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新しいプロジェクトや企画の実現に向けた大事なプロセスと準備とは?

プロジェクトには、発案者の個人的な目標が見え隠れしていることが少なくない。
プロジェクトを通して自分がどんな能力を磨きたいか、どう自分を変えたいか、何を体験したいか、成果をあげることで自分自身がどういうアドバンテージを獲得したいか。

こういう自己変革やキャリア創造を意識した目標もあれば、昔からの夢を実現させたいとか、自分の体験をもとに「どうしても社会のこういう部分を変えたい」という思いを実現させるためという場合もある。
もっと泥臭く、プロジェクトをやるのは一旗揚げてどうしても誰かを見返してやるのが目的だとか、借金を返すためにはこれを成功させなくてはいけないからやるとか、有名になってテレビに出るのが本当の目標だという場合もある。
こうした個人的な思いが背景にあるプロジェクトは、実は非常に多い。そして、そういう強い動機があるから成功への執着がうまれるということもいえる。

プロジェクトに参加するメンバーやサポーターたちにとっては、示されたプロジェクトの目標が共感できるものなら、発案者に個人的な別の目標があっても問題ではない。
むしろ、そういう背景もあってプロジェクトが発案されたのだということがわかる方が「なるほど」と納得できるし、それがわかりやすさにつながるという点でプラスに働く場合も多い。
メンバーたちやサポートしてくれる人々の側にも、「個人的にも付加的なメリットを得たいものだ」という想いがある。
もちろん、個人的レベルの目標だけが前面に強くでてしまい、参加者を軽視するなら共感者は集まらない。集まったとしても、多くの人はどこかで失望し去っていくことになる。

プロジェクトは、自分が「こういう自分になりたいから」というだけでは、やはり成立しない。
多くの人を巻き込むプロジェクトであればあるほど、目標には「公共性」が必要になる。
「社会や組織、あるいは集団にたいしてどういう貢献ができるか」という公共の利益への志向がないと、多くの参加者を集めるプロジェクトのビジョンや目標はつくれない。
周囲と響きあえるプロジェクトにするには、「もし自分が相手の立場なら、なんとか現状を変えたいと思うだろう」といった感情移入も必要だ。

しかし、プロジェクトを発案する際に、自分の個人的な思いを抑える必要はまったくない。
むしろ、そこからスタートし、その思いに共感してくれる人を探して巻き込んでいった方が成功する。
それだからこそ、気をつけなくてはいけないことがある。
すべてのプロジェクトは、いくら公共性のあるビジョンと目標を掲げていたとしても、もともと個性的であり、革新的である。プロジェクトにはかならず現状を否定する要素があり、ぶつかる相手が登場する。
現状を変えたくない人はいつも存在する。また、能力のある目立つ部下に対して警戒心を持つ上司は必ずいる。
したがって、それを乗り越えるリーダーシップが必要になる。
鍵となるのはプレゼンテーションである

プレゼンテーションが仕事をつくりだす

自分で仕事をつくりだせる人のエンプロイアビリティはつねに高い。
そういう人は雇い主やクライアントに新しい価値を提供できるし、自分で自分を雇える可能性も持っているからだ。
自分で仕事をつくりだすためには企画がなくてはいけない。しかしそれ以上に、提案がなくてはいけない。
プレゼンテーションするからこそ、新しい仕事を仕事として認めてくれるクライアントやボスが登場するのである。
フィールドワークというのは、プレゼンテーションをくり返し、自分を認めてくれる相手との双方向のコミュニケーションをとりながら、自ら新しい道を自分の前に切り開いていくことでもある。
プレゼンテーションが上手いか下手かによって自分のやりたいことが実現できるかどうかが決まってしまうことは、現実には非常に多い。
新しい仕事、すなわちプロジェクトを想像するプレゼンテーションに求められる4つの条件がある。これらはいずれも、相手を「気持ちよく、しかも責任を持って支援しよう」という気にさせる要素でもある。

