【独自研究あり】究極のダイアトニック・コードまとめ!(私案)


こんにちは。名古屋でベースを弾いている吉岡直樹です。

ジャズの理論において、キーとコードとスケールの関係を学ぶときにダイアトニック・コードを学びますよね。まず最初に、メジャー・スケールの7つのダイアトニック・コードと7つのモードを学び、また、メジャー・キーにおけるコードの機能も学びます。

次に、マイナー・キーなのですが、ご存知の通りマイナー・スケールには、3種類のスケールがありますから、ダイアトニック・コードの数が一気に増えます。なかには、マイナー・キーではあまり実用的とも思われないようなコードもある上に、モードの名前もメジャー・キーの場合のようにすっきりしていません。そこで、たいてい学習が有耶無耶になった方も少なくないかと思います。ジャズ理論をレッスンしている方、あるいは教科書として使用されている理論書にはどのように説明しているのでしょうか。

そこで、本稿で私は、まず、従来のダイアトニック・コードの説明とその限界を指摘し、次に、より実践的なダイアトニック・コードについて、そのスケールとの関係も踏まえてまとめてみたいと思います。

言葉の定義

ここでは念のため、言葉の定義についてまとめておきます。やや独自の解釈(拡大解釈)もあるのですが、理論を学ぶ目的は、音楽の理解を深め、自由な表現をするためであるはずです。したがって、従来の解釈とは若干異なる点もあるのですが、私なりにじゅうぶんな検討を加えたうえでのことなので、違和感を持たれることもあるかもしれませんが、どうか一読していただければ幸いです。ご批判は真摯に受け止めます。

ダイアトニック・コードとノンダイアトニック・コード

「ダイアトニック」という語には全音階的という訳語も当てられているのですが、その内容は意外と難しいものです。しかし、ジャズにおいては、1つのスケール(メジャー・スケールのようなキーに対応する7音からなるスケール)に対して、そのスケール上にあればダイアトニック、そのスケール上になければノンダイアトニックという程度の理解でとりあえずはなんとかなると思います。

よって、あるコードのすべてのコード・トーンがCメジャー・スケール上の音であれば、そのコードはCメジャー・スケールのダイアトニック・コードだということができますし、コード・トーンのうち、1つでもCメジャー・スケール上にない音(♯や♭が音名に付く音)が含まれていたら、その音はCメジャー・スケールに対するノンダイアトニック・コードということになるという理解でまずは大丈夫だと思います。

ダイアトニック・コードの対象とするスケール

ダイアトニック・スケールは、メジャー・スケールのように半音2つと全音5つからなるスケール(さらにいえばA〜Gのすべてのアルファベットを1度ずつ使うもの)であるという定義があるようです。半音階でダイアトニック・スケールを議論しても意味がないので当然としても、ホール・トーン・スケールやディミニッシュ・スケールなどについても、ダイアトニック・コードを想定できないことになります。なぜならば、これらは7音からなるスケールではないからです。

問題は、ハーモニック・マイナー・スケールやハーモニック・メジャー・スケールです。これらは7つアルファベットを1回ずつ使うキーに対応したスケールなのですが、途中で増2度が出てきます。よって、ダイアトニック・スケールの定義からはずれます。ダイアトニック・スケールではないスケールに対して、ダイアトニック・コードもノンダイアトニック・コードもないだろう、というのは当然の見方かとは思います。しかし、ダイアトニック・コードを考える目的はそもそもコードやスケールについての理解を深め、それを演奏に生かすことです。したがって、ハーモニック・マイナー・スケールやハーモニック・メジャー・スケールもダイアトニック・スケールとみなし(それがいけないというのであれば、ダイアトニック・スケールに準ずるものとみなし)、ダイアトニック・コードを想定することも必要だと私は考えます。

