秋雨
「なんだか元気がないね。夏の間は威勢が良かったと聞いたけど、疲れちゃったのかい?」
秋雨がニヤつきながら語りかけてきた。
秋雨はクールだがしつこい。
秋雨が嫌味を言うと空気が冷ややかになる。
「いや、別にそんなつもりはないけど…」
実際、自分は季節によって威勢が良かったりしょげていたりするわけではない。誰と一緒にいるかが問題だ。
秋雨で太陽の勢いが弱まったのだとすれば、それは秋雨のせいなのだ。
秋雨は、もしかしたらそれをわかってあえて意地悪を言っているのかもしれない。
そう思うとますます嫌気がさすが、角を立てて長く居座られても嫌なので黙っていた。
すると、大陸の方から声がした。
「あら、秋雨さん。この間は台風さんと組んでずいぶん賑やかにやってたみたいだけど、台風さんに置いていかれて寂しいのかしら?」
移動性の高気圧が秋雨に牽制するように語りかけたのだ。
「そんなことはないさ。そろそろお暇するがね」
と応えたきり、秋雨は大人しくなってしまった。
移動性の高気圧はそんな秋雨の様子を見て意地悪く微笑むと、こちらに向かって
「一緒に気持ちのいい青空にしましょうね」
と微笑みかけてきた。
移動性の高気圧は気まぐれなのでやや厄介だが、だからこそいろいろと面倒にならないように「ああ」と微笑み返しておいた。
秋雨はすっかり黙ってしまった。
秋はいろいろと面倒だ。