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タヴェッジャ 1909(Taveggia 1909):まるで映画のロケ地、ミラノの穴場な老舗カフェで優雅なひと時を

今回のnoteでは、ミラノの大聖堂からも程近い、1909年創業のシックなカフェ、タヴェッジャ 1909(Taveggia 1909)を紹介したい。

老舗バール・タヴェッジャは、1909年に、フェルモ・タヴェッジャ(Fermo Taveggia)によって創業した。

創業当時は、ポルタ・ヴェネツィア(Porta Venezia)に店を構えていたが、1930年以降、ヴィスコンティ・ディ・モドローネ通り(Via Visconti di Modrone)とチェーザレ・バッティスティ通り(Via Cesare Battisti)の交差点に移転した。

現在にも伝わる店舗の設計を担当したのは、ガエターノ・モレッティ(Gaetano Moretti)。

磨き上げられた大理石、木工細工、きらめくシャンデリア、木製のバーなどアール・デコ様式の装飾に彩られた店内は、洗練された雰囲気である。

そんなタヴェッジャであるが、何度か経営者が変わった後、コロナ禍には休業していた。

(お酒にも合う一口サイズのフィンガーフードもあり)
(一口サイズのケーキ、パスティチーノは一つ1.5ユーロ)

筆者も2019年時点でミラノの老舗カフェ特集でこのタヴェッジャを取り上げていたのだが、一時は「閉業」と記していた。

幸運なことに、2022年5月、ボローニャの老舗カフェ ガンベリーニ1907(Gamberini 1907)を経営してきたアレッシオ&アントネッラ・コンティ夫妻(Alessio e Antonella Conti)とパオロ・マイノ(Paolo Maino)が経営に関わり、フードとお菓子部門を担う形で、タヴェッジャは、ミラノで息を吹き返した。

さらにコーヒーをタヴェッジャに提供するのは、1919年創業のボローニャのコーヒー専門店フィリコーリ・ゼッキーニ(Filicori Zecchini)である。

観光地のドゥオーモから徒歩圏内ながらも、ビジネス街のサン・バビラ(San Babila)とミラノ大学(Università degli Studi di Milano)付近という場所柄、観光客の方の姿は少なく、落ち着いた店内である。

(チョコレートやクッキーなど、とにかく種類が多い)

20世紀には、バレエダンサーのカルラ・フラッチ(Carla Fracci; 1936-2021)やスカラ座のオペラ歌手レナータ・タベルディ(Renata Tebaldi; 1922-2004)といったミラノの文化人たちが通った。

美しい内装のこのカフェは、ミラノで起こったいくつものドラマを見つめてきた。


また、フランチェスコ・マゼッリ監督の映画『容疑者』(Il Sospetto)のロケ地としても使われた。

戦火を逃れてそこに佇むアール・デコ様式のこのバールの店内は、まるで1930年代から時間が止まったようである。

このnoteでも書いているように、1