ClariSという奇跡①
世の中の人に比べると、私は音楽をそれほど聴く方ではないと思います。長いこと趣味は読書でしたし、読書をしている間、音楽を流すということはしません。何かに集中していると、音楽を流していても頭に一切入って来ないからです。聞こえていない状態に近いです。昔から、音楽を流しながら勉強する人の気持ちがわかりませんでした。集中すると周りが見えなくなる猫体質なのですニャ。マルチタスクとか全くできないのですニャ。南波六太がうらやましいです(宇宙兄弟大好き)。
音楽を聴くのは、もっぱら車を運転しているときです。私はアメリカの大学で働いていたことがあるのですが、その頃、週末に息子を日本語補習校に連れて行くため、家族を乗せ、片道1時間ほど高速道路を飛ばしました。州をまたいで国立公園に出かけ、妻と交代しながら日中ずっと運転なんてこともたくさんやりました。運転中は他に何かできるわけでもないので、もっぱら音楽を聴く機会となります。帰国後はしばらく電車通勤をしていましたが、最近、車通勤に切り替え、再び音楽を聴く機会が増えました。
そんなときに聴けるよう、お気に入りの曲を見つけたらスマホアプリのプレイリストに入れるということをしています。1960年代くらいから現在にかけて流行したお気に入りの名曲メドレーとか作ってます。
不思議なもので、どんな人にも、自分の魂(ソウル)に届く曲があります。
それは本当に人それぞれで、自分にとって泣けるほど心を動かされる曲であっても、他の人には全然わからなかったりするし、他の人にとって人生を変えるほど重要な曲も、自分にはピンと来なかったりします。
自分と同世代だと、ある人は尾崎豊だったり、ある人はTHE BLUE HEARTSだったり、ある人はZARDだったりしたのですが、私にはピンと来ませんでした。
私と妻の趣味も全く違います。アメリカで運転中、私が集めた超絶オススメミックスを流しても、妻は「なんでこんなの聴いてるの? ( ˙ㅿ˙ )ポカーン」という調子です。運転を交代すると、これまで興味のない音楽を聴かされてきた鬱憤を晴らすかのように、「オススメはこっちでしょうが! ٩(。˃ ᵕ ˂ )وイェーィ♡」とばかりにお気に入りの曲(大抵は椎名林檎)を流し、ノリにノっています。彼女の選んだ曲は、嫌いというわけではないものの、私のソウルには届きません。ちなみに息子はそんな夫婦の熾烈な戦いをよそに一人iPadでゲームでした。
そんな私のソウルに最近届いているのは、かなり今さらなのですが、ClariSです。
クララとアリスの女性二人によるユニットで、2010年にメジャーデビュー。
この時なんと二人とも中学2年生です!
にも関わらず、すでに完成されています。信じられません。
代表作は、『魔法少女まどか☆マギカ』の主題歌となった「コネクト」で、2011年にニュータイプアニメアワード2011主題歌部門、2019年にソニー・ミュージックエンタテインメントの「平成アニソン大賞」において作品賞(2010年-2019年)を受賞しました。
ClariSのファンはクラリストと呼ばれます。ライブに通う真のクラリストがたくさんいます。そんな中、ライブになんぞ一度も行ったことがなく、音楽についても全くの素人の私がClariSについて書くのは大変おこがましいです。しかし、素人の目から見たClariSもまた、ClariSの真の姿の一つであろうと思い、胸中に抱く思いの丈を吐き出したくて、記事を書いてしまうわけでございます。
にわかファンによるClariS紹介としては、以下のブログもあり、とても参考になるのですが、私はこちらの執筆者とは異なる角度でClariSの魅力を感じているようです。そんな私がClariS評を書くことにも、何かしら意味はあるでしょう。あるかな?わからん・・・。
ClariSはアニメの主題歌を数多く手掛けており、私がこのユニットを知ったきっかけも、やはりアニメでした。もはやオジさんの私ですが、アニメやゲームとともに育った世代に属し、今でも普通にアニメは見ます(ゲームをする時間はありません)。この歳になると、大抵のアニメやゲームは「あー、このパターンね」となってしまうのですが、名作と言われるものや、毛色の違う作品は体験するようにしています。
