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【詩】 赤いゴム風船


最初はしわしわ、ただのゴム。

吹き口を咥えて。
たくさん、たくさん空気を入れて。
赤い風船はどんどん大きくなる。

頑張りすぎると、頬っぺたが痛くなる。
それでも、わたしは風船が好きだった。
頑張った分だけ、風船はどんどん大きくなってくれるから。

もっと、もっと大きく。
誰よりも大きな風船を作りたくて。
わたしは息を吹き続けた。
どれだけ苦しくても、風船はわたしの努力の分だけ大きくなってくれるから。

だけど、だんだん空気を入れづらくなる。
だから、わたしは思いっきり息を吹きかけた。


ぱぁん!


目の前で、風船が弾けた。
音を立てて弾けた。
風船の中にあったはずのわたしの空気は、あっという間に消えてしまった。

頑張って、ひとつの風船を大きくしたかった。
苦しくても、いつか努力は報われると思ってた。
風船が弾けて無くなって、わたしの胸はきゅっと締め付けられた。

だけど。
顔を上げると、とても呼吸がしやすかった。
周りを見ると、色んな色の風船が散らばっていることに気がついた。

どれを膨らませても構わない。
どんな大きさでも構わない。

あの赤い風船は、わたしに教えてくれた。

頑張ることは悪くない。
けど、頑張り過ぎれば弾けてしまう。

物によって、入る空気の量は違うのだから。
人によって、呼吸の深さは違うのだから。

自分がやりやすい呼吸をしよう。

それでも、同じ風船を膨らませたかったら。

ときどき、息を抜いてやろう。

息を抜くのは悪くない。

息を抜くから、呼吸ができるのだから。



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見出し画像には、『うたげ』様のイラストをお借りしました!

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