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障がい児の育児に「他者と比べない」誓いを立てる

以前参加した親のための研修会で、忘れられない情景があります。

それは東田直樹さん親子の公演でした。



公演は主催側の挨拶で登壇した女性の挨拶から始まったのですが、その女性は重度自閉症のお子さんを育てておられました。

挨拶は以下のような内容だったと記憶しています。



『自分の子どもは思っていることを意識表示できない』

『でも東田さんは言葉が喋れなくても、お母さんの工夫や努力で、自身の内面を表現できるように成長されている。』

『自分の子どもにも私がきちんと意思を引き出す工夫をしてあげたら、もっと思っていることを表出できるようになったのかもしれない。』

『そう考えると、本当に申し訳ない気持ちなる』



目に涙を浮かべながら、話をされている女性を目にして、僕は今まで感じたことのないくらいの強い衝撃を受けました。

(※公演の内容は、表出ができない東田さんに対してお母さんがどのような育児の工夫をしてきたのかという、大変意義のある内容でした)






このときに考え理解したこと。
それは「育児も子どもも他者と比べてはいけない」ということでした。


その女性は、自身の子どもにきっととても深い愛情と責任感を持って育てられたのだと思います。

それ故に、「子どもに十分な教育を行えたのだろうか」という自身への問いが生まれ、自分に原因があるのではないかという葛藤が生じたのではないかと推察します。

この時点で、この方は親として十分な努力をされていることに疑いの余地はないと思うのです。



唐突に自分の子どもと障害の程度が似ている存在が現れ、その子は少しだけ自分の子どもよりもできることが多い。

そんな子を目にして自信を無くし、努力を重ねてきた自分の育児を否定してしまう。

そのような心理が働いたのではないかと考えました。



世の中に全く同じ人間がいないように、全く同じ親子も存在しません。

それぞれがオリジナルなので、人と比べる必要もないですし、本来なら比べることもできないはずです。

それでも、教育や子どもの能力を他者と比べるとき、そこで気づくことはネガティブなことだけです。

(「ウチの子の方ができている」という印象も、価値がないことをあたかもあるように誤って認識してしまうという意味ではネガティブです)



ネガティブなことが頭の中を占める割合が増えると、「いま」「これから」のことに集中することが難しくなります。

だから、自分たちの育児や生活を守るために「人とは比べない」という強い意志が必要になるのではないでしょうか。




集団の中で、自分の子どもを他の子どもと無意識のうちに比較してしまっていることに気づいたとき。

そんな時は
「人と比べることで、自分たちに良いことがあるのだろうか?」
「大切なのは、これからに集中することなのではないか」

そんなことを思い浮かべてみるのが良いのではないかと思います。



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