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プレゼンの冒頭で「背景」を語ってはダメな理由

プレゼンの機会は、だれにでもありますよね。

変革を起こしたい時、新しいビジネスを提案したい時、何かをするために予算をとってもらいたい時、人は、プレゼンします。

目の前の相手にわかっていただき、意思決定してもらうため。
共感者となってもらい、協力してもらうため。

ところで、プレゼン時間が10分だった場合、冒頭に何を話しますか?

たとえば具体的に、B to B の法人相手のシステム開発をする会社の事業部門で、競合他社との価格競争が激しくなり、売上、利益が減少し、シェアも下がっていて、さらに実力ある若手社員の退職者が増えているという状況を脱却するために、営業アプローチの転換と、他社がやっていない新規ビジネス立ち上げを提案するプレゼンをあなたがする、としましょう。

10分間のプレゼンで、
「まず、背景からお話ししますと・・」とはじめるのが当たり前と思っていませんか?

じっさい、私は、多くの企業で、そういうプレゼン場面に立ち会った際に、
冒頭でこの言葉が繰り返されるのを聞いてきました。

どこの企業でも、それが、プレゼンの常識で、踏み外せない轍なのだと
決められているかのようです。

10分以内のプレゼンで、冒頭に、背景を話すのは、じつは、大変よろしくないと言わざるを得ません。

最初にこのプレゼンをするに至った「背景」を話すということは、聞いてくれる相手に、重要な基本情報を整理して伝え、認識を共有してもらうことが重要と考えてのことだと思います。
もちろん、これは、悪い考え方ではありません。

しかし、2つの点でリスクがあります。

1つ目は、「背景」を話すと暗くなる ということです。

「背景」には、話せば話すほど、自社にとっての辛い現状が苦しいストーリーとともに、相手に伝わり、相手がため息が出るような気持ちになってしまいやすいということがあります。
相手が担当役員なら、暗い話は聞きたくないと、内心思っていても事実なだけに否定できず、その責任は自分にも当然あるるわけなのでさらに、重い気持ちになってしまいます。

あるいは、「背景」の話は、ある程度共有されている場合も少なくなく、また、その話か、知ってるよ、と思っていいる人もいます。
その場合は、聴く人にとって面白くない話になりやすいです。

冒頭に暗いムード、面白くない雰囲気が作られるというのは、プレゼンの流れとして、良いはずがありません。

2つ目は、「背景」を話すと長くなる ということです。

「まず、背景からお話ししますと」と言った以上、「背景」としてしっかり整理されていないと、ロジカルに聞こえません。
それで、提案内容に直結しない情報も、背景としての完成度を保つため、どうしても最低限いれざるを得なくなります。

10分のプレゼンで、重要テーマを扱う場合に「背景」をしっかり話すとなると4~5分使わなくてはいけなくなる場合が多いと思います。

時間が30分あればいいのですが、10分のプレゼンで、半分近く「背景」に時間を取られるということが起きるというのは、大変もったいない。
肝心なのは、これから何をやるか、という提案なのですから。

「背景」には、こういうリスクがあるのです。
しかし、これがわかっている方は、正直言って、少ないと私は思います。
どこの企業に行っても、プレゼンで、同じ光景が繰り返されていますから。

では、どうしたら良いのか、ですが、

冒頭では、最低30秒程度は、「ビジョン」を話し、ビジョンとともに「背景」ではなく、「WHY」(なぜ、そのビジョンなのか)を話す。

これで、リスクがなくなります。

「背景」と「WHY」は違います。

「背景」の中には「WHY」の一部は含まれています。
それは、プレゼンターにとって、outside in なもの。
たとえば、お客さま企業やエンドユーザーの事情、市場の事情、世の中のトレンド、そして、自社の事情(経営の事情、若手社員の事情など)といったものです。
しかし、「WHY」は、ビジョンに直結する部分だけを言えばロジカルになるのでずっと短い時間ですみます。
そして、ビジョンを話した上で、「なんとかしたい現状」として話せるので、
明るい未来がひらけるというプレゼンなのだな、と思いながら聞けます。
ですから、暗い気持ちにはなりません。

そして、「WHY」には、
なぜ、今ここでプレゼンしている自分がこれをやりたいのか という
Inside out が含まれています。
これを「ビジョン」と合わせて語ることで、情熱を持って何かを成し遂げようとするプレゼンターが、そこにいてプレゼンしていること自体が、ロジカルになるのです。
「ああ、だからこいつが今、こんなプレゼンをしているのだな」と。

ところで、
冒頭で、明るい未来のイメージが語られたものの、本当にできるのか? という疑問が湧く状態が出現するのではないか?
と思われる方がいるかもしれません。

じつはその通りです。
そして、それで、まったく良いのです。
なぜなら、そのあとで、ビジョンが実現したら、どんな良いことが起きるのか(VALUE)を語り、さらに、どのようにすれば実現するというのか? という問いに対して、「これがその方法です」と実現へむけた戦略(STRATEGY)を語るのですから。

そして、さらに、すでに、「ここまでやっています」とか、「お客様のA社が、この提案に乗ってくれて社内プロジェクトをスタートさせてくれています」などと語ることができれば、今までとは違う未来をつくる、という先のはっきりしない提案が、リアルで、ロジカルで、ワクワクするものになる、ということなのです。

ビジョン、WHY、VALUE、STRATEGY

この順番で語ると、プレゼンは自然に謎解きになります。

目指す未来の明るい状況を示し、なぜそうしたいのかを語り、実現した暁には、誰がどうハッピーになり、よのなかに、どんな新しい価値がもたらされるのか・・・

これを聞いているうちに、ワクワクしてくるのですが、いっぽうで、どうやったら本当に実現するのか?
という謎が頭の中に浮かんでくるわけです。
早ければ、冒頭の30秒で魅力的だけど本当にできるのか?
という謎が共有されます。

それを10分なら、10分のプレゼンで解き明かしていくのです。

企業の役員クラス、本部長クラスの方々は、じつは、こうしたプレゼンが
大変お好きです。

なぜなら、そういう方々のミッションは、事業部門を、お客様との関係も、商品・サービスの内容も、自組織のカルチャーも、進化させること。
そして、長期的な利益をもたらし、そこに働く人たちを明るくすること、なのですから。

しかし、この構成にプレゼンを変えましょう、といっても、なかなか、納得してくれない方もいます。
長年、慣れ親しんだやり方を変えろ、ということになると、人間、どうしても、変えられなかったりするわけです。

しかし、半信半疑でやってみると、おどろくほど、偉い方から褒められる、ということが起きます。
それで、みなさん、ガラリと変わってくれます。

そうして、今日も、また一人、素晴らしいビジョナリーなプレゼンをして
新しい何かを生みだしていくリーダーが誕生する、ということになります。

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