『魔法少女まどか☆マギカ』は、2011年に放送された後、アニメに関わる各種の賞を総ナメにし、2017年には、芸術新潮が批評家の投票に基づいて選定した「日本アニメ100年の歴史で最も重要な10作品」に選ばれます。世紀の名作というやつです。しかし、私が見たのはだいぶ後になってからでした。この作品が話題になった頃、私たちはアメリカにいて情報が入ってきませんでしたし、帰国後も、存在は知っていたものの、少女向けと勘違いしてスルーしていた時期がありました。この作品のあるあるだと思います。
岡田斗司夫の解説を聞いて名作であることに気づき、視聴したのは5年ほど前。度肝を抜かれました。バカバカ!もっと早く気づけ!最近、このパターンばっかりです。『秒速5センチメートル』に気づいたのも比較的最近ですし、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』をラノベで読んだのも14巻が出た頃でした。これらの作品については、たぶんそのうちnoteで記事を書くでしょう。
まどか☆マギカに戻ります。アニメ内で使われている音楽も素晴らしく、オープニングテーマの「コネクト」はもちろん、エンディングテーマの「Magia」、巴マミのテーマ曲となった「Credens justitiam」には心を揺さぶられ(梶浦由記さんスゴすぎます)、私のプレイリストに直行しました。どれもまだ聴き続けています。
「コネクト」の物悲しさと可愛らしさが混じり合う魅力的な曲調に、クララとアリスら少女二人の声質の似た高いトーンはぴったりで、なおかつ高精度で息の合った二人のユニゾンは、まさに初代プリキュア二人組が協力して生み出す必殺技のごとく、美しくそして力強く輝きます。
プリキュア!レインボーストーーーム!
(小学生の娘がいるから詳しい)
次代のプリキュア認定します!(ちなみにプリキュアも中学生)その歌声で世界を平和に導いてください!
ただ、この頃の私は、ClariSを「声のよく似た少女2人組」と「勘違い」していました。「コネクト」しか知らない人の多くがそうだったと思います。Yahoo!知恵袋にも、「クララとアリスの声の違いを教えてください」という質問が多数投稿されています。素人が完全に聴き分けるのは難しいでしょう。
本当は、クララとアリスの声質の違いこそがClariSの最大の魅力だったのですが、それに気づくのはまだ先のことです。「コネクト」では、二人のユニゾンから生まれる魅力を前面に出すため、二人の声質をあえてお互いに近づけているのだと思います。
また、この頃の私は、ClariSが好きというより「コネクト」が好きで聴いていました。なんてもったいないことをしていたのでしょう。
ClariSを意識したのは、2022年に放送されたアニメ『リコリス・リコイル』をリアルタイムで見たときです。原作なしのオリジナルアニメとして作られた、優れたセンスと高い完成度を持つオススメの作品です。オープニングテーマの「ALIVE」とエンディングテーマの「花の塔」はどちらも気に入り、プレイリストに加えました。
その「ALIVE」を歌っていたのがClariSでした。ClariSであることに気づくまで少し時間がかかりました。「コネクト」から10年以上を経て、ClariSは大きな変化を遂げていたからです。
まず、デビュー当時のメンバーの一人、アリスは、2014年に学業に専念することを理由に卒業しています。その後、新しいメンバーとしてカレンが加わりました。アリスとカレンの声は似ていると言う人もいて、確かに曲によっては同意できるのですが、「ALIVE」に関してはかなり違います。アリスは大人びたアーティスト系の声ですが、カレンは体操のお姉さんっぽい感じです。
また、クララの声にも変化があります。「コネクト」を歌っていたときはまだ中学生、それから10年経っているのですから当然です。「コネクト」のときは、少女特有の高いトーンが特徴的でしたが、「ALIVE」では、包み込むような大人びた優しい声に変わっています。
イイです!とてもイイです!
少女の頃の声はもう聴けないんだ、という一抹の寂しさはありますが、それを上回る感動に襲われます。
唯一無二だと思った少女の歌声は、成長して翳ることなく、別の種類の唯一無二に正統進化していたのです。
しかも経験を積み、テクニックは格段に向上しています。嬉しいです!とても嬉しいです!こんなことはそうそうありません。
クララとかけましてアーモンドグリコと解きます。その心は・・・1粒で2度おいしい!
