図書館の効用
近ごろ、まめに図書館に通っている。
これまでは、娘の通う小学校での読み聞かせ用の絵本を探すときや、娘の本を借りるとき以外、図書館はめったに利用してこなかった。つまり自分が読む本を図書館で借りる、ということを積極的にはしてこなかったのだ。
それは意識と習慣によるもので、本をつくる仕事に就いてからというもの、自分が手がけた本を書店で買ってくれる人がいるのだから、自分も本を書店で買うべきだ、という考えがすっかり根づいていた。はっきり覚えていないけれど、おそらく就職したてのころの上司からの教えだったかもしれない。それが20年以上も習慣となっていたのである。
家の本棚の整理がきっかけに
わたしが読む本は、純粋に読書欲がかきたてられて買い求める本と、仕事の資料として読む本とがある。とくに資料としての本は古本をネットで探すことも多く、仕事が終わればまた古本屋さんに売ったり、今後また読み返すかもと思えるものは手元に残しておいたり。
半年ほど前、家のリノベーションのために、これまでにないほど大量に蔵書を処分し、おかげで仕事部屋も納戸の本棚もずいぶんすっきりした。
その本棚に並ぶ背表紙を端から順に見ていくと、かなり厳選したはずの本のなかに、まだ読んでいない本もちらほら、いや、けっこうある。
とくに納戸の壁面いっぱいに作りつけた本棚の方には児童書と絵本だけをまとめたのだが、もともと夫が持っていた本が多いため、わたし自身は読んでいないものも多い。あるいはわたしの少女時代の愛読書であっても、大人になった今こそ再読したいものばかりで、しかもそういう作品はたいていぶ厚いシリーズもの。いったい何ヶ月、いや何年かければ、ここにあるすべての本を読破できるのだろうかと気が遠くなるくらいだ。
それなら図書館へ行くよりまず、家の本棚にある未読の本から着手すればよいのだけれど、現実はそう単純ではない。
やはり今取りかかっている仕事で調べたいことや考えたいことのために本を読まなくてはいけない。そうした本を、これまでは書店でサクサクと買っていたのだけれど、図書館で借りてみることにしたのだ。
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2021年11月発売のエッセイ集『ただいま見直し中』(技術評論社)に収録されたエッセイの下書きをまとめました。書籍用に改稿する前の、WEB…
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