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<<創作大賞 恋愛小説部門>>連載小説「憂鬱」-13 いじめの対処にユリアの両親はどう決断したのか?

学校での話し合いを終え、ユリアを連れて自宅へ戻った。敦子は、心の中で怒りと葛藤を抱えていた。娘が受けた仕打ちを思い出すたびに、彼女の胸は痛んだ。

「どうしてこんなことが起こったのかしら……」敦子は静かに呟いた。

夫のルーカスがオフィスから戻ってきた。敦子とユリアが神妙な面持ちでソファに座っているのを見て、少したじろいだが、敦子は気持ちを落ち着かせてゆっくりと事の成り行きを話した。

「そんなに大変なことが起きているならば、電話してくれればよかったのに。僕も立会いたかった。だが、僕がいたとしても娘を傷つけられたことに対する憤りをぶつけただけだったかもしれないな。

敦子は弁護士だから、さすがだよ。娘がこれほどの目にあっても冷静に対処してくれた。僕は悔しくて、今からでもその生徒をぶん殴りたい気持ちだ。

だけど怒りをぶつけてばかりでは何も解決しない。ユリアのためにも、次のステップを考えよう。」ルーカスは優しくユリアをハグして、娘を慰めた。

敦子は深く息をつき、夫の言葉に頷いた。彼女は弁護士としての冷静さを取り戻し、次の行動を考え始めた。

「確かに、法的には訴えることができる。でも、いじめをした子供たちの将来も考えないとならない。」は冷静な口調で言った。

「どういう意味だい?」ルーカスが尋ねる。

「ユリアは辱めをうけたけど、レイプされたわけではない。確かに心の傷は深いけれど、法廷での闘いが彼女にとって負担になる可能性もある。訴えたとしても、ユリアの心の傷が癒えるわけではないから。」敦子は慎重に言葉を選びながら説明した。

ルーカスは静かに頷き、彼女の言葉に耳を傾けた。

「それに、訴えることによって学校全体が混乱するかもしれない。私たちはユリアの安全を最優先に考えなければならないけれど、警察にも介入してもらわないとならないので、世間の目にさらされるのは、目に見えてるから。穏便に済ませることがベストかもしれない。」敦子はそう付け加えた。

「じゃあ、どうすればいいのだろう?」ルーカスが尋ねる。

「私は学校側に対して、今後こうしたトラブルが再発しないように強く求めるつもりです。その上で、ユリアを退学させることに決めたわ。」断固たる決意を示した。

ルーカスは驚いたように彼女を見つめたが、すぐに理解したように頷いた。

「ユリアのためにも、これが一番良い選択かもしれないな。」

翌日、ユリアの両親は学校を訪れ、校長室で話し合いを続けた。彼らはユリアの退学を正式に告げ、今後の対策についても厳しく求めた。

「私たちは娘を退学させることを決意しました。しかし、これはあくまでユリアの安全を最優先に考えた結果です。今後、同じようなトラブルが再発しないように、学校側の対応を強化していただきたい。」敦子は強い口調で校長に訴えた。

校長は深く頭を下げ、彼女の言葉を真剣に受け止めた。

「もちろんです。我々も今回の件を重く受け止め、再発防止に全力を尽くします。」校長は真摯な態度で答えた。

話し合いを終えた後、ユリアの両親は彼女を家に連れて帰った。ユリアは両親に対する感謝と、これからの新しいスタートへの不安を胸に抱きながら、静かにその日を過ごした。

その後、ユリアは新しい学校に転校することとなった。彼女は新しい環境で新たな友達を作り、バレエに打ち込むことで心の傷を少しずつ癒していった。

一方、沙知絵のいじめは校内で話題となっていた。今度は、自分が学校のみんなから攻撃の対象となっていった。誰だかわからないが、わざと沙知絵の上履きを隠してみたり、机に「いじめのボスは消えろ!」となぐり書きされていたりした。

自分の行為がどれほどの影響を与えたかを理解し、深い後悔の念に駆られていた。彼女は自分の行動を反省し、もう二度と同じ過ちを犯さないことを誓った。学校へ行くのをためらう日も増え、自宅で過ごすようになっていった。

