消えた目薬と疑われた犬
2023-06-23 (fri)
福岡空港に着いて、目薬が無いことに気が付きました。
これはしまった。目薬は僕にとって必需品of必需品なんですよ。
もともとドライアイなのに、コンタクトを付けているから余計に目が潤いを求めてくるんですよ。
こんなに小さな目でも、ドライアイになるんだね。
うるせーよ!
母に(以下ほづみ)空港に迎えに来てもらって、
家までの道中にあるドラッグストアで目薬を買いました。
これで一安心。帰省の間も目の潤いを確保できる。
そんな安堵の気持ちも束の間、
この時はまだ、この目薬が神隠しに合うことは知る由も無かった ——
家に帰り、実家の匂いが鼻いっぱいに広がる。
年寄りの匂い、古い家具の匂い、柔軟剤の匂い、料理の香り。
いろんな匂いが混ざり合った特別な匂い。
とても綺麗とは言えないこの家だけど、心底落ち着く。
そして今ではこれらに加えて犬の匂いが追加されている。
ジン。愛おしくてたまらないこの犬は、また一回り大きく成長していました。
ジンからの猛烈なおかえりを受け止めて、ようやくひと段落。
お土産を取り出してほづみに渡したんですけど、
その中に空港のコンビニで買ったピザポテトが入っていました。
自分でも買ったことを忘れていたんだけど。
悪い癖で、テンションが上がると普段食べないような物に手がいってしまうんです。
なんか、一口食べたくなって。結局食べないくせに。
ピザポテトに喜んでいるほづみは、もうボリボリと食べてた。
まぁ結果オーライか。
僕も2枚ほど食べて、やっぱり満足しました。
ジンも「オレもオレも!」と目を光らせていたけど、
ピザポテトの匂いだけ嗅がせて、実際にほづみから与えられたのはドッグフードでした。
「ん?!なんや、これいつもと同じやつやんけ!まぁいいや、うめぇ!フガフガ」
そんなジンの愚かさを横目に、
はっと僕は思い出したかのように目薬を手に取りました。
手には換毛期で抜けまくったジンの毛がワサワサと。
目薬をさす前に手を洗おう。
誤って目に入ったら危ないから。
こんな小さくて細い目にも犬の毛が入るんだね。
だからうるせーよ!!
手を洗い、目薬の蓋を外す。
待ちに待った、待望の、そんな一滴をこのキュートな瞳に優しく落とす。
あーーーー。これこれ。生き返るわぁ。
そして僕は、その目薬をリビングのテーブルにトンっと置きました。
今思えばこの時にちゃんと自分の鞄に入れるなりするべきだったんです。
翌日。
その日は特に予定も無かったので、ゆっくり起きて、
眠気覚ましも兼ねて一発目薬をしようと思ったら、おかしい。
無い。目薬が無い。
昨日確かにここに置いたはずの目薬が、無い。
「ねぇ、おれの目薬知らん?」
「あんたが適当に置いとるけん私があんたの化粧水とかと同じところにまとめたよ。ほらそのポーチ。」
「ん。……ん、いや、無いけど?どこに入れたん」
「えーなんで、私そこに一緒に入れたよ。あ、メガネケースの中やったかな」
「いやケースの中にも無いけど」
「絶対あるて。だってさっき入れたんやもん」
「ほんとに入れたと?近くに置いただけやないと?」
「えーー、どうやったかいな。でもあんたが散らかしとる他のやつと一緒にしたのは間違いないもん」
「んーー。じいちゃんが自分の目薬と思って持っていったとか?」
「いやーそれはないと思うけど…。ねぇ!じい!尚樹の目薬知らん?」
「なんてや〜?目薬か?目薬使いたかったらおれのがここにあるぞ」
「うん、大丈夫、じいちゃんやないね。違うと、じいちゃんおれの目薬ば知らん?」
「なんや、お前の目薬か、おれは知らんよ」
「オッケ分かった、ありがと。じいちゃんやないね。ねぇほづ、ほんとにどこにやったん?!」
「だけん知らんて!私はちゃんと綺麗にしたもん!」
「んーー。となると…こいつかね」
「えー、ジン?ジンが取ったんやったら絶対構って欲しいってことやけんそのまま放置はせんはずよ」
「まぁたしかに。そんな悪行する子じゃないもんなぁ。でもちょっと、庭見てくるわ」
「どう?ありそう?」
「いや、けっこう探したけど無いね」
「ほらね、言ったやん、ジンくんはそんなことせんっちゃん。ねージンくん」
「いやほづがちゃんと記憶思い出してくれたら済む話なんですけど??」
「あんたがちゃんとなおしとけばよかったっちゃろ!」
「い、いや今そこじゃないやろ!」
「んもー知らんよぉ。もういいやん、後でまた買い」
「うわーもったいない。一滴しか使ってないのに」
「それよりほら、もうこんな時間。私用事あるけんラーメン食べ行くならさっさと行こう」
「はいはい。……ジン、お前ほんとに取ってないや?今持ってきたら許しちゃるばい」
その後も探したけど、結局目薬は出てきませんでした。
そして夜。
ほづみと外食をして、ジンの散歩のあとそのまま車に乗り目薬を買いに。
助手席の窓から顔を出すのが好きみたい。
危ないって言っても言うことをまるで聞かない。
車で数分の所にある昨日と同じ店で、同じ目薬を買った。
家に戻ると、直ぐに中身を取り出して目に潤いを与えました。
「あーーー。目が喜んどる。てかなにこれ昨日と同じ流れやん。でもさ、こうやって新しいの買ったらすぐに見つかったりするんよね」
「そうよ、絶対見つかるけん。でもいいやんどうせ要るもんなんやし」
「まぁそうやけど。あー食い過ぎた。ちょっと休憩して風呂入るわ。ジン、もういいよ新しいの買ったけん」
23:30
そろそろ風呂に、と思っているとほづみの笑い声が聞こえた。
「ちょ、wwwwなお、wwwあはははは!!!!」
「え、なに、なん笑いよると…まさか?!」
「見て、wwこれwwww」
「はぁ?!なんでやって!なにをどうしたらこうなるん!」
「分からんwww」
「分からんじゃなくて、昨日食べて、残そうとして輪ゴムで封を縛るときに一緒に入れたんやろ?!」
「いや私入れてな…
「入れたんよ!やけんこの中に入っとると!!」
「wwww」
「いやいやいやいやいや。まじで意味が分からんっちゃけど!」
「wwwwwwww」
「もぉ〜こんなん誰も分からんやろ!神隠しすんなよ!!」
「wwwwwwwwwww」
「なんで?!なんでピザポテトにおれの目薬を入れる?!」
「分からんwww」
「はぁ。もう。ジンが1番可哀想やん。あんなに疑われて、ねぇジ…
「ほらぁー、絶対根に持っとるって。なんか前脚変やし」
「wwwwごめんねジンくん」
カシャ、カシャ
「あんた…何で写真ば撮りよーとね?」
「決まっとーやん。ブログに載せるけん」
「もー!やめてよ!また変な母親って思われるやん!」
「もう手遅れたい。みんな知っとることよ」
ということで、過去にアメブロで書いた記事も置いておきます。
そんな事があった次の日、
疑われたことへの復讐なのか、ジンに靴下を奪われました。
あーかわいい。
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