレベルで「すっと」理解できると思います。イメージを音声に変換しているような感覚になっていると思います。

ただそれを意識下に引きずりおろして、ちゃんと自分の構文解析が大丈夫かなどを確認することが、練習ではとても重要です。今回紹介したシャドーイングの練習法はその狙いもあります。

以上、シャドーイングの処方箋でした。シャドーイングに限らず、あらゆる練習法において「何を意識するのか」「何を伸ばしているのか」など、ポイントを意識して行うことがとても重要です。この記事が何らかの形で皆様のシャドーイングの参考になりましたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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