ユリアは新しい学校で少しずつ友達を作り始めていた。彼女のバレエへの情熱は以前と変わらず、むしろ新しい環境でさらに燃え上がっていた。彼女はバレエの練習に没頭することで、過去の出来事から少しずつ解放されていった。

ある日、ユリアは放課後のバレエの練習を終えて、帰り道を歩いていた。彼女の心は穏やかで、新しい友達や先生たちの優しさに支えられていた。

「ユリア、ちょっと待って!」背後から玲実の声が聞こえた。

ユリアが振り返ると、玲実が走ってくるのが見えた。彼女は笑顔で玲実を迎えた。

「玲実、どうしたの?」ユリアが尋ねると、玲実は息を切らしながら言った。

「あなたに会いたくて、学校まで来ちゃった。」玲実は少し照れくさそうに笑った。

ユリアはその言葉に胸が温かくなった。彼女たちは手を取り合い、しばらくの間、静かに歩いた。

「新しい学校はどう?」玲実が尋ねた。

「うん、いい感じだよ。みんな優しいし、先生もとても熱心で、私を応援してくれてる。」ユリアは笑顔で答えた。

「それは良かった。ユリアが幸せそうで、本当に安心した。」玲実も笑顔で答えた。

彼女たちはその後、近くのカフェに立ち寄り、楽しいひとときを過ごした。玲実はユリアの新しい学校での生活を聞きながら、幸せな気分になった。ユリアの手をギュッと握った。

沙知絵の不登校の日々は一月近く続いた。カーテンを閉めて自室に閉じこもったままだった。彼女は心療内科のカウンセラーとの面談を重ね、自分の行動を見つめ直す機会を得た。

「沙知絵さん、あなたはなぜあんなことをしてしまったのですか?」カウンセラーが静かに尋ねた。

「私は……ただ、ユリアが羨ましかったんです。彼女はいつも明るくて、みんなに好かれていて……でも、それは言い訳になりません。」沙知絵は涙を流しながら答えた。

「そうですね。羨望や嫉妬は誰にでもありますが、それをどのように処理するかが大切です。あなたはこれから、自分の行動をどう変えていくべきかを考える必要があります。」カウンセラーは優しくアドバイスした。

沙知絵はその言葉に少しだけ救われた気がした。羨望や嫉妬は誰にでもある。だったら、自分はその気持をどこへぶつけたらよかったのだろう?

「だったら、私はその嫉妬や羨望の気持ちをどうすれば良かったのですか?」

「まずは、あなたがユリアさんのどういったところに羨望していたのかを見つめ直す必要があります。

そして自分はその羨望に対して、どうするのか?羨望が嫉妬に変わることは、誰にでも起こることです。ついつい他の人のことを羨ましいって思う部分が出てくることもあるのですが、なるべく、他の人と自分を比較しないことです。

自分の長所を活かして、自分には何ができるだろうかって考えて、自分のペースで自分らしく生きていくべきです。

誰にだって長所があるのですから。人のことを羨むのではなく、自分らしさを磨いていくことが大切なのです。」

ユリアは、さらにバレエに打ち込む日々を送っていた。彼女の努力は実を結び、地元のバレエコンクールで優勝するという快挙を成し遂げた。

「ユリア、本当におめでとう!」玲実がコンクールの後、満面の笑みでユリアを抱きしめた。

「ありがとう、玲実。あなたのおかげでここまで来れたよ。」ユリアは涙を浮かべながら感謝の言葉を述べた。

彼女たちはその瞬間、お互いの絆がさらに強くなったことを感じた。ユリアの夢であるニューヨークでのバレエ留学への道が、少しずつ現実味を帯びてきた。

ユリアの両親は、娘が新しい学校で成功を収めていることに安堵し、彼女の将来に対して希望を抱いていた。

「ダッド、マム、私ね、コンクールに優勝したら言おうって思ってたのだけど、ニューヨークに留学させてほしいの。」

「ユリアの夢がニューヨークの留学ということであれば、僕たちはできる限りで応援するよ。」ルーカスは微笑みながら答えたのだった。

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