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みんな時間の大事さを軽視しすぎだよな


わたしの会社は完全実力主義の歩合制である。

仕事を取れば取るほど給料が上がる。

果てはボーナスも青天井になる。

だから、取れる人は取りまくる。

それがコンセプト。

実力があって効率よく仕事ができる人にとって、とても有利で魅力的で夢のある環境だと思う。

年収は業界内ではケタ違い。でも、物理的におわるわけがない量の仕事を、ちゃんと高い水準を維持したままこなすことに意義を感じられるのは、ごく一部の人間だけなんじゃないかと思っている。

わたしはものすごい数の仕事をとっている人が、どのようにそれらをこなしているのか不思議だった。到底終わるはずのない仕事量を、毎日毎日さばき続けるにはそれなりの能率を考えた働き方の仕組みや、要領よくこなす秘訣があるはずだ。

でもなんのことはなく、「時間をひたすら切り売りする」力技な努力の上に成り立っているだけだった。

たとえば年収がいまよりも2倍になるとしても、その仕事量をそれなりに回すには朝の6時から夜の20時まで、いやもっと、21時くらいまで働く必要があることをわたしは知っている。そしてそれを延々と繰り返す。

手に入るお金はどんどん増える。

だけど、それを使える時間はどんどんなくなる。お金はあるのに使える時間がない。目的もない。外資に勤めて年収が2000万になった友人もそう言って、鬱病になった。

会社の働き方というのはそういうもので、役職がついたり、昇進して部下を束ねるようになると、忙しくなることはあっても楽になることは100%ない。

会社員の働き方は、手に入るお金が増えるのと、時間が奪われることが比例している。これを逆にしたかったら会社員という働き方を辞めるしかない。

昇給や、地位や名誉や肩書きのおかげで、充実した人生が手に入ったかのように見えるのに、それがなんの意味もなかったと思えるのは人生の最後だと思う。

人は起きて寝て、ごはんを食べて、活動する。寝る時間以外の起きている時間すべてを、お金をもらうために費やしたとしたら、そのお金はなんのためにあるのだろう。

元JPモルガンでお金のスペシャリストの大西つねきさんが穴掘り事業の話をしていた。

穴を掘って、また埋める。

その意味のない作業をし続けると、たとえお金がもらえても人は死にたくなるのだという。本来お金は価値との等価交換であり、価値を生まない仕事はブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)と呼ばれ、ホワイトカラーのほとんどがこれに当たるという。




お金がもらえようがもらえまいが、本来その「自分がしている活動」自体に価値と意味を見出せることだけが自分の人生に必要なのであって、そんなものもなくお金のためだけに、意味のない仕事とわかりながら働くのは自分の貴重な命と時間をドブに捨てているのと同じだ。

時は金なんかよりも大事なのだ。

時代は令和で、24時間働けますかのCMも流れてはいないし、(わたしはみたことがないけど)

ひたすら時間を切り売りして、残業代で給料の少なさを補っていた時代とはわけが違うのだ。

わたしの会社は通常9時から18時で、それを超えたら会社から余分なお金はもらえない。

たとえば6時から20時まで働いたとしたら、休憩時間をのぞいた6時間を毎日毎日ドブに捨てていることになる。

そんな時代錯誤な、いつの時代の話かと思うようなエピソードは、今の日本でそれなりの規模の中小企業にとっては当たり前で、みんな自分から望んでこの働き方をしている。

残業申請ができないことよりも、仕事が終わらないことのほうが重大な問題で、お金ももらわず平気で時間をゴミ溜めに捨てていく。

大事な人と過ごしたり、好きな趣味に費やしたり、おいしいごはんを食べながらたわいもない話をするような、そんな過ごし方もできたかもしれない6時間を。1年にすると2190時間だ。

割り当てられた時間の中できちんとおわる量の仕事をして、それに見合った給料をもらうことは、会社員として長く働いたわたしもずっとしてきたことだが、お金にもならないのに1秒たりとも自分の時間を明け渡せる神経は、何年働こうがよくわからない。

それは自分の労働力を軽く見ていることと同じだし、本来毎日毎日余分に切り売りしているその数時間は、本来3倍以上の価値をもって返してもらわなければならないほどの労働に匹敵するのだ。日本人のこまやかで信頼のおける労働力が、本来はどれほどの価値になるのか、知らない人が多いのだろうけど。

日本は世界一の黒字国でお金が死ぬほどあるけど、それは日本人がこんなわけのわからない働き方をして、自分の価値を低く見積りまくって、切り売りしまくった結果である。

自分の価値に見合わない労働は今すぐやめてもらいたいし、する意味はまったくない。むしろその余計な働き方が、この国をどんどん貧しくさせたのだ。

トチ狂った奉仕精神に酔いながら、仕事に魂を売り渡している会社員の皆様におかれましては、めでたくAIも普及してホワイトカラーの9割が消滅すると言われている昨今、どうか時間の大切さを再認識いただきたく思います。




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