ここにある、すぐにある、豊かさの波動
満月の夜。
いつもはシャワー派の夫が、家の外に備え付けてあるホットタブに、一緒に入ると言う。
夜、仕事の後のお風呂は、いつもは極上のお一人様時間。
でも、しばらく風邪を引いて ほとんど私に近寄らなかった夫と 久しぶりにお湯に入り、輝く夜空を見上げると、子供のようにはしゃぎたい自分を見つけた。
ひとしきり、最近店であったことを話した後、私が他所を向いている間に彼は流れ星を目撃した。
「緑色でね、ゆっくり流れていったよ」
こんな明るい夜空の、星もわずかにしか瞬いていないのに、流れ星を見てしまう彼に嫉妬する。
肩を並べてお風呂に入っているはずなのに。
大きなイチゴを一粒落とした、ピオーネのワインをゆっくりと味わう。
月の光が、水面でさざ波のように揺らいでる。
遮るもののない空。
背面にユーカリの木々の温かさを感じていると、心が広々として、
「欲しいものが、ぜんぶがここにあるね、」
と口について出た。
「でも、ナオちゃん(私のこと)の大好きな海がここからじゃ見えないよ」
そう、夫が言うのに、私はすぐに返した。
「見えるよ、目を閉じれば!」
そう、目を閉じれば 私のまぶたにはありありと、お気に入りの海岸の景色が鮮やかに広がっていた。波に追われて海辺でずぶ濡れになった、去年の秋のことを思い出して、思わず笑った。
目を閉じて、欲しいものの波動を手に入れるアイデアが、自分の中にあったなんて、その時まで気づかなかった。
きっと、先日どこかで読んだ記事が関係してるんだと、分かった。
その記事にはこう書いてあった。
ああ、なんて、なんて、本当のことなんだろう!
私たちはこんなにもすぐに、満たされて、温められて、豊かになれる。
今、ここで。
子供は何でも知ってるんだな、
どうやって、幸せになれるかを。
ただ、周りの大人がその価値をちゃんと認めてあげないと、その豊かさは育っていかない。
満月を惜しみながら、お湯から出る時
私は目を閉じて、まぶたの上に、銀色の流れ星が流れるのを確かめて、ニヤリと笑ったよ。
私にも見えた、流れ星。