従来のダイアトニック・コードの限界

それでは従来のダイアトニック・コードの考え方とその限界について指摘していきましょう。

メジャー・スケールとナチュラル・マイナー・スケールのダイアトニック・コード

ナチュラル・マイナー・スケールはメジャー・スケールの第6モード(エオリアン)、また、メジャー・スケールもナチュラル・マイナー・スケールの第3モード(アイオニアン)ですから、紙幅(?)の省略も兼ねてここではまとめて扱うことにしましょう。

メジャー・スケールとナチュラル・マイナー・スケールにおいてダイアトニック・コードを考えることは比較的うまくいっています。ここではCメジャー・スケールとAマイナー・スケールで考えたいと思います。

ジャズのコードは原則として三和音ではなく四和音(テトラド)で考えます。三和音では和声的機能が確定できないからです。したがって、Cメジャー・スケール(Aナチュラル・マイナー・スケール)のそれぞれの音から、スケール上の3度、5度、7度の音を機械的に足してやれば、ダイアトニック・コードをつくることができます。

Cメジャー・スケールのダイアトニック・コードは共通していて次のようになります。Aナチュラル・マイナー・スケールはCメジャー・スケールを単純に並び替えただけですから、ダイアトニック・コードは共通です。

Cメジャー・スケールのダイアトニック・コード

また、即興音楽であるジャズではコード・シンボルをスケール・シンボルとして読む習慣があります。例えば、メジャー・コードであればアイオニアンかリディアン、マイナー・セブンス・コードはドリアンかフリジアンかエオリアンというように。

つまり、モードの名前の出番なのですが、これもメジャー・スケールやナチュラル・マイナー・スケールの場合、とてもうまく説明できます。

メジャー・スケールのダイアトニック・コードとモード

メロディック・マイナー・スケールとメロディック・メジャー・スケールのダイアトニック・コード

では、メロディック・マイナー・スケール、それからメロディック・メジャー・スケールのダイアトニック・コードについても考えてみましょう。

あまり知られていないようなのですが、3種類のマイナー・スケールがあるように、実はメジャー・スケールにも、ナチュラル、メロディック、ハーモニックの3種のメジャー・スケールがあります。

単にメジャー・スケールといえば、ナチュラル・メジャー・スケールを指します。そして、メロディック・メジャー・スケールはナチュラル・メジャー・スケールの6度と7度を半音下げたもの、ハーモニック・メジャー・スケールはナチュラル・メジャー・スケールの6度を半音下げたものです。

古典的なスケールでは、メロディック・マイナー・スケール、メロディック・メジャー・スケールともに上行形と下行形が異なります。つまり、メロディック・マイナー・スケールの下行形はナチュラル・マイナー・スケールと同形であり、またメロディック・メジャー・スケールでは上行形のほうがナチュラル・メジャー・スケールと同形になります。ところが、ジャズ和声では、上行形と下行形を区別せず、ナチュラル・メジャー(マイナー)・スケールを変化させたほうだけをメロディック・メジャー(マイナー)・スケールとして扱います。

さて、メロディック・メジャー・スケールはメロディック・マイナー・スケールの第5モードにあたります。反対にメロディック・マイナー・スケールは、メロディック・メジャー・スケールの第4モードということになります。この関係は、(ナチュラル)メジャー・スケールとナチュラル・マイナー・スケールとの関係のように、調号を共有しないことに注意が必要です。

ここではメジャー・スケールやナチュラル・メジャー・スケールで行った方法で、Aメロディック・マイナー・スケールのダイアトニック・コードと対応するスケールを導いてみます。すると次のような結果になります。

Aメロディック・マイナー・スケールのダイアトニック・コードとモード

さて、この結果を見てどう思われるでしょうか。

うまくいっているのは、まず、Ammaj7とアイオニアン♭3スケールです。このスケール名はともかく、マイナー・メジャー・セブンス・コードはメロディック・マイナー・スケールのコード・シンボルとして機能しますので、これはとても適切です。

