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学校でベテラン先生に教育アプリを使ってもらった経験 〜DX 現場の動かし方〜
この記事は学校にソフトウェアを導入したい方・DXを推進する方の参考になればと思います。
DX!DX!とバズワード化していますが実際は大変。すべての現場で行動変容させるわけですから。
中でも大変なのがベテランの方々。これまで仕事でITリテラシーを求められなかった&キャリアが終盤に差し掛かっているのでIT・DXを避けて通っても痛手が少ない。
「DX?そんなこと俺が引退してから勝手にやってくれ」と。さすがに直言しませんが本音これだとおもいます。
じゃあどうしたら動いてもらえるのか?
ここで以前学校に教育アプリを導入した経験から得た示唆を共有します。50代以上のベテラン先生にアプリを使っていただくためにやったことが参考になれば幸いです。
経緯と取り組み
教育系ソフトを公立の小学校に導入頂くため教育委員会に提案をしていました。そのうち一つの自治体と話が進み始め実証研究を頂きました。
カウンターパートとなる教育委員会の担当者さんが調整してくださり研究校が1校決まりました。一つの教科を重点対策することに。
校長先生・教頭先生にご挨拶の後、ICT主任の先生と教科主任の先生と顔合わせ。ソフトのインストールと初期導入説明会を行いました。
実証研究期間に入ってからは定期的なサポートとインシデント対応。
ベースは月に1回の打合せ。学習ログからここまでの効果と課題を洗い出し、次の対策とそのスケジュールを決めていきます。
それ以外に授業見学。これも月に1~2回の頻度で訪問しました。朝学習の時間が多かったので午前8時には学校に到着。はじめて利用する先生のサポートと慣れたクラスの見学が半々でした。
あとはソフトや機材に何か想定外が起こると都度対応。電話で済むものから訪問まで。
課題と対策
こんな取り組みを数ヶ月続けると2つのことが分かってきました。
「利用すると好評」ということと「利用するクラスとそうでないクラスに差がある」こと。"クラス"は"先生"に置き換えられます。どうにか利用頻度を上げたい。
対策として教頭先生・主任の先生と連携をとりながら利用する時間をトップダウンで決めていきます。そして少しずつ利用網羅度が上がっていきました。
そして最後に残るのがベテラン先生。「使おう」と思って頂く部分で苦戦しました。
ベテラン先生の前提
ベテランの先生は経験が豊富です。指導を30年以上続けられています。毎年30人の生徒を預かったとして、のべ1,000人の児童生徒と1年間ガチンコで指導を続けたことになります。
どんな子を預かっても既視感があり予測ができる。必要な対応と不要な対応が選り分けられる。既にご自身の中で業務効率化出来ています。
後輩の先生が多いので雑用から開放されているケースも多いです。校内・地域・自治体の仕事など多くは若手の先生に任せられます。
結果「いつもの業務」を「いつものやり方」でやれば問題なく仕事が回せるのです。だから"変化"は"負担"です。
そのため授業にITを活用するという"負担"は避けて通られています。一歩踏み出すにはそれなりの理由がいるのです。
対策の結果
様々な声掛けや取り組みを積み重ね、年度が終わる頃には各クラスそれなりの利用回数をログに計測し、効果も実感出来るようになりました。
学力調査の順位もアップ。成果につなげることができ自治体全体へのソフト導入も内定しました。
そして春休みに行った振り返り。ここでベテラン先生へのアプローチが整理できました。
ベテラン先生へのDXアプローチ
どのクラスも一定回数使ってくれたということはベテラン先生のクラスも使ってくれたということです。
利用端末を取り出しやすくしたり、初心者の先生むけに紙芝居型マニュアルを作ったり(これは他のお客さんにも展開できた)、こちらの授業見学を先に組んでしまったり。
色々やりましたが、振り返った結果先生のタイプによって2つのアプローチが効果的とわかりました。
1.子どもから頼まれる
真面目な先生はこれで考えを変えられました。担任する児童がきょうだい・他クラスの同級生から楽しかったことを聞き、自分たちもやりたいと先生にお願いするのです。
そのため推進側がやることはシンプル。利用した人たちに効果を実感してもらうことです。
このアプローチは女性のベテラン先生に効果がありました。
2.飲みに行ってお願いする
仕事うんぬんではなく人間関係です。それも"業者"がお願いするのではなく主任の先生からのお願いでした。
仕事のあとサシで飲みに行き直接お願いする。そこで色々話す中でお願いする。
コロナ渦になってから若干取りづらいアプローチになりましたが…。後輩が一生懸命頑張っていて、直接お願いされるのに拒否するのは難しいですよね。
人情の中でも男気に触れるのでしょうか。このアプローチは男性のベテラン先生に効果がありました。
まとめ DX 現場の動かし方
一連の取り組みにはDXにおける現場の動かし方に通じるものがあると思います。デジタル化に抵抗する人にどう協力してもらうか?という話なので。
ベテラン先生へのアプローチは重要ですが、そこにたどり着く前にも大切なポイントがあります。
以下順番にそれを整理していきます。
1.プロダクト・ツールに効果がある
効果のないプロダクト・ツールを使っても成功することはありません。大前提です。
2.トップが味方
今回でいうと校長先生と教頭先生。企業ならCEO・社長と主管事業の責任者。これらの方が理解と共感を頂いていないと推進が難しいです。
この立場の方々には稼働をとって頂く必要があるわけではないと思います。
3.運用側主担当の熱量
提案する側もそうですが、それよりも運用する側の主担当者。
それなりの立ち位置の方がアサインされると思います。スキル面で課題になることは少ないのではないでしょうか。
それよりも主担当者ご本人がやる気になっているかが重要です。
4.一生懸命あの手この手
組織も生き物。方法論が確立しているプロジェクトでも個別のケースで効果があったりなかったりします。
大事なのは出来ることをやりつづけること。アウトプットを出し続けること。会話や提案で終わっては何も変わりません。
このプロセスが信頼関係を構築します。
5.数字の共有
何回使われたか。使用状況はどうだったか。効果は見られるか。プロジェクトの継続・拡大に客観的なデータが必要です。
さいごに
プロジェクトが上手くいくと「絆」が生まれます。振り返るとポジティブな感情が蘇ったり、当時のメンバーとまた会いたくなったり。
そんな思い出にあふれたキャリアを創りたいものですね。