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虹の向こうへ
雨が上がった。
陽も差してきた。
空一面を覆っていた雨雲が一気に消え去り、代わりに大きくくっきりした虹が、青い空に残された白い雲を繋ぐように架った。
しかし、僕は雨宿りで駆け込んだこの東屋から出られずにいた。
立ち上がることさえままならなかった。
全ての力を失ってしまった。
それほどの激しい雨だった。
「探しに行こう!あなたの夢を!」
誰だ?
白い服を着た…女性?声は女性っぽいけど。
曇りのない明るい声だ。
雲を割った陽の光を背中から浴びていて、輪郭はくっきりしているのに全体像が暗くぼやけている。
「虹の向こうにはあなたの夢があるよ!」
何を言ってるんだ?
僕の夢?
夢ってなんだ?
「さあ、行こう!」
スッと伸びてきた手に向かって、反射的に手を出した。
細く長い指。
すごく温かい。
優しく照らす陽光の温かさだ。
雨で失ったと思っていた力が、再び全身に漲るのを感じていた。
思い出した。僕の夢。
力を失って座り込む人々に手を差し伸べること。
差し伸べた手で笑顔溢れる場所へ導くこと。
そして、その笑顔溢れる場所をつくること。
気付けば白い服を着た誰かの姿はなかった。
でも、漲る力が失われることはなかった。
どこまででも行ける気がする。
虹の向こうへ。
力を失った人に手を差し伸べるために。