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レジ打ちおばちゃんのアートな会話術。
予期せぬ出会い
最近のスーパーは無人レジが増えてきている中で、僕のよく行く近所のスーパーは今も有人レジだ。
ある日レジで会計をしようとクレジットカードを差し出し読み込んでもらってる時に、
「そのカバンの絵、誰のだっけ?」
と目の前にいるレジのおばちゃんに声をかけられた。
「・・・! バスキアです。」
僕はいつもスーパーに行く時にバスキアのエコバッグを持っていくのだ。まさかレジのおばちゃんから「ビニール袋がいりますか?」以外の質問をされると思っていないので返事が通常の会話より0.5秒遅れた。
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「そうだバスキアだぁ」
と独り言のように発しつつ手際よくクレジットカードと買い物かごを渡してくれた。
再会は突然に
そんな出来事があって暫く経った後、またいつものスーパーに行き、買い物をしてレジに並んだ。そして自分の番が来た時にいつも通りクレジットカードを渡した。
「バスキアのカバンってどこで売ってるの?」
驚きを隠せず思わず前を見ると、先日質問してきたおばちゃんが目の前に立っていた。
「!!!!!!・・・熊本の美術館です。」
レジに並ぶ時にいちいち店員さんの顔なんて見ないので、この前と同じおばちゃんだったと気づくまで声をかけられるまで分からなかった。
何より、内容的に以前の会話が続いてるのだ。日が経っているにもかかわらず、このおばちゃんは単なる質問でなく僕と会話をしているのだ。しかもちゃんと前回僕が教えた「バスキア」を覚えている。そう思ったら今度は返事をするのに1秒ぐらい遅れた。
沼の始まり?
さて、それ以降僕はそのスーパーに行く度、そのおばちゃんがレジにいるかどうかを確認せずにはいられなくなった。別に質問されるのが嫌とかじゃなくて、気になって仕方ないのだ。これが「沼る」ということか。
別の日に、今度はレジにそのおばちゃんがいることを先に確認できたのであえてその列に並んでみる。自分の番が来るのがドキドキする。そしていつものようにクレジットカードを差し出す。
(さぁ、今日はどんな質問がくるんだ!なんでもすぐ答えてるやるぞ!)
と意気込んでいたら、
「あたし、バスキアのスマホケースが欲しいんだよねぇ。」
(!!!!!!し、質問じゃなかった!)
「・・・・う、売ってそうですよね。」
質問がくると思っていたのでとてつもなく変な返答をしてしまった。
そして、あることに気づく。このおばちゃんは僕が返事をしたあと、二つ目の質問は絶対しないということ。必ず一回のやり取りでその日の会話は終わる。なぜか。
僕がクレジットカードを差し出しているからだ。クレジットカードを差し出すと機械が読み取る数秒の余白が生まれる。毎回必ず、その時間だけで可能な会話をしているのだ。
現金で支払いをしていたら余白なんてほとんど生まれないし、逆に、二問三問としていたら後ろのお客さんを待たせることになりかねない。3回の会話を経ておばちゃんのプロフェッショナリズムに気付かされた。
今度行くまでにバスキアのスマホケースが売ってる店を調べて教えてあげようかなと思ったけど、それはそれで自分気持ち悪いなと思ってやめた。
それに準備していくのはナンセンスのように思えた。
スーパーに限らず(スーパーは逆に例外かも)、アパレル店や美容室などで店員さんと会話したい人、全くしたくない人は別れると思うが僕は圧倒的に会話したい人だ。だから今回の出来事は嫌ではなかったし予期せぬところから生まれたその会話がとても面白く感じた。サプライズをありがとうおばちゃん。
今後もその場だけのたった数秒の余白だけでする会話が楽しみだ。