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連載小説「ニューヨーク駐妻の果てしなき欲望」 2 夫婦でプリスクールの見学へ

「ねえ満さん、子供たちをそろそろ子供たちを※1プリスクールに入れようと思うのだけど、どう思う?その間に、私もオンラインで英語の勉強とかできるかもしれないし。キンダーに入る前に、拓海もお友達になれておくべきだって思うから」

「そうだね、それは悪くないかも」

「そうは言っても、ちょっとお金はかかるのだけど。」
「たぶん会社が教育費も少しは負担してくれると思うよ。」
「本当に?そうだと、ありがたいわね。」

「じゃあ早速、どこのプリスクールへ入れるのか決めなきゃだね。」
「アメリカ人の先生やママ友と会話できるかどうか、ちょっとチャレンジングだけど、英会話をもっとがんばるわ。」

数日後、さっそく真矢は、学校を見つけてきた。

「校長先生とアポイントメントをとったから、満がリモートで働く日にちょっとだけ時間つくってスクールへ面接に行けるかな?」
「もちろん、大丈夫だよ。今週の木曜日はどうかな?それほど会議も入ってないしね。」

「木曜日なら午後3時くらいならアポ入れられるって言ってたかも。」

「じゃあボスには、午後3時から2時間くらいプライベートで予定を入れることを伝えておくよ。」
「宜しくね。」

「僕はスーツでいくほうがいいよね?真矢はどうするの。」
「私は、スエットみたいな育児の洋服ばかりだから、どうしよう。ちょっとだけ子供たちをみててくれる?ディスカウントの店をのぞいてくる。私もスーツか、ワンピースくらい着ていかないと、印象悪いわよね。」

「どうだろうね。アメリカだし、それほど気にしなくてもいいんじゃないか?」
「カソリック系の学校でしょ?子供たちも制服あるみたいだし。」

面接当日、満はグレーのスーツに濃いブルーにデザインされたネクタイ、真矢は、ディスカウントで買ったばかりの淡いピンク色のワンピースに白いジャケットで行った。

校長は、かなり高齢のようだったが、周囲からは校長という呼び名ではなく、シスターと呼ばれていた。

「はじめまして、私がこの学校の校長であるシスター・マリーです。」校長の心地ようさそうな椅子から立ち上がって、握手を求めてくれた。満と、真矢は、それぞれに握手を交わした。

「私は、満でワイフの真矢、息子の拓海、5歳と娘の紗英、3歳です。二人ともこちらの学校へ入学できればと考えております。」満は、校長に説明をした。

「うちの学校は、カソリックでなくても入れますが、お祈りの時間があります。お子さんを参加させることには同意できますか?」
「はい、もちろんです。」

「それならば、いつでもウェルカムですよ。いつから入学されますか?」
「できれば、すぐにでも入学手続きをすませたいです。」満は、オンラインでダウンロードして記入済みの入学願書をすでに準備してきていた。

「はい、こちらの書類はお受け取りいたしました。それでは、入学の手続きが終わりしだい、ご連絡いたします。そのときに、入学金と学費をチェックかカードでお支払いお願いいたします。」

「ありがとうございます。」夫婦で再び、シスター・マリーにお礼をつげて、校長室を出た。

「シスター・マリーに代わって、私が校内を案内しますね。教頭のミッシェルです。」ミッシェルは、まだ40代くらいのハツラツとして女性で、グレーのタイトなスーツを着こなしていた。

黒いローヒールのシューズで、いかにも動きを機敏にこなせそうで、いろいろ学校の行事的なことは彼女がこなしていることもわかる。

「こちらが礼拝堂です。ほぼ毎日、お祈りの時間があります。教室は、まだ授業を行っているため見れないのですが、ランチを食べたりするカフェテリアはこちらになります。」

とても広々としたカフェテリアだったが、自動販売機などに置いているスナック菓子はキャンディーバーや、チョコチップクッキーなどと、いかにもアメリカなお菓子ばかりが並んでいた。

一通り、校内を見てまわった。外へ出ると、キレイに花壇も整備されており、色とりどりの花が咲いている。

「運動するエリアは少し小さいですが、道路をはさんだ向こう側に第二運動場もあるのですよ。車道をはさんでいますが、必ず、教師がついて移動しますから安心してください。」

「ありがとうございました。子供たちも楽しく過ごせそうな学校ですね。」満は、そう言いながら、そろそろ退散しようとミッシェルに握手を求めた。

「はい、では入学の手続きが完了しましたら、またこちらから連絡をさせていただきますね。」ミッシェルは、軽く微笑んで、握手を二人に返した。

「素敵な学校ね。ここなら家の子たちもすぐに馴染むことができそうね。」真矢は、パーキングへ歩きながら、満の顔を見つめた。

「そうだね。ここなら安心できそうだ。」満も、満足そうに真矢の手をとった。

学校へ子供たちを預けることができれば、少しだけ、夫婦の時間が持てるかもしれないと満は、期待するのだった。

※1プリスクール(Pre-school)・・・ 「私立」の保育園で地域にある教会などが運営していることもある。教会員でなくても必要書類を提出し、校長との簡単な面接などで入学金や経費を払えば入学させてもらえる。

3歳~5歳ぐらいの児童が通うが、義務教育ではないため。義務教育となる幼稚園(キンダーガーデン)へ通う前に通っている子供は多い。


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