D7もうまくいっていますね。ミクソリディアン♯4(別名もあり)は、ドミナント・セブンス・コードに対応するスケールの一種です。

F♯m7$${^{(\flat5)}}$$もよいでしょう。ロクリアン♯2は、ハーフ・ディミニッシュ・コードに対応するスケールのひとつですから。

同様にCmaj7$${^{(\sharp5)}}$$もよいでしょう。このコードがマイナー・キーで出てくることはそれほどないかもしれませんが、リディアン♯5は、メジャー・セブンス・♯5・コードに対応するスケールのひとつです。

E7についてですが、私はこれはこれでよいと考えます。確かに、ソロをしていてドミナント・セブンス・コードでエオリアン♯3(メロディック・メジャー・スケール)を思い浮かべる人はいないでしょう。しかし、このスケールはテーマのときに出てくるのです。有名なのは Autumn Leaves の6小節目や、Beautiful Love の8小節目後半(仮にこの小節の後半2拍をV7とする場合)でしょうか。

ところが、明らかに違和感があるのはG♯m7$${^{(\flat5)}}$$に対するスーパーロクリアンあるいはオルタードではないでしょうか。ハーフ・ディミニッシュ・コードに対してこのスケールを思い浮かべる人はまずいないでしょう。オルタード・スケールは alt と書かれたドミナント・セブンス・コードのときに想定するはずです。

また、Bm7に対するドリアン♭2というのもふつうは想定しませんよね。

ハーモニック・マイナー・スケールのダイアトニック・コード

ハーモニック・マイナー・スケールについても、同様のやりかたでダイアトニック・コードをつくり、モードと比べてみましょう。

Aハーモニック・マイナー・スケールのダイアトニック・コードとモード

Cmaj7$${^{(\sharp5)}}$$、E7はよいでしょう。また、G♯dim7も、E7$${^{(\flat9)}}$$のルート省略(ベース音がG♯)だと考えれば、そういうこともありそうです。

Ammaj7に対してハーモニック・マイナー・スケールを想定するかは微妙なところですが、異国情緒風のテーマだったり、洒落でそれっぽいソロをしたり、ということが絶対にないとも断言できないので、ここではよしとしましょう。

ところがBm7$${^{(\flat5)}}$$、Dm7、Fmaj7の場合は明らかに不適切です。これらのコードで、このようなモード(スケール)を想定してソロをするということが果たしてあるでしょうか。たとえあったとしてもかなり特殊な事例で、確率からいけば0.01%以下ではないでしょうか。少なくとも、これからコードやスケールについて学んでいこうという人に伝えるには特殊すぎます。

ハーモニック・メジャー・スケールのダイアトニック・コード

ハーモニック・メジャー・スケールについても、ダイアトニック・コードとスケールについて見てみましょう。同じ方法で導くと次のようになります。

Cハーモニック・メジャー・スケールのダイアトニック・コードとモード

コードとモードがセットで使えそうなのはG7とBdim7くらいで、あとはコード・シンボルに対してほとんど実用的とはいえないモードが並んでいます。

ダイアトニック・コード理論改善私案

これまで述べたように、(ナチュラル・)メジャー・スケールやナチュラル・マイナー・スケール以外の各スケールでは、ほとんど実用的ではないコードやモードの組み合わせがいくつか含まれていて、特にハーモニック・マイナー・スケールやハーモニック・メジャー・スケールにおいて顕著です。

では、どうしたらよいのか。そもそも考えない、あるいは、都合のよいところだけ取り入れる、という方法も確かにあるでしょう。私はこれまでそうしてきましたし、それで大きな問題はないはずです。特に初級者、中級者くらいまでは、ほかに大切なことがたくさんありますので、ダイアトニック・コードの、重箱の隅をつつくようなところに拘泥する必要もないと思います。

しかし、ちょっと見方や発想を変えるだけで、少しだけダイアトニック・コードを実用的なコードとスケールに置き換えることができるのです。以下、それらを見ていきましょう。

メロディック・マイナー・スケールの第7モード

メロディック・マイナー・スケールの第7モード、そしてメロディック・メジャー・スケールの第3モードはオルタード・スケールなのですが、深く考えず機械的にダイアトニック・スケールをつくるとハーフ・ディミニッシュ・コードができてしまいます。

