No.24 冷たい夏
オークランドの空は、黒い雲に覆われていた。小雨が降りしきり、人々は肩をすくめながら歩き厚いコートやダウンを着ている。
南半球は夏へと向かっていると思っていたけれども。
空港出口では、私の愛車が待っていた。よかった、壊れている様子はない。中華街で買ったこの自転車は、特殊なネジを使っていたため、分解することができなかった。滑稽なことに空港チェックインカウンターでスーツケースを置くための重量計測ベルトコンベアーの上へタイヤ一つ外さずに乗せて連れて行かれてしまった。
タイとは異なり、きめの細かいアスファルト道を走るのは心地よかった。日本とも違う、自然の美しさと調和した魅力的な街並み。小川のせせらぎが聞こえる静かな通りには、色とりどりの庭園に囲まれた家々が並んでいた。郊外ということもあるかもしれないが、車の通りもなく、静かな国だった。ただ、空港からオークランド中心街までは距離があり、この道で合っているかを聞きたくても人影がなく半信半疑のまま走り続けた。
それでもなんとか30キロの道のりを2時間ほど走り、オークランドバックパッカーズホステルにチェックインすることができた。
ドミトリールーム1泊5NZドル(200円)。金額はタイとさほど変わらないが、共同キッチンが付いているしホットシャワーも出る。
雨も止み、暗くなり始めた街に愛車で出ていった。郊外も美しかったが、経済の中心地であるこの町も綺麗だった。坂の多い街で、下っていくと海に出くわした。とりあえず、寒かったので上着を買おうと洋服屋を探したが、夜中のようにあらゆる店が閉まっている。宿に戻りどういうことかを聞くと、週末は閉まっているということだった。迂闊だった。しかも今日は、土曜日だ。明日もこの状態ということだ。とにかく寒い。短パンの足には鳥肌が立っている。
ニュージーランド経済の中心地であるオークランドは、バンコクほどではないが、十分都会だった。そんな所が週末は、店が開いていないなど信じられなかった。
私は諦めずに探しまわり、フェリー乗り場の近くに開いている店をやっとのことで見つけることができた。店に入ると、大橋巨泉の等身大看板が笑顔で出迎えてくれた。
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