兵庫県知事の「自分は正しい症候群」について

1 「自分は正しい症候群」(または「正しさの幻想」)とは、自分の意見や信念が常に正しいと感じ、他者の意見を認めることができない心理的傾向を指す。これは、特に議論や意見交換の場で目立つ現象で、個人が自分の考えに固執し、他者の考え方を柔軟に受け入れられない状態を表す。

 兵庫県知事のふるまいを見て違和感をもつのは、百条委員会において、公益通報者保護法の運用に誤りがあったとする専門家の指摘が相次いでいるにもかかわらず、当初の通報者探しは誤っていないと主張する頑な態度だ。

 行政活動において専門家の指摘を受けながら、それでも行政活動の誤りを認めない態度に終始するならば、これはもはや知事個人だけでなく兵庫県政への不信感として県民から疑義をもたれることになりかねないだろう。

 誤りを指摘されて修正することはそんなに難しいことだろうか。一般的に考えて、早い段階で誤りを認め修正していればこんな大事にまでならなかったのではないかと思う。

 しかし、自分は正しい、自分の行動にはあやまりはないと突っぱねることで事態はさらに抜き差しならないところまですすんでしまった。もはや議会の解散か知事の辞職かの二択に絞られた。

 戦前の陸軍や戦後の官僚制の事案を持ち出すまでもなく、自分は正しい症候群の蔓延が事態の深刻化を招くことはよくあった。なぜこのような心理に陥るのだろうか。

2 このような「自分は正しい症候群」に陥りやすい特徴として、
①異なる意見や視点を持つ人に対して、過度に攻撃的または否定的な態度を示す。
②自分に対する批判や指摘を感情的に受け止め、改善のために受け入れない。
③自分の経験や知識が最も価値があり、他者の意見を軽視することが多い。


 その原因については次のように指摘されている。
認知的不協和
 自分の信念や価値観が揺さぶられることを避けようとする心理的なメカニズム。
 
 自分の実施してきた政策が正しいと思えば思うほど、日頃の行動に対する批判や非難は蔭口や誹謗中傷と捉えてしまうのではないか。

自己防衛
 自分の価値やアイデンティティを守るために、自分の意見が誤っている可能性を否定する。

 批判されればされるほど、自己の価値やアイデンティティを守るため、頑なに自分は正しいと思うのだろう。

確認バイアス
 自分の意見に合致する情報だけを探し、反対意見や反証となる情報を無意識に無視する傾向。

 反対意見や反証となる情報については過小評価をし、内部告発の真実相当性に疑義がある部分を過大に評価をしてしまったことが初動の内部告発者探しにつながっているのではないだろうか。

3 対処法として、
①まずはオープンマインドを持つ必要があるだろう。異なる意見に耳を傾け、自分が間違っている可能性を認めることが重要だ。

②自分の信念や意見を客観的に分析し、感情的にならずに根拠を再評価する習慣をつける批判的思考が必要だ。

③自分の行動や思考パターンを振り返り、なぜ自分が特定の意見に固執しているのかを理解すべき自己反省が必要だろう。

4 兵庫県知事の会見やインタビューなどを見ていると、一見これらの対処法はマスターしているようにも見えるのだが、実際のところは表層的にすぎず、根本的には認知的不協和や、自己防衛、確証バイアスに支配されているように見えてならない。
 今となってはもはや手遅れだと思うが、はやく兵庫県政が正常な運営に戻ることを願うしかない。

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