ところが、よくご存知のようにオルタード・スケールといえばドミナント・セブンス・コードのはずです。

Cメロディック・マイナー・スケールの第7モードのダイアトニック・コード

日頃からソロなどの採譜(いわゆる耳コピー)をしたり、作編曲をしたりする方であれば実感していることだと思いますが、ドミナント・セブンス・コードがオルタード・スケールとななる場合、異名同音を厳密に守ることは困難な場合がほとんどです。したがって、ここでもE♭を便宜的にD♯だと考えることで、ダイアトニック・コードとしてB7(B7alt)を導くことができます。

ここでお断りしておきますが、私は異名同音にはどちらかといえばやかましいほうです。クロマティック・スケール、ディミニッシュ・スケール、ホール・トーン・スケールのように、7音のスケール以外では異名同音の区別をすることじたい無意味なことは自明ですが、オルタード・スケールのようにたとえ7音からなるスケールの音程についても、スケールによっては異名同音にこだわることについては意味がないものがあると考えます。加えて、後述しますが、実際は短6度とすべき音の一部についても、コード表記においては慣例的に♯5(増5度)と表記されているものもあります。私は、敢えてこれを「♭6」のように主張はしません。たとえ♭6であっても♯5と表記することによってほかの類似のコードとの共通点を見出すことができると考えるからです。

ハーモニック・メジャー・スケールの第3モード

同様に、ハーモニック・メジャー・スケールの第3モードに対しても減4度を異名同音の長3度に読み替えてドミナント・セブンス・コードをダイアトニック・コードとして設定できそうです。

Cハーモニック・メジャー・スケールの第3モードのダイアトニック・コード

これは、オルタード・スケールの5度が半音高いスケールです。オルタードのドミナント・セブンス・コードであっても、ブルージーな局面で完全5度がメロディ(トップ・ノート)となるケースがありますが、そのようなとき、このスケールを考えるとよさそうです。

メジャー・セブンス・♯5・コードに対応するモード

メロディック・マイナー・スケールの第3モード、あるいはメロディック・メジャー・スケールの第6モードのリディアン♯5は、メジャー・セブンス・♯5・コードに対応する代表的なスケールです。

しかし、あるときたまたま店でかかっていたフランク・シナトラのレコードを聞いていたら、曲のイントロで Cmaj7 Cmaj7$${^{(\sharp5)}}$$ C6 Cmaj7$${^{(\sharp)}}$$ のようなクリシェにおいて、トップ・ノートがずっとドミナント(この場合Gの音)が鳴ってました。

どの曲かも忘れてしまったのはとても惜しいことをしましたが、このときトップ・ノートに完全5度が鳴っているのですから、このようなときのCmaj7$${^{(\sharp5)}}$$ の増5度は、実際のところ短6度と考えるほうが自然だと私は考えます。もちろん、慣例的には増5度と書いたらよいのですが、このようなこともあるのだなということに気づいたのです。

このとき、コード・トーンのC・E・G♯(実際にはA♭)・B、それに、トップ・ノートのG、それにテンションで使えそうな長9度のDとアボイドのFを並び替えると、Cハーモニック・メジャー・スケールとなります。

よって、Cハーモニック・メジャー・スケールの第1モードに対応するダイアトニック・コードはメジャー・セブンス・♯5・コードではないでしょうか。

ハーモニック・メジャーの第1モードとダイアトニック・コード

つまり、メジャー・セブンス・♯5・コードに対応するスケールは、リディアン♯5、アイオニアン♯5に加えて、アイオニアン♭6(ハーモニック・メジャー・スケール)の3つがあるということになるでしょう。

