企業にとって大事なこと~売上か利益か

1 売上とは


 売上=単価×顧客数に因数分解されるから、売上を上げようと思うと、単価を上げるか、顧客数を伸ばすかのいずれしかない。

 デフレと言われる経済状況では、単価を上げると顧客数が減少してしまうことが明らかだったので、企業は単価を現状維持どころか価格競争をしてまで単価を引き下げ、顧客数を獲得して売上を維持してきた。
 単価の現状維持や価格競争による単価の引き下げは、従業員の賃金抑制や非正規労働者の増加すなわち総人件費の抑制という形でしわ寄せされた。

 しかし、コロナショックとともに続くウクライナ戦争、イスラエル・ガザ紛争によって、資源価格、原材料費の高騰によりもはや人件費の抑制だけでは利益が出せない状況まで追い込まれ、ついに単価の上昇つまり値上げにつながることになる。

2 利益を出すためには

   利益=売上-経費=単価×顧客数-経費

 人手不足による賃金の高騰、最低賃金の引上げにより一人当たり人件費も高騰し始めた。経費が上昇している以上、利益を確保するためには売上を伸ばさねばならない。


 しかし、需要が増大することによる需給の均衡から価格が上昇したわけではなく、コスト上昇により単価を引き上げたにすぎないから、顧客は生活防衛のために消費を控え、当然単価の上昇とともに顧客数は減少することになる。これでは、売上高を上昇させることはできない。

 ただし、企業は単価を上げたから顧客数が減少するという状況を手をこまねいて傍観しているわけではなく、営業活動やマーケティング活動、イノベーションによる品質やサービスの向上をもって顧客数の減少を食い止めようとする。しかし景気が回復していないのであれば、それにも限界がある。


 この点について、資源高騰、原材料費高騰、人件費高騰を供給量の制限と捉えて、供給量の低下に対して需要は維持されているから価格が高騰するのだと捉える考え方もありうる。しかし、これこそがコストプッシュインフレそのものの構造であり、この状況ではコストを価格に転嫁しただけなので、デマンドプルインフレと異なりコストが高騰しているため、企業は売上額が上がっても利益を出すことはできない。よって企業は利益を出そうと思えば、需要がなくても価格に転嫁せざるをえない。


 そうすると消費者は購買力にも限界があるから消費の回数や量を限定しようとするため、顧客数は減少することになる。
 この消費者の購買力を拡大させるために、政府は経済界に賃上げを要請したり、所得税減税を行ったりしているわけだ。
 消費が回復すれば景気も回復するだろうという意図のもとにやっているわけだが、消費が回復する兆しは見られない。

3 まとめ

 売上の確保は目標を立てやすく、活動がしやすい。とにかく顧客を増やす、単価を上げるに注意を向ければよい。
 利益の確保は売上を立てつつ、さらに経費、人件費や広告費、原価率、設備投資など目を配らなければならない項目が多いから、難しい。あまりに節約すると評判や売上に響くからバランスが必要だ。その匙加減が大事。

 そこに消費税とか社会保険料とか、最低賃金引上げとか円安とか、ウクライナ戦争とか財政緊縮で景気の悪化とか、個人の経営努力ではいかんともしがたい要素が絡んでくると腹ただしさが倍増する。

 

 

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