財政再建の是非(3)

 朝日新聞と東大谷口研究室が共同で、財政赤字についての自民党総裁選の候補者にアンケート調査を行っている。

(A)国債は安定的に消化されており、財政赤字を心配する必要はない
(B)財政赤字は危機的水準であるので、国債発行は抑制すべきだ

 聴き方がいやらしい。財政再建の要否もしくは是非を端的に尋ねればいいものを、国債の発行に絡めて聞いているので、答え方が難しくなる。
 日銀が国債を大量に引き受けている状況ならば、国債は安定的に消化されていると評価できるだろう。しかし、日銀が国債の引き受け計画を見直した今、国債が安定的に消化できるのか、市場の動向を見極めねばならず見通しは難しくなる。
 つまりこの質問は財政政策と同時に金融政策の是非も含んだ聞き方になっているのだ。

 財政赤字が危機的水準にあるかどうか、その判断は実は難しい。
 財務省は政府債務残高の経年推移、もしくは対GDP政府債務残高比率を各国で比較し残高も比率もダントツ1位である日本の財政危機を主張する。政府債務残高は1000兆円を超え、対GDP比率は250%だから、これだけみればわかりやすく財政危機なのではないかと思うだろう。


 しかし、少し考えてみればわかることだが、多額の債務を負っていても返済可能であれば財政危機とは言えない。債務だけでなく、政府の資産も検討の俎上に載せて議論するのがフェアな議論というものだろう。また、政府が有している債権と債務の利払い費についても議論するのが本当に持続可能な財政についての議論というものだろう。

 いたずらに負債の側面だけをとりあげて議論するのは財政再建、緊縮財政ありきのアンフェアな議論であって、本気で財政を論じているとは到底思えない。
 
 

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