おふろ日記/長編小説は読まないつもりだったのに。
夕べ珍しく熱が出て、一晩中うつらうつらとしていた。それでも朝はすっきりとした目覚めだったけれど、今日は一日ベッドで過ごそうと決める。
というのも今読んでる小説が面白くて、やめられない。病気を理由に一日、本を読んでしまえというコンタンで。
大佛次郎の「帰郷」を読んだ。
どうしてこんなクラッシック!?
戦後間もなく書かれたこの本を、強制的に読めと言って来たのは私のnote でもお馴染みのアンディよ。
彼は、最近この本の英語版を手に取って、いたく興味を惹かれたらしい。それで来週うちに寄るまでに、私もこの本を読んで、それについて語り合いたい、というのだった。
それを彼の送ってきたメッセージで読んだ時、
「めんどくさ〜」
と正直思ったのは、私は普段、短編以外の小説を読まないようにしているから。
村上春樹の「1Q84」だって、いまだ怖くて近づけない。友達が本を差し出しても、1ページでも開けば、放せなくなるのは分かってる。
というのも、読み出すと止まらなくて、徹夜してでも終わりを見るまで本を放さないのが、私の一途な本の読み方。
だから同じ理由で、続きもののドラマも見ない。見るのは一回きりで終わる映画だけ。
見始めれば最後、
終わるまで、私の暮らしはそれ一色になってしまう。
読んでいる本やドラマの支配下に置かれた暮らしと言っていい。
だから、長編小説でも、ドラマでも一気見をせずに、ゆとりを持ちながら、暮らしを彩るものとして、優雅な趣味さながら愉しめる人はいいなあ、と憧れる。
だって、本もドラマも実際には大好きで、心の肥料みたいなものだからね。
大佛次郎という小説家は聞いたことはあっても、読んだことはなかった。
アンディが その題名を「Kikyou」と書いてきたので、私の脳裏にはまっさきに「桔梗」が浮かんだ。幸か不幸か手元にあったキンドルで調べれば、すぐに「帰郷」は手に入った。
あらすじだけを読めば、アンディからの勧めがなければ手に取らなかっただろうけど、これがすごく良かった。
すでに長編小説を読むだけの、体力が私になくなっていたお陰か、情景描写が美しくてそこを何度も読み返してしまうせいか、
そして、戦後の人々の感情を辿るごとに、読む速度を落とした。
登場人物の鮮やかなこと、魅力的なこと。
時代背景とは裏腹に、ビビッドでハイカラで、桜や、牡丹や、美しい着物やと、カラー付きの情景が次々と現れる。
寝る前には無事に読み終えた本を閉じて、しばらくは本の世界の余韻に浸った。(これが楽しいよね!)
アメリカ人のアンディは、この本のどこに興味を持ったんだろう?
きっと私とは違う、見方をしているはず、と思うと彼に会うのがますます楽しみになった。