【一挙公開】freeeから学ぶ成長する組織のマネジメントと目標管理OKR
こんにちは。freeeの西村です。
freeeの人・組織・カルチャーに関するあれこれを担当しています。
今回は先日登壇させていただいた株式会社タバネル様主宰のイベント「freeeから学ぶ成長する組織のマネジメントと目標管理OKR」でお話しした内容をご紹介したいと思います!
会社概要
freee株式会社は2012年に設立で、このnoteを執筆時点で、従業員数約600人の組織です。クラウド(オンラインサービス)で会計、人事などバックオフィス業務全般を支えるシステムを提供しています。
我々のミッションは「スモールビジネスを、世界の主役に。」です。
ERPと呼ばれる基幹業務を支えるシステム群は、過去は限られた大企業だけが手に入れることができるものでしたが、その裾野を広げ、少人数でお店を展開されているような会社様でも、活用していただけるようにサービスを作り上げてきました。
また、ミッションを追求する上で共通して持っていたい価値観・大事な考え方として「価値基準」を掲げています。
特に中央の「freeeはマジ価値を届けきる集団である」という考え方を最も大事にしています。これはお客様にとって、本質的に(マジに)自信を持って価値があると言える仕事をしていく集団でありたい、ということです。
ちなみに全社のエンゲージメントサーベイでもっとも高いスコアが出ている設問が、これらの「ミッション共感」「カルチャー共感」に関するもので、ともに90%を超えています。
また我々は、ありたい組織の姿を「ムーブメント型チーム」として、社会運動のような組織を目指しています。
スライドのように、「自律性」がありながらもバラバラではなく「一体感」があり、ミッションから「一貫性」がある組織を実現できれば、ムーブメントとなり、イノベーションが起こりやすい組織となるのではないか、という仮説を持って日々取り組んでいます。
そして、これらの要素を持った組織をつくっていく上で、OKRはとてもマッチしていたと考えています。
OKR活用に到るまでの経緯
freeeでは、OKRは創業初期から採用しています。OKRを徹底活用していたGoogle社出身者が創業時からメンバーにいたこともありますが、「何故やるのか」にこだわる文化や、方向性を揃えたいという考えに、OKRがフィットしていたからです。
そして4年目で50名から100名程度の規模となった時点で、人事制度を導入しました。人数が増えてくるとみんながバラバラの方向を向きそうになります。そこで、freeerとして目指すべき人物像、どういった人が社内に多くいる状態が望ましいかという定義をつくり、その人物像に向けて成長をドライブするための人事制度を導入しました。
また同時に、人事制度ができたことによってOKRに挑戦的に取り組むことにブレーキがかからないように、人事制度とOKRの紐付けは最小限に留めています。
さらに上場の準備を始めた頃から、より徹底的にOKRを徹底的に活用しようと、ガイドラインなどを作って取り組みました。この段階で挑戦重視のOKRと達成重視のOKRを明示的に使い分けるようにもなりました。また、組織が大きくなると部門同士の連携が難しくなるため、連携にもOKRを活用し始めました。
現在のOKR運用は、まず中長期を見据えた3年程度のOKRを設定し、本年度のOKR、本部のOKRとブレイクダウンするものとなっています。加えて、プロダクトやプロジェクトでのOKRを設定することもあります。サイクルは年間と四半期があり、年間を達成するために四半期で回しています。
人事評価制度としてOKRを使っていないが故にできることですが、OKRを必須で作るのは本部までです。それ以降は部門に任せていて、個人OKRも設定するところもあれば、しないところもあります。
OKRの導入効果について使用前後での検証はできていませんが、本格的に使い始めた6年目以降の社内サーベイでは、関連項目が高まっている結果となっています。
ミッション実現を支える人事評価の仕組み
freeeでは、 基幹人事制度を「freee Style人事制度」と呼び、成長支援に重きを置いた人事制度を用いています。そして特に次の成長に向けてPDCAを回すのと共に、人事評価を行うプロセスを「インパクトレビュー 」と呼んでいます。
ここでは、人事評価について詳しくお話します。
成長を重視した単一の職能等級を「インパクト・マイルストーン」と呼んでいて、13段階あります。名称にもこだわりがあり、オープン・フラットな組織を意識して、「マイルストーン」という表現にしています。イラストにありますように、上下ではなく横に進んでいくイメージです。
人物像は、成果創出要素と人・組織に関する要素の、2つで表現しています。OKRとは切り離された独立した制度ですが、全く切り離しているのではなく、人物像定義の中でOKRを活用する能力が求められていると表現しています。
そして実際の評価については、3か月サイクルの「インパクトレビュー」で行います。まず次のマイルストーンに向けた成長目標(≠OKR)を設定して活動を開始します。そして3か月後のレビューでは、まずは自身で振り返るセルフレビューを行い時期によっては周囲のメンバーからフィードバックもあり、その情報も踏まえてマネージャーがフィードバック、評価の情報を作ります。その上でマネージャー同士でキャリブレーションで調整し決定します。そして、マネージャーから本人にフィードバックをします。マネージャーからのフィードバックはかなり丁寧にメッセージを作成して実施します。
OKRと評価制度の関係を整理しますと、OKRは人事評価のためのツールではないわけですが、インパクトレビューではOKRの情報を参照しています。
成果の中の一部の情報としてOKRの結果出てきた絶対値のインパクトを加味するようにしています。セルフレビュー時には自分でOKRを使ってどのような成果が出ていたのかを表現し、マネージャーも同じくOKRの成果も参照しながらレビューを作成します。ただ成果はOKRだけではなく、他の内容も含みます。また、達成度重視のKRについては達成度をもとに評価しますし、新規事業など挑戦重視のKRについては達成度はあまり関係なく絶対値をもとに振り返ります。
そして、これらを全て踏まえ、総合的に評価します。総合的な評価は曖昧にもなりますが、その曖昧さを許容し、一律で達成度重視にならないようにしています。このようなやり方をしていると非常にマネジメントに負担がかかりますが、その分のリターンがある投資と考えています。
これからのマネジメント
最後に、これからのマネジメントのあるべき姿についての私個人の考えを共有したいと思います(freeeの意見ではなく、あくまで私見です)。世界中で社会課題が山積する不確実な世の中であることを前提にすると、あるべきマネジメントの姿にはポイントが3つあると考えています。
まず、「ミッション(パーパス)ドリブン」です。何のために仕事をしているのか?と、社会の課題を解決するための活動なのか?を重視する個人や投資家が昨今多くなっています。そのような方々に応援してもらい、仲間になってもらうためにはなんのために仕事をしているのか、ということを明確にして経営することが重要です。
つぎに、「探索型の組織づくりとマネジメント」です。不確実な世の中では分かっていることを徹底するだけではなく、とにかく試しては修正していくような動きも必要です。そのためには、自律的な組織であることが重要だと考えます。
3点目は「属性だけでない真の多様性を活かす」です。多様性が注目を集めていますが、同じ属性の人の間でも、価値観は本当に多様になりました。そんな色々な価値観の多様な人がいる組織を、一定の方向に束ねていくことがイノベーションのためには大切だと考えています。
これらの要素の実現は本当に大変ですが、そこに向けた投資が大事だと思っています。OKRも、これらの要素を組織で実現するために寄与しているのではないかと思います。freeeにおいては、OKRは組織に上手くマッチしている良いツールですし、今後も活用していきたいですね!