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経営に入り込むデザインリーダーになるための示唆を与えるかもしれないnote
2023年も残りわずか、今年も毎年恒例のGoodpatch Design Advent Calendar2023の最終日を担当しておりますグッドパッチ土屋です。(これで毎年クリスマスが嫌になっております)
今年は僕がこの1年の中でかなりのリソースを割いてお手伝いしたDesign Leader Impact Award(以下DLIA)にちなんだ話を書きたいと思います。
「経営にデザインが足りない」という業界の課題に対してNewsPicksとGoodpatchの共催で日本の創業10年未満のスタートアップで働くCDOやCXOなどのデザインリーダーにスポットを当てて表彰するというアワード形式のイベントを11月22日に開催しました。
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イベントは新しくできた虎ノ門ヒルズ ステーションタワー TOKYO NODEというオシャレなイベント会場で行われ、セッションではマネーフォワードのCEO辻さんとCDOセルジオさんのCEO×CDOセッションや、Figma川延さん、ビジョナル田中さん、サイバーエージェント佐藤さん、アリオーラ金田・アンナさんのセッション、そしてAwardは5名のデザインリーダーの中からグランプリにスマートバンクCXOのtakejunさん、審査員特別賞にラブグラフCCOの村田さんが受賞し、多くの方々が参加し第1回にしては大盛況で幕を閉じました。
✨🏆グランプリ🏆✨
— DESIGN LEADER IMPACT AWARD 2023 (@DLIA2023) November 22, 2023
DESIGN LEADER IMPACT AWARD
グランプリ受賞
株式会社スマートバンク CXO
takejuneさん(@takejune)
おめでとうございます👏!!#DLIA pic.twitter.com/5QH1ObE0RI
アーカイブが2024年1月31日まで見れるので、経営に興味のあるデザイナーはぜひご覧ください。
そんなイベントを通じ、今後経営に入り込むデザイナーになりたい方に向けて示唆になればとブログを書きたいと思います。以下、個人的見解かつ全てのデザイナーが経営を目指す必要はないという前提で書いてます。
このイベントをやる意義
今回、経営に関わるデザインリーダーを表彰するという、業界では賛否両論が出そうなイベントをなぜやるのか。別に表彰とかじゃなくても良いのでは、CDOの仕事は会社によってバラバラという声も上がりましたが、ここはあえてNewsPicksのメディアを使って、デザインリーダーを表彰する形式を選びました。
デザインリーダーのロールモデルが足りない
これに尽きます。「デザイン経営」宣言が発表されてから5年が経ち、この5年でスタートアップを中心にCDOやCXOなどのタイトルを持つ人材は増えましたが、社員が少ない中、デザインができるからCDOになった、といった人材も多く、CDOタイトルを付けていてもそのレベル感はバラバラです。
今回のイベントではデザインリーダーの定義はCxOに限らず、経営ダイレクトレポートとはしましたが、本来的には経営陣の一部として名を連ね、戦略策定に関わり、予算の策定と執行権限を持ち、意思を持って経営におけるデザインへの投資を提案し、企業価値を上げることに貢献できるデザインリーダーをもっと増やしたいと思っています。
中にはマネーフォワードのセルジオさんやビジョナル田中さん、サイバーエージェントのシュガーさんなど、本当の意味で経営に入り込んでいるデザインリーダーも出てきていますが、そういった人たちがどんな視座・視界で物事を見てデザイナーとして経営に入り込んでいるのか、まだまだ情報も事例も少ないです。
日本のスタートアップの中にもまだ隠れた才能が沢山いると思っており、そういったリーダーを表に出し、もっと多くのデザインリーダーのロールモデルを提示することにこのイベントの意義があると期待していました。
結果、初めてのイベントで知名度はないながらも30社以上のデザインリーダーに応募いただくことができました。
デザインリーダーの評価軸
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今回のアワードを審査する上で、審査項目や評価軸を設定する必要があり、僕にボールが回ってきてしまったので、何名かの著名デザインリーダーの皆さんにヒアリングをしながら評価軸を作りました。もし良ければ何かで参考にしてください。
1. 事業成長への貢献
ユーザーニーズを捉えたプロダクト実装と事業成長を考慮した優先順位マネジメント、デザイン主導のプロダクトマネジメントによって事業成長が実現できているか。
例:成果に紐づいた定量的成果、継続率、チャーン低下等
グッドパッチでもGood design equals good businessのバリューに当てはまる所ですが、やはり経営に関わるデザイナーは事業インパクトを求められます。これを定量的に測る事ができるかどうかですが、なかなか難しいかなと思いながら求めたい項目です。
SaaSであれば、YoYでのMRR向上、チャーンの低下、事業によってはCVR改善や、単価の向上などアピールできる部分はあるかなと思います。
