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障がい児の「物心つかない時期の体験」は「成長の方向性」を決める

作業療法士として働きながら、知的障がいを持つ子どもを社会人まで育てた経験から言えることで、確信に近いことがあります。

それは、障がいを持つ子どもがいろいろなことに興味が持つためには、『物心がつかないうちから色々なことを体験する』ことがキーになるということです。




子どもは日々のいろいろな経験の中で好きなものを取捨選択し、成長とともに次第に趣向がハッキリと定まってきます。

自閉症や知的障がいを持つ子どもはこだわりを示すことが多く、特定のものに対する興味が強くなりやすいケースが見受けられます。


そして、ある程度大きくなると興味は定着し、新しいことに興味を持ちにくくなります。

ここに、早期にいろいろな体験をすることの意義があるのです。



僕の子どものクラスメイトたちには同じような傾向がありました。

ゲームやスマホ、YouTubeから離れられなくなっている子どもたちが多かったのです。

問題なのは、スマホやゲームなどは、ビジネスのプロフェショナルたちが「触りたくなる」工夫を全力で施しているため、大人でさえ太刀打ちできないほど依存性が強いということです。


健康や長期的な視点から感情をコントロールしたり誘惑を我慢したりする能力は、主に脳の中では「前頭葉」というところが司っています。

「前頭葉」は通常、脳の発達の中では、他の部分に比べて遅いタイミングで発達してきます。

つまり子どもの脳は、色々なことができるようになった後から我慢する能力が発達するようにプログラムされているということです。


子どもはゲームやスマホを喜んで使うのですが、そのときまだ「主体的に我慢する」能力は、機能として備わっていません。

ここに、興味の幅が広がりにくい自閉症や知的障がいを持つ子どもが成長するための分岐点があるように思うのです。





自閉症などの障がいを持つ子どもは、成長の過程で興味が定着すると、他のことに興味を持ちにくくなります。

逆に、就学前の好き嫌いが曖昧な時期は、子どもの中にいろいろなものを受け入れる余白が残されています。

この期間にどのような体験をするのかということが、その後の成長の方向性を左右するという意味で貴重な時間になるのです。


ではどのように、いろいろな体験の機会を作っていくのが良いのでしょうか。

僕の答えは、ほぼ一択です。


それは
「親子で楽しみが共有できそうなことを、思いつくままに試してみる」ということです。



親自身が子どもと一緒に楽しみたい、または親自身が楽しみたいことを、思いつくままにいろいろとやってみることをオススメします。

ショッピングでもいいですし、自然の中でのアウトドア、または友人たちとの飲み会などでも構いません。


ポイントは、子どもの成長のために良いことでも、親にとって苦痛なことは諦めるべきというところです。

子どものためだけに頑張るという意識は、長期的に親のメンタルに悪影響があるからです。


もし子どもがハマらないならサッパリ諦めて、また次のことを考える、ということを繰り返していきます。

そうすることで、親子で共有できる楽しみが見つかる確率は高くなるのです。



親子で楽しめる事を見つけるということには「他人と共有できる体験に出会う」という意味合いがあります。

活動を通じて人と繋がる体験は、その後の人間関係に対する認識を変えます。

そのため、コミュニケーションスキルがどこまで伸びるかわからない子どもにとっては貴重な経験になるのです。


色々な場所に慣れるということを考えれば、家以外・家族以外という方向がベターなのですが、もちろん家の中でも良いと思います。

たったひとつでも、子どもと共有できる何かが見つかれば、それは成長の糧になるだけでなく、家族関係にも良い影響があります。

「子どもと一緒に楽しめるテレビ番組が見つかった」ということですら、コミュニケーションのきっかけとしては重要です。

なぜなら、ちょっとしたことの積み重ねで、子どもの成長や生活は変化していくからです。






子どもの成長がほんの少しでも進むことですら、長期的に見れば親の安心感につながります。

「親子で楽しめることを探す」ことは、その初めの一歩になるのではないかと考えます。


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