マイナー・♯5・コードに対応するモード

メジャー・キーのクリシェで増5度が使われるように、マイナー・キーのクリシェで増5度が使われることがあります。

これは慣例として増5度と表記されますが、マイナー・キーにおけるこの音はほぼ例外なく短6度であると考えるべきでしょう。例えば、基本的なトライアドのなかに、ルート、短3度、増5度のトライアドがない(増5度の異名同音である短6度をルートとするメジャー・トライアドの第1転回形とされる)こともヒントとなるでしょう。

実際の演奏では、マイナー・スケールのクリシェにおいて、4番目のコード・トーン(長6度/短7度/長7度)が確定できないこともあるのですが、今は深入りせず、マイナ・セブンス・♯5・コードまたはマイナー・メジャー・セブンス・♯5・コード(ただしいずれも♯5は実質的に短6度。よってマイナー・シックスス・♯5・コードについては考慮しない)に対応するスケールを考えてみたいと思います。

すると、前者に対してはエオリアンが、また後者に対してはエオリアン♯7(ハーモニック・マイナー・スケール)が対応するスケールといえそうです。

エオリアンはマイナー・セブンス・♯5・コードにも対応する
エオリアン♯7はマイナー・メジャー・セブンス・♯5・コードのモード

すなわち、マイナー・セブンス・♯5・コードはマイナー・セブンス・コードとともにナチュラル・マイナー・スケールの1つ目のダイアトニック・コード、そしてマイナー・メジャー・セブンス・♯5・コードは、ハーモニック・マイナー・スケールの1つ目のダイアトニック・コードということができます。

フリジアンに対応する2つのコード

フリジアンは、メジャー・スケールの第3モードとナチュラル・マイナー・スケールの第5モードです。ともにダイアトニック・コードはマイナー・セブンス・コードです。

しかし、フリジアンに対応するもう1つのコードを忘れてはなりません。特にマイナー・キーで使われるV7sus4$${^{(\flat9)}}$$です。このコードにはいくつか別の表記法がありますが、いずれも♭VImaj7$${^{(\sharp11)}}$$/V のような分数コードです。

例えば、スタン・ゲッツやマイルス・デイビスが演奏する Dear Old Stockholm の印象的なヴァンプ部分のコードがフリジアンであり、しかもこれはダイアトニックな使い方です。したがって、ナチュラル・マイナー・スケールのダイアトニック・コードを整理するときに、第5モードのフリジアンに対するこのコードを見落としてはならないでしょう。

フリジアンと2つのダイアトニック・コード

ハーモニック・マイナー・コードとハーモニック・メジャー・コードの2・4・6番目のダイアトニック・コード

ハーモニック・マイナー・コードとハーモニック・メジャー・コードのダイアトニック・コードの多くは、コード・シンボルに対するスケールがほとんど見たこともないようなもので、到底実用的なものととは思われないようなものばかりでした。

しかし、スケールの音を注意深く見ると、異名同音を区別しなければ、いずれも第2、第4、第6モードからディミニッシュ・コードを作ることができることに気づくでしょう(私は気づくのに何年もかかりましたが)。実際、第7モードはディミニッシュ・コードですね。

そもそも、ハーモニック・マイナー・コードもハーモニック・メジャー・コードも、ドミナント、それもV7$${^{(\flat9)}}$$のために用意されたスケールといっても過言ではありません。

そして、V7$${^{(\flat9)}}$$からルートを省略してできるディミニッシュコードを転回していけば、VIIdim7、IIdim7、IVdim7、♭VIdim7になります。

ディミニッシュ・コードには、ディミニッシュ・スケールに対応したものとそうでないものがあり、私は半ばふざけて前者を「本物のディミニッシュ・コード」、後者を「偽ディミニッシュ」と呼んでいます。

いわゆる「偽ディミニッシュ」とは、短9度のテンションを持つドミナント・セブンスのルート省略形(あるいはベース音が長3度のもの)と考えることができますが、この考えをさらに発展させて、短9度のテンションを持つドミナント・セブンス・コードV7$${^{(\flat9)}}$$の、ベース音がそれぞれ完全5度、短7度、短9度のものを想定したものが、VIIdim7、IVdim7、♭VIdim7だと考えることはできないでしょうか。