2. 顧客体験価値向上の仕組み
顧客やユーザーのニーズを理解し、市場へ新たな顧客体験の価値提案をプロダクトやサービスのデザインを通して提案できているか。
顧客体験価値向上の仕組みがあり、組織に浸透しているか。
例:Think N1インタビュー(スマートバンク)など
プロダクトの尖ったクリエイティブや先進性も大事ですがCDOなどは継続的に組織のアウトプットクオリティを高められる仕組みの構築や顧客ニーズの変化に対応しながらユーザー体験をアップデートできる仕組みを作ることが求められます。クオリティのトップラインを上げるタレントも必要ですが組織で活動する上で組織全体での仕組みをつくる事がCDOには求められます。
3. ブランド価値への貢献
デザイナー、デザイン組織の働きによってマーケットでのブランド価値が他社よりも高い、もしくは、独自性を持っている状況を築けているか。
例:ブランド価値向上のための取り組み事例、仕組み、◯◯等
ブランド価値への貢献は会社によってはマーケティングトップのCMOが担っている事も多いです。ただ、デザイントップも当然自社のブランドバリューをいかに上げていくかは考えるべきで、スタートアップにおいてはブランド構築がその後の資金調達額やバリュエーション、採用などに関わってきます。同じ市場を攻めているスタートアップでも消費者や投資家が感じるブランド価値によって時価総額が変わったりする事例は大いにあります。
4. リーダーシップ
社内はもちろん社外に対しても発信力を持っているか。
デザイン主導でビジネスプロセスをリードできる巻き込み力があるか。
例:候補者の方の社内での取り組み方の具体事例、エピソード等
デザインリーダーのリーダーシップ力があるかどうかで、社内でのデザイン組織のプレゼンスや外への見え方も変わってきます。特にデザイナーの採用においては、デザイナーの働きやすさはその会社のデザインリーダーのリーダーシップ力に依存することが多いです。
5. 組織開発力
チームマネジメントや採用、育成の他、
組織横断的な課題解決に貢献しているか。
デザイナー育成や評価などの具体的な仕組みがあるか。
例:デザイナーの評価システム、育成方法
これも経営に関わるデザインリーダーは組織開発に関わることは必須になります。昔はCTOも社内で圧倒的な開発の実装力やCDOも圧倒的なクオリティの高さを求められ、CTOやCDOになるケースもあったかもしれませんが、今の時代においては多くの会社で求められるのは組織を作れるリーダーかどうかです。採用、育成、マネージャーを配置しながら組織開発でチームの力を底上げできるリーダーじゃないと経営陣には認められません。
6. カルチャー貢献
企業文化の構築・浸透に対してデザインチームが
貢献している具体的な事例や仕組みがあるか
カルチャー貢献はデザイン組織が関わるかどうかは会社によるかもしれませんがあえて、入れました。特にカルチャー構築に必要なVMVなどの設計にはデザインリーダーが関わっていて欲しいですし、その浸透にもコミットできるデザインリーダーがいるスタートアップは強いと思います。マネーフォワードは創業期からデザイナー達がカルチャー構築に積極的に関わってきて、今のカルチャー的にも強いマネーフォワードがあります。
デザインリーダーはどんな経歴を持っている?
今回、審査を通じて様々なデザインリーダーの皆さんと対話をさせていただきましたが、皆さんキャリアは違えど、共通点のようなキャリアは見えて来ました。
○共同創業者として起業に関わった経験
今回のグランプリtakejunさん、審査員特別賞の村田さんはまさに起業に関わりそのままデザインリーダーになったパターンですね。最初から経営に関わるなら起業ですが、初期は経営なんて言えるものではなく、ただ生きるのに必死なパターンも多く、IPOやM&Aまで行ければ経営に関わるデザインリーダーと呼べますが、ほとんどのケースは死の谷に落ち、経営の経験として求められる所まで行けないケースも多いです。
○事業責任者・PdMになった経験
デザイナーだったが、その後キャリアとしてPdMや事業そのものをマネジメントするケースも一つのパターンだと思います。今後、このパターンは増えると思います。UI/UXデザインはPdMが持っておきたい一つの専門性ですからね。delyの坪田さんはCXOを名乗っていますが、実質プロダクトトップCPOと言える役割を持っていたりします。
○組織マネジメント経験
デザインマネージャーとして組織マネジメントの経験は非常に重要です。ただ、マネージャーからCDO・CXOの経営に関わる所にまで上がっていくには意識を変えないと上がれないパターンも多いと思います。マネージャーの意識と経営の一部として意思決定をし執行していく意識の差分はそれなりにあり、マネージャーから抜け出せないケースも一定存在していると思います。大手のメーカーはデザインセンターでも経営に上げる前に必ず事業経験を積ませるという話も聞いたことがあります。
○社長室・経営企画室などの組織横断で事業に関わる経験
意外だったのが、キャリアの初期に社長室や経営企画室などの経営者に近い部署に配属されたケースもあり、そのお陰で経営者との対話から視座が上がったケースがありました。マネーフォワードのセルジオさんや今回のファイナリストのFake 岡崎くんなどがそのパターンでした。
○クライアントワークの経験
