naoya

ほぼノンフィクションです(昔のことなので多少記憶違いがあると・・・でも行ったところや登…

naoya

ほぼノンフィクションです(昔のことなので多少記憶違いがあると・・・でも行ったところや登場人物との関係性ややったことは事実です) 常に理屈よりも感覚を大切にが心情です よろしくお願いします

最近の記事

No.31 逃げた飛行機

 大きなリビングの窓には真っ青な空とテカポのミルキーブルーが、今日も広がっている。そこにアニキが、いつものように落ち着いた足取りで入ってきて事も無げにいう。 「予約した、飛行機が行ってしまった・・・」 クライストチャーチからオークランドへの便で、その後数日してから日本へ帰国する予定だったらしい。彼の言葉に私たちは一瞬言葉を失った。  私たちにはどうすることも出来ずに彼を見つめる。しかし、彼はまた事も無げに言った。 「キャンセルしよう。」 「え!?出発してしまった飛行機をキャン

    • ちょっとやりたいことが多すぎてnoteまで手が回らなかった。でも好きなことなので続けていきます。 そして、できれば最初の頃の文章を編集しながら

      • No.30 暖炉と雪山、そしてワイン

         もうクリスマス。日本を出発してから半年が経とうとしていた。  私は、ここで年を越そうと思った。その理由は、テカポユースホステルに飾られてる一枚の写真だ。雲の隙間から一筋の日差しが丘向こうに建つ「善き羊飼いの教会」を照らしている写真。作者は、この風景を撮るために何年もテカポに通い詰めたそうだ。その彼が、年末年始に来るというので、私は彼に会ってみたいと思った。  そしてもう一つ理由がある。ここで出会った3人の日本人ともう少し過ごしたい。  3人のうちの一人はユースホステルのスタ

        • 空飛ぶクジラ

           「私、ビジネスを買おうと思ってるの。」 夕食を共にしている時、ナミちゃんがキラキラした目で話してきた。  最近は、ナミちゃんと夕食を取ることが多くなり、この日のメニューは茄子とベーコンのトマトソースのパスタ。そしてニュージーランドは、美味しいワインがとても安く、この時は赤ワインを飲んでいた。  前にナミちゃんがホームステイをしていたホストマザーから、 「今、私がやっているビジネスをやってみない?」 と相談されたらしい。 「イベントを主催する仕事。誕生会や歓迎会のパーティーを

        No.31 逃げた飛行機

        • ちょっとやりたいことが多すぎてnoteまで手が回らなかった。でも好きなことなので続けていきます。 そして、できれば最初の頃の文章を編集しながら

        • No.30 暖炉と雪山、そしてワイン

        • 空飛ぶクジラ

          触れ合う小指

           すっきりと青空が広がるクライストチャーチの街。鐘の音色が空を舞い、ゴンドラがゆったりとエイボン川を行き交う。その中心には、クライストチャーチ大聖堂がそびえ立ち、静かに街を見守っていた。観光地でありながら、その派手さを抑えた落ち着いた雰囲気が好きだと思った。  大聖堂からほど近い場所にあるバックパッカーズホステルに宿を取った。ボサボサ頭のヒッピー風の受付の青年が私に、ウインクしながら部屋の鍵を手渡してきた。 「OK、ドミトリーだね。今、ちょうど日本人の女の子が泊まっているよ。

          触れ合う小指

          No.27 スズキ自転車とは?

           バーガーキングの2階席に腰掛けハンバーガーを頬張り、窓の外を眺めているとサラリーマン達が帰途につく姿が見えた。生まれ育った大阪の喧騒を遠く感じ、現実に戻されたような錯覚に陥る。いや、これもまた現実の一コマなのだ。  首都ウェリントンの街は、カフェが点在する落ち着いた空気をまとっていた。明日はフェリーで南島へと向かう。ゲストハウスは殺風景なところで、周りの建物の壁には落書きがあり、夜になると街灯のない暗がりが治安の悪さを物語っている。ニュージーランドにも、こんな所があるのだな

          No.27 スズキ自転車とは?

          No.26 ドイツ人とは・・・

           「しまった・・飲み水がない。」  地図に記された町の名前は、実際には家がわずか数軒並ぶ小さなビレッジに過ぎなかった。  タウポから、海沿いのネーピアまで170キロ。ホテルやキャンプサイトもなかったので走り切ることができなくても、途中でテントを張ればいい、そう考えていた。どこかで、食料と飲み水を調達すればいいと・・・  永遠に続く登り坂を、自転車を押して歩いている時、私の心は過去へとさまよい始めた。  高校生の時、西成のあいりん地区で、たまにアルバイトをしていた。朝早く新今

          No.26 ドイツ人とは・・・

          No.25 白人からの差別

           星明かりが薄れ、静かにオークランドは目覚める。しかし、タイとは違い人々が動き出すのは、もう少し遅い。私は、サイクリングバックに改良を加えた。これで後輪に荷物が擦らないだろう。バンコクの紀伊國屋で手に入れたニュージーランド自転車マップを頼りに、ハミルトンへの道を進んだ。計画はあるが、私の旅は常に予測不可能なものだった。そして、またそれが私の心を踊らせる。  ニュージーランドの絵画のような美しさに私は息を呑む。ペダルを漕ぎ続けた。150キロの道のりを淡々と。空が徐々に明るくな

