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ミラノ フオーリ・サローネ2019 レポート(25):藝大ファクトリーラボ×感動創造研究所 「RESONANCE MATERIALS Project」

フオーリ・サローネ会場としても有名なロッサーナ・オルランディにて、体験型の展示「RESONANCE MATERIALS Project〜Sensory〜」が人目を惹いていた。

このプロジェクトは、東京藝術大学が母体となっている藝大ファクトリーラボと、展示会やイベントの装飾や空間作りを100年以上行ってきた企業・(株)ムラヤマが作った感動創造研究所の共同研究によって生み出された。


今回のテーマとなっている「Sensory」(知覚的)とは何か?

「Sensory」を文字通り解釈すると、「知覚・感覚による」「知覚・感覚を伝達する」というものである。

特に今回の展示においては、金属、ガラス、木材、陶器といった様々な素材によって、作られた作品を、見て、触って、聞いて、感じて鑑賞する、というよりも体験するということが視野に入れられている。

まず一つ目の作品は、高本夏実氏による「HASS」。

水に静かに浮かぶ蓮の葉をイメージして、金属やLEDで作られた証明である。

触れるとふわふわと動き出し、不思議な光を見せてくれる。


次に、狐塚崇子氏の木の作品「Passtime in my childhood II」。


ブラックチェリーというこだわりの素材を使った丸や棒、曲線のオブジェは子どもの頃に頭に浮かんでいた世界を再現したという。

磁石でくっついたり離れたりするパーツを、イタリア人の小さな子どもも夢中になって手にとって遊んでいた。

そして3つ目に、鈴木智亜貴氏の"Ephemeral Shell"。

少女の抜け殻と題されたこちらは、陶紙という特殊な素材と技術によって作られた紙のように薄い陶器である。

(なお、抜け殻の本体は作者自身らしい)

驚くほど軽く儚い「少女」というものが再現されている。

そして4つ目は、多田えり佳氏の"Dream of white night"。

ふんわり浮いた風船のように見えるがこちらはガラスでできている。

作者が大のうさぎ好きということもあって、ぶら下がる案内人はうさぎ。

ウランのために、ぼんやり光る風船を覗いてみると、ぐにゃりと歪んだ自分の姿がガラスに映し出されるのである。

5つ目は、田中航氏の"Eclipse"。

アルミや真鍮、ステンレスで再現された金属板の宇宙は、手動で回すと仕掛けられたライトがチラチラ光り出す。

手で回すことで、金属板の重み、遠心力を感じることができる。

もう一つ田中氏の作品「ゆらめく」。


まるでススキの穂のようにゆらゆら揺れるこちらは、金属の棒の長さや強度、高度、上の鐘の部分一つ一つに入った切り込みなど全てが計算しつくされている。

どの方向に揺れても心地よい音が生み出される仕様となっているのである。

最後に、藤田クレア氏の装置。

こちらは男女の対話を想像しているという。

ガラスや金属、ローションなどで作られた装置が生み出す空気の音を静かに聞くことができる。


以上が今回の展示作品であるが、サローネの中でも、見て触って体験できる展示というものは、全体の中でも少ないのではないだろうか。

("Don't touch"が基本である)

英語にも、「感動」を表す表現として"deep emotion", "deep impression"、「感動する」を表す表現として"be moved", "be touched", "be impressed", "be shocked", "be rocked"などという言葉があるものの、日本人が日本語で「感動する」状態を、日本語を母国語としない人に伝えるとしたらどうしたらよいのか。

今回のブースは、言語化する前にまず「触る」「体験する」場を提供するものであった。

言葉というものは後付けかもしれない。

しかしながら、会場の人々は「体験した」上で、スタッフの方達の説明を「うんうん」と聞いていたような印象を受けた。


RESONANCE MATERIALS Project ~Sensory~ 

住所:Spazio Rossana Orlandi/ Via Matteo Bandello, 14/16, 20123 Milan 

会期:2019年4月9~14日(9:00-19:30)

共同主催者:藝大ファクトリーラボ、感動創造研究所
協力:東京藝術大学、株式会社ムラヤマ、株式会社ムラック
アート制作:高本 夏実、狐塚 崇子、鈴木 智亜貴、多田 えり佳、田中 航、藤田 クレア、赤澤真美


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