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『MIZZ先生がイラストたっぷりで教える〈便秘〉からの脱出』の著者 MIZZ先生こと”みずかみよしのり”が 渋谷道玄坂百軒店伝説のロック喫茶『ブラックホーク』を語り尽くします

Episode11 ミュージシャンたちのまったりな溜まり場『ブラックホーク』

 渋谷の街は,1973年に公園通り(当時は区役所通り)に渋谷PARCOが開業するまで,オジサンたちが家路につく前のひととき羽を休める,どちらかと言えばひっそり地味な街だったんです。
 宮下公園手前の「のんべい横丁」を筆頭に,東急本店横丁へ入る「栄楽街」,東急プラザと井の頭線ガードに挟まれた「渋谷中央街」,大規模再開発が進行中の「桜丘町」周辺,そして我が『ブラックホーク』が在す「百軒店」など,個性あふれる飲み屋街が点在していました。
 道玄坂裏界隈は,1970年の地番整理によって円山町(の一部)から道玄坂二丁目へと表記が変更されるのですが,地元の古老のお話によると,道玄坂裏の地形がポッコリしたお山状になっていたことから「円山」と呼ばれたんだそうです。
 そんな円山(町)=道玄坂百軒店の有名ラーメン店『喜楽』の前の路地に踏み入り,通称道玄坂小路へ通じる変則的な石組み造作の階段を降りて行くと,台湾料理の名店『麗郷』の脇へ出ます。
 この辺りは,かつて“絶対に一人で立ち入ってはいけない”それはそれは怖い場所と言われていましたが,1975年にセレクトショップの名店『ミウラ&サンズ』が階段の中程にオープンし,普段パルコ公園通りを闊歩している風情の人たちがこちらにも現れ出るようになってくると,何とも怪しげで危なそうだった一角も一気に明るく変容していきます。
 あの伝説的ロックバンド「はちみつぱい」の本多信介さんと鈴木慶一さんが,『ブラックホーク』を抜け出して『喜楽』のもやしそばとかタンメンをすすった後,「イイね! NICEフレーズ!」と掛け合いながら曲作りのアイディアを練り上げている,なんて光景を思わず空想してしまうのも,道玄坂百軒店ならではの魅惑的な時空間ゆえのことなのでしょう。
 当時『ブラックホーク』には,決まってギターを背負ったギター小僧風や(やがて名を成す方も含む)シンガーソングライターを自称する面々が,溜まり場宜しく3,4人は常駐していました。
 と言って,決して皆が寄り集まるわけではなく,ボブ・ディランやエリック・クラプトン,ジミー・ペイジといった憧れのスーパースターに思いを馳せながら,各々己だけの音の世界に没入していました。
 手前味噌バリバリのチョイト格好つけ過ぎの締めになりますけど,彼らもきっと,道玄坂百軒店の地を代表する音楽文化の発信地でもあった“ロック喫茶”『ブラックホーク』の居心地に引き寄せられていたのかもしれませんね。

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