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No.14 はがゆさ
アユタヤの古い駅から寝台列車に揺られ、私たちはノンカイを目指した。
新たな旅の始まりに心踊らせ、ゆかと2人きりの時間が始まったことに気づく。彼女の表情からは、何も読み解くことができず、私の心は歯痒かった。「彼女は本当に、私のことが好きなのだろうか?」「旅を共にするということは、少なくとも嫌いではないはずだ」「それとも、ただ偶然同じ方向に行きたいだけなのか?」答えの出ない思いが頭をグルグル巡る。
早朝、ノンカイに到着した。とりあえず事前に目星をつけていた宿へと、トゥクトゥクを走らせる。メコン川沿いに佇む、ロッジスタイルのドミトリーの宿で、アユムたちの家も近くにあるはずだった。チェックインを済ませ、住所を頼りに探し当てると、高床式の家からンゴが、懐かしい笑顔で手を振っていた。
「よく来たねー。ナオヤー。」
と暖かく迎えてくれた。先日別れたばかりだったが、まるで長い時間、会っていなかったような親しみを感じ微笑んだ。
その夜、ンゴは裸電球の下、手作り料理で私たちを、もてなしてくれた。アユムも帰宅し、アユタヤでの思い出話は、静かな夜にいつまでも続く。
翌朝、昨日はチェックインしてアユムの家を探しに出掛けて、泊まった宿に戻ったのは夜だった。暗くて気が付かなかったけれども、私たちの宿は木陰に囲まれ、メコン川からの涼しい風が吹き抜ける、楽園のような場所だった。中庭には手作りの木製ブランコがあり、レストランやバーも併設されていた。ここには、また来たいと思う。
アユムは、自宅のすぐ近くで小さなコンピューター修理屋を営んでおり、主に携帯電話の修理を行なっていた。売り上げは、ふたりで生活するには十分ではないが、満足しているようだった。
ゆかと私はメコン川沿いを歩いたり、変な人形ばかり置いてある博物館に自転車で行ったりして、2人の時間を満喫した。ノンカイは、アユタヤより小さく、時間がゆったり流れ過ごしやすそうな町。アユムがここで生活をするのが、わかるような気がした。
そして、近いうちに龍太郎が到着するというメールが届いた。