おそらく私は、女性ボーカルの声フェチなのだと思います。ClariS以外で、自分のソウルに届く女性シンガーに、中島美嘉がいます。彼女の唯一無二の歌声を聴くと、どういうわけか心が落ち着きます。イライラしていたり、ざわついたりしていても、彼女の歌声を聴くだけで心が静まり、気持ちがとても楽になるのです。
歌唱スキルは高レベルになると回復魔法を習得できるに違いありません。
いつまでも聴いていられます。
クララの声にも似たものを感じます。彼女の声は、自分のソウルに真っ直ぐ届いてきます。
声質は90年代アイドル風です。ただし、圧倒的にうまいアイドルのそれです。レトロフューチャーという文句で宣伝されてもおり、その頃に流行った歌のカバーもしています。プロデュース側は完全に狙ってます。私がClariSを好きなのは、その頃に青春時代を送ったこともあるでしょう。
そして、私は音楽の素人なのでよくわかりませんが、わからないなりに勝手に想像で書きますと、
彼女の発声法(あるいは発話法?)は、他のシンガーとは異質なのではないか
と思っています。クララが自身の感性と経験から練り上げた独自のメソッドがあるのではと勘繰っています。誰かからの教育によるものではありません。クララの発生法はクララだけのものであり、同じ音楽学校に所属していたアリスにもカレンにもないからです。
歌詞の一音一音を発声するとき、微細かつ豊かな感情が乗っています。そしてその微細な表現に、たくさんのバリエーションがあり、曲のシチュエーションに応じて見事に使い分けています。一音の初めから終わりまでの強弱の付け方に始まり、一節の始め方、終わりでの声の抜き方、抑揚の付け方、あるときは優しく、あるときは突き抜けるように。よく聴くテクニックではないクララだけのものです。普通の人は気づかないかもしれませんが、ここには何かしら独自の文法のようなものがあります。それをいつか明らかにしたい気持ちがふつふつと湧いてきさえするのですが、私の力では無理でしょう。
彼女が歌い始めた途端、空気が変わります。
例えるなら、抜きん出た実力を持つマラソン選手の地面を蹴る音が一人だけ違うようなものです。あるいは、サッカーボールがジネディーヌ・ジダンに渡った瞬間、まるで生きているかのように動き出すようなものです。
同じ曲、同じ歌詞なのに、彼女が歌うと別の歌になります。どうしてこんな風に歌えるのでしょうか?真似できる気がしません。微細すぎてどう真似たらいいのかもわかりません。だから、私はClariSの曲をカラオケで歌うことはありません。いやその、
オジさんがClariS歌ったらキモいでしょ笑
という話は脇に置いて(ね?お願いだから)、純粋にテクニックの話としてですよ!
とにかく、
クララのパートはクララ以外誰も歌っちゃダメでしょ。
という感覚が私の中にあります。
もちろん、音楽の世界には偉大な先人たちがたくさんおり、多彩な感情表現ができる名人級の歌手がたくさんいることは知っています。しかし、
ClariSというグループが目指している音楽のジャンルに最適化されたこの圧倒的な表現力は唯一無二なのではないでしょうか。
唯一無二の声で、唯一無二の文法を駆使して歌っているのではないでしょうか?
音楽に詳しいわけではない私が言っても全く説得力がありませんが、私はこれほどまでにクララを評価しているのです。
例えば「ALIVE」で言うと、以下の歌詞で、
Boldにした部分です。ここを聴くたびに戦慄します。
たったこれだけの歌詞ですが、クララは唯一無二の仕方で歌うのです。
この部分を聴くためだけに、何度リピートしたか知れません。私は何かおかしいのでしょうか?
カレンは、クララについて「完璧」と評したことがあるそうですが、私もそう思っています。
「このパートはこう歌われるべき」としか思えない仕方で彼女は歌います。
他の人にはわからないかもしれない・・・でも自分にはわかる・・・。クララの歌声は、私のソウルを震わせてしまいました。
そうなったらもう、デビュー以来ClariSが歌っている曲を全てチェックせずにはいられません。そして私は、自分がClariSについて何もわかっていなかったことに気づいたのです。
それは、初期メンバーであるアリスの魅力です。
熱狂的なアリスファンのクラリストがたくさんいるので、ホント石投げられそうな話なのですが、「コネクト」と「ALIVE」しか聴いていなかった時点の私には、わかりませんでした。
ごめんなさい!クラリストの皆さん!
ごめんなさい!アリス!
記事は一旦ここで区切り、次回、ClariSにおけるアリスの魅力について書く予定です。アリスを目いっぱい持ち上げます!
ここまで書きそびれてしまいましたが、2014年にアリスの後を継いでメンバーに加わったカレンが、今年、結婚を機にClariSを卒業するそうです。10年間お疲れさまでした!本記事は、このような区切りを迎えたClariSに対する感謝の気持ちを込めて書かれています。