そして、スケールは、元になるドミナント・セブンスを持ち出して、そのハーモニック・マイナー・スケール、あるいはハーモニック・メジャー・スケールと説明することもできるでしょう(実際の曲においては、半音-全音ディミニッシュ・スケールもありそうですが、考え方としては同じです)。

ハーモニック・マイナー・スケールの第2・4・6モードとダイアトニック・コード
ハーモニック・メジャー・スケールの第2・4・6モードとダイアトニック・コード

結論

以上を踏まえると、それぞれ3種あるメジャー・スケールとマイナー・スケールのダイアトニック・コードは次の通りになります。

メジャー・スケールのダイアトニック・コード

Cメジャー・スケールのダイアトニック・コードと対応するモード

従来と比べて特に変更はありません。また、いずれのモードも実用的といえます。

メロディック・メジャー・スケールのダイアトニック・コード

5番目はあまり実用的ではなく、また、1番目もどちらかといえばメロディック・マイナー・スケールの第5モードとして覚えるほうがよいでしょう。

キーとの関係でいえば、メジャー・キーにおけるサブドミナント・マイナーIVmmaj7とその代理コード♭VII7、それにメジャー・キーのV7の関係コードとしてのIIm7$${^{(\flat5)}}$$(例えば、C. Porter の I Love You 冒頭)が説明できるので、この3つは早い段階で理解しておくとよいと私は考えます。

ハーモニック・メジャー・スケールのダイアトニック・コード

Cハーモニック・メジャー・スケールのダイアトニック・コードとモード

これでだいぶすっきりしたと思いますが微妙ですかね。ディミニッシュ・コードに対応するモード名は覚える必要はなく、いずれもG7$${^{(\flat9)}}$$のベース指定としてGミクソリディアン♭2で押し通せばよいかと思います。

ナチュラル・マイナー・スケールのダイアトニック・コード

Cナチュラル・マイナー・スケールのダイアトニック・コードとモード

従来のダイアトニック・コードに加えて、Cm7$${^{(\sharp5)}}$$とG7$${^{(\flat9)}}$$が追加されています。

メロディック・マイナー・スケールのダイアトニック・コード

Cメロディック・マイナー・スケールのダイアトニック・コード

これで第2モード以外は実用的なコードとスケールが揃いました。

ハーモニック・マイナー・スケールのダイアトニック・コード

Cハーモニック・マイナー・スケールのダイアトニックとモード

ディミニッシュ・コードとなっているところは、スケール名を覚えるのはやめにして、それぞれG7$${^{(\flat9)}}$$のベース音指定と読み替えて、モードもGフリジアン♯3だと理解したほうがよいでしょう。

むすび

いかがでしたか。完全にすっきりと整理できたわけではありませんが、多少は実用的になったのでは? と思います。ここに書いたことを完璧に丸暗記する必要はありません。スケール名(モード名)も、メジャー・スケールに対応するものさえ覚えてしまえばあとはなんとかなります。大切なことは、暗記することではなく、これらを表現や理解の助けになるように活用することです。

一方で、理論を教える立場の方、質問を受ける立場の方のなかには、ハーモニック・マイナーのダイアトニック・コードっていわれても使いどころもないしな、と歯切れの悪い回答に終始していた方も少なくないかと思います。私もそのうちの一人です。

今回、すっきりと美しくまでは整理できませんでしたが、例えばメジャー・コードやマイナー・コードの♯5について踏み込んで整理できたことは、個人的には収穫でした。とはいえ、まだまだ粗があるかと思いますし、うっかりミスもあるかもしれません。ご批判、ご批正は真摯かつ謙虚に受け止めます。どうか忌憚ないご意見をいただけるととても嬉しく思います。また、これを気に、ジャズ・セオリーをしっかり学びたいとお考えの方、オンライン・レッスンをしておりますので、よければご検討ください。

長文になりましたが最後までお読みくださりありがとうございました。


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