ちなみにクライアントワークをキャリアで経験している人は2次審査に通過した13名のうち7名がクライアントワーク経験者でした。色んなビジネスに関わり、引き出しを増やす経験と言語化力やクライアントや経営者へのプレゼンテーションスキルは磨ける部分はありますね。ポジショントークですがw
経営者目線で身につけておきたいケイパビリティとマインドセット
上のデザインリーダーの評価軸で網羅されている面もありますが、僕個人の意見でもう少し挙げてみます。
○具現化・形にする力
経営者にとって、自らのビジョンを素早く見えるアウトプットにしてくれるデザイナーの存在は本当に助かります。素早く作り上げる速さと、ユーザーに渡る時の細部へのこだわりを両方持つデザインリーダーは本当に貴重です。
○対話力
経営者の視座・視界を理解し、当事者意識も持ちながらも客観的な別の角度の問いを投げかけてくれるデザイナーが欲しいです。対話スキルを磨くには幅広い領域の知識のインプットと問いから内なる声を引き出すコーチングのようなスキルが必要ですね。あと、基本的な経営リテラシーに当たるような情報インプットはしておいた方が良いです。
○P/Lに効くデザインとB/Sに効くデザインの理解
デザインの施策には、短期的な足元の事業課題に効くP/L的な施策と、中長期で効いてくる資産性のあるB/S的な施策があります。事業フェーズごとに何のデザイン施策が今重要かという判断軸を持っているデザインリーダーは本当に貴重です。
○多角的な情報から本質を掴む力
事業や組織は常に複雑性の高い課題にまみれています。そんな課題を整理・構造化し、本質的な課題を読み取ること、これは経営者にも必要な能力ですが、整理構造化が得意なデザインリーダーがいてくれると本当に助かります。
○会社イチ、ユーザーに向き合う姿勢
やはり、デザインリーダーは会社の中で最もユーザーがどう感じるか、ユーザーの課題やインサイトに対して一番当事者意識を持つ存在であって欲しいと思っています。議論がビジネスなどに偏りそうな場面でユーザー価値に目を向けさせる存在、ユーザー体験の守り神であって欲しいですね。
こんなのを求めるとそんな人材いないんですよねw あくまで希望ですw
マネーフォワード辻さんが語った経営に入り込むデザインリーダーの条件
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イベントの中でマネーフォワードCEOの辻さんが経営層に入れるデザインリーダー(≒CDO)の条件は何かという問いにこう答えてました。
まずは経営層の中でCxOとして、特定領域(デザイン領域)に対する深い専門性がまず必要、大きくなってくるとその組織を横串でマネジメントできないといけないので組織マネジメントができないといけない、そうなるとパーソナリティ(人間力)が必要になってくる、そして経営への理解、会社の事業環境、競争優位の理解、そこから経営陣の一人として未来をどう作っていくかを考えれないといけないので、その未来に対しての意思やパッションが必要でと、、まあ難しいですよねw
まあ、上にも書いてあるようにそんな完璧な人材は現れないんですよ。ただ、全てができていなくても、勉強しながら成長していく意志のある人材だと感じられるかどうかですよね。おそらくセルジオさんには辻さんは「必要なことを理解し、自分を柔軟にアップデートしていくことができる能力」を感じ取れたから、CDOを任せられたんだと思います。
任せられそうと思わせれる雰囲気を持っているのが人間力と呼ばれる部分なのかもしれないですね。
ちょうど今日更新されたセルジオさんのnoteも見てください。とても勉強になります。Awardも沢山手伝ってくれた戦友ですw
重要なのは経営に入り込むデザインリーダーになる意識を持っていること
色々、書いてきましたが、求められる事がハードル高すぎて無理だわと思う人が多いかも知れません。ただ、全てのスキルや経験が揃っている人なんて存在しません。
僕が思う最も重要なことは「将来、経営に入り込むデザインリーダーになる意識を持っている」ということです。
経営に入り込むデザイナーになんて、なろうと思っていない人が圧倒的大多数なのです。
その姿を将来目指したい、興味を持っているだけでも、もはやその資格を持っていますし、なれる可能性はかなり高いと思っています。
若いうちにその意識を持っているだけで、入ってくる情報の広さが変わります。自分には経営なんて関係ないと思わないで、若いうちから意識すべきです。
アンテナを広げた事による情報インプットは、後々複利で効いてきます。
キャリアの選択肢として、デザインリーダーとして経営陣の一人になるという事をデザイナーの皆さんはぜひ入れてみてください。
Design Leader Impact Awardは来年もできるか、まだ分かりませんがデザインリーダーのロールモデルを沢山作るというのは意義があることだと思っているので、個人的には継続したいイベントです。
アーカイブは1月31日まで見れるのでぜひ。
Goodpatch Design Advent Calendar 2023もぜひ!
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![Naofumi Tsuchiya / Goodpatch](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13597/profile_37fd79e7df0e8fddaed20e668f3b7be4.jpg?width=600&crop=1:1,smart)