          No.25 白人からの差別

          No.24 冷たい夏

           オークランドの空は、黒い雲に覆われていた。小雨が降りしきり、人々は肩をすくめながら歩き厚いコートやダウンを着ている。  南半球は夏へと向かっていると思っていたけれども。  空港出口では、私の愛車が待っていた。よかった、壊れている様子はない。中華街で買ったこの自転車は、特殊なネジを使っていたため、分解することができなかった。滑稽なことに空港チェックインカウンターでスーツケースを置くための重量計測ベルトコンベアーの上へタイヤ一つ外さずに乗せて連れて行かれてしまった。  タイと

          No.24 冷たい夏

          No.23 新世界への不安

           バンコクでは、赤信号はただの提案に過ぎない。龍太郎と私は、中華街の縦横無尽に走る道を彼の自転車と私の新しい自転車でトゥクトゥクや車の間をすり抜け、ドンムアン空港に向かった。注文していた自転車が仕上がったのだ。龍太郎は、私の自転車が出来上がるのを待って、日本へ帰国することを決めていてくれた。 「ありがとう、色々と。」 私は、新たな世界を教えてくれた友人に感謝の気持ちを伝えた。彼の目は、旅の終わりの名残惜しさと、無事に日本へ帰れる安堵が入り混じっている。 「ニュージーランドを楽

          No.23 新世界への不安

          No.22 再会と新たな旅立ち

           アユタヤの古い街並みが、文化の違うマレーシアから戻ってきた私を、静かに迎え入れてくれた。そして、PSゲストハウスの門をくぐると、そこには予期せぬ人影があった。龍太郎だ。だが、彼の顔は傷だらけで、腕や足にも青いアザが散らばっていた。 「ナオヤ、久しぶりだね。」 龍太郎は、微笑んだが、その目は疲れを隠しきれていない。  彼は、私たちとノンカイで別れた後、ラオスへと旅だったはずだ。あれから1ヶ月経った今頃は中国を走っていてもおかしくはない。しかし、運命は彼に別の道を用意していたよ

          No.22 再会と新たな旅立ち

          No.21 抵抗できない好奇心

           クアラルンプールの屋上で、私たちは心地よい風に吹かれながら語り合った。日本での生活、旅行の思い出、そしてこれからの夢について。希望に満ち溢れる会話の中には、未来への不安も混ざり合う。  「ところでさあ、私たちの部屋にゴキブリが出たんだけど、みんなのとこはどう?」 あずきが、酔いで虚ろな目で問いかけた。 「今のとこ見ないですよ」 とタカシが答えた。彼の部屋は清潔そうだった。 「怖くて部屋に入れないんだけど・・・」 あずきは続けた。 「タカシ君の部屋にベットが2つあるんなら、一

          No.21 抵抗できない好奇心

          No.20 覗いた先にいた人

           クアラルンプール中華街の古びたゲストハウス。暗く狭い廊下から、東洋人の女性が窓越しに私の部屋を覗いていた。彼女の視線は、私の頭から足までをなぞる様に一瞥して通り過ぎていった。「日本人だろうか・・」​​  ゆかが帰国してから、2人で過ごした静かな宿から、心の隙間を埋めるようにチャイナタウンの喧騒へと身を投じた。  商店が軒を連ねる1階を抜け、ビルとビルに挟まれた隙間の階段を上がる。そこには時代を感じさせるレセプションがあった。いつものように部屋を見せてもらい、自慢の屋上テラス

          No.20 覗いた先にいた人

          No.19 ゆかの涙

           タイ側サトゥン国境のフェリー乗り場は、静寂に包まれていた。私たち以外に外国人の姿はなく、観光というよりも現地人の日常生活に使うためのフェリーという感じだった。そして、オーバーステイをしてしまったゆかは、罰金2000円ほどを警察に払い、無事にマレーシアのランカウイ島へと渡ることができた。  ランカウイ島では、私たちは共に過ごす時間を存分に楽しんだ。バイクであるか無いかわからない温泉を探したり、ワニ園で人がワニの口に頭を入れるクロコダイルショーを見たり、道端に突然出てきたオオト

          No.19 ゆかの涙

          No.18 暗く冷たい空気

           バンコクの喧騒を抜け、ファランポーン駅からスラーターニーへと向かう夜行列車は、まるで目的のない私たちの運命のようにゆっくりと時間を刻む。星も隠れるほどの暗闇に包まれた荒野で、時折止まり、自転車が追い越すほどの速さで進む。それでも、ゆかは窓の外を見つめ、静かな夜を楽しんでいるようだった。 「のんびり行きましょ🎵」  彼女の声は、月明かりに照らされた車内で優しく響く。私はその言葉に惹かれるも、ふと不安に駆られる。「ゆかは、いつまで私と一緒にいてくれるのだろう?」日本での次の仕

          No.18 暗く冷たい空気

          No.17 交差点再び

           ほんの2週間離れただけだったけれど、PSゲストハウスは別世界のように感じられた。でも、青々とした広い庭は、遠くから旅人を迎える灯台のように、私たちを優しく包み込んでくれた。  今の時期は、ヨーロッパの休暇で多くの白人が宿泊していて、私たちは仕方なく1階のドミトリーへ泊まることになった。Teeも珍しく忙しそうで私たちの相手をしている暇もない。  夜中、ゆかの小さな手が私をそっと揺り起こす。彼女の不安に駆られた瞳で目を覚ます。私たちの部屋の扉を誰かがこじ開けようとしていたのだ

          No.17 交差点再び