1.相手とのWIN-WINの関係が生まれるプレゼン

自分のやろうとしていることが、相手にとっても何らかのメリットになるということを示せれば相手は前向きになる。こちらからしっかり示す必要は必ずしもない。相手がそう感じるような情報を盛り込んでおけばいい。
WIN-WINの関係といっても「ウチが儲かれば、必然的にオタクも儲かります」というような究極的なものである必要はない。
「この仕事をこいつにやらせれば、自分が欲しい情報が集まることにもなる」とか、「今回の彼の提案は、日頃、自分が営業部長会議で競合に打ち勝つ戦略を一人ひとりが考える集団を作るといってきたことの証明になる」とか、「自分の部下が隣の事業部のキーマンとプロジェクトを成功させれば、やらせた上司の自分にとっても悪くない」とか、あるいは単純に「この話には俺の趣味にあう部分があるな」と思ってもらうプレゼンが重要だということである。
プレゼンテーションは、自分の考えをまとめて資料を用意しておくのはいいが、一方的に話すだけでは絶対にだめである。
WIN-WINの関係をつくるには、自分の提案にたいする相手の反応を受けとめながら会話をし、その場でベストの着地点をお互いに見い出していこうとする姿勢が、どうしても必要だ。

2.動機に社会性があるプレゼン

何のためにその仕事をするのかという目的のなかに、自分ひとりの利益を超越したものが明らかにふくまれているとき、プレゼンテーションされた相手は、その意志をむげに否定することはできない。さらにその提案が、ビジネスに何らかの利点をもたらすものであれば、ますます否定できなくなる。
ひとりの人間として、その社会貢献意識に共感してしまうこともある。
「生産現場で働く人たちを元気にして、同時に事故も減らしたいんです」とか、「このガイドブックをつくってユーザーに配付すれば、正しい商品選びができるようになるはずですし、劣悪品が市場から淘汰されて業界の信頼性が高まることに役割を果たせると思います」と言われれば、理由もなくそれを潰してしまっては忍びないと、誰でも考えるだろう。
新しいプロジェクトを提案する時、こういう論理構成のプレゼンはうまくいく。
ただし、なぜそれを自分がやるのか、自分がどこまでできるのかに納得性が示せないと、相手は信じることができない。コストや方法論など、ビジネスとしての整合性も必要だ。
「社会性」のレベルが高ければ高いほど、どこまで自分がその目的に思い入れをもってプロジェクトのイメージをシミュレーションしてきたか、自分の能力を磨いてきたかという点が問われることになる。

3.仕事の影響力をイメージできるプレゼン

どんな人でも、おもしろい事件が起きることを欲している。
同じ仕事をするなら、わくわくどきどきしながらやりたいと思う人は多い。
そういう心理に応えるプレゼンテーションはうまくいく。
結果として、ひとりの人間が新しい仕事を創造し、周囲を活性化させ、ビジネス上も何らかの付加価値を提供してくれるなら文句のつけようがないのである。
新しい仕事がうまれることによって、どんな物語が展開していくのかがイメージできると、誰でも、その物語の先が見たくなる。
未来へのストーリーを提供できるプレゼンは、いいプレゼンである。
これまでにないことをやろうとすると、抵抗勢力があらわれることは多い。
プレゼン相手が抵抗勢力ということもありうる。その場合は、いかにWIN-WINの関係をつくれるか、社会性に訴えられるか、そして、それを否定してしまったときにマイナスの影響がおきるリスクを感じてもらうかがポイントになる。
それでもダメな場合は、外堀をうめていく。つまり、プレゼン相手に対して影響力のある人たち、ときにはユーザーの声や世論に訴えていくことだ。
もともと周囲に対して強い影響力をもった人が「これまで真剣に考えてきたうえでの提案です」といって筋のとおったプレゼンをすれば、提案は通りやすい。
それは、提案者の背後に提案を指示するだろう多くの人々の意思を感じるからである。
新しい仕事が周囲にもたらすプラスの影響をイメージできるほど、意思決定者は、その提案を否定しにくくなる。

4.プレゼンターの人生がわかるプレゼン

新しい仕事をやりたいという提案をうけたとき、何が気になるだろうか。
提案内容の善し悪しはもちろんだ。だが、「なぜ、この人はこういうことをやろうというのだろうか」という動機を知りたいと思うだろう。
新しい仕事をやりたいという理由が腑に落ちたとき、提案を受ける相手は、なるほどそういうことかと安心できるのである。そのうえで、その人のビジョンやスタンスが気に入れば応援したくなる。背景に、その人が背負っている人生が見えれば、提案を軽く扱うことははばかられる。
「自分が人生の中でやりたいことは何で、自分には何ができ、これまで何をやってきたのか」がわかり、「だからこういう仕事をしたいのです」という論理構成はプレゼンテーションを納得感の高いものにする。
提案が周囲に価値をもたらすものであるかぎり、提案動機の個人的部分も、プランに対する提案者のやる気の証明であって、実現へのエネルギーになると考えることも多い。
提案者の明確なキャリア仮説がみえてくるプレゼンテーションは、提案の受け手を、「サポートしてやらなくてはなるまい」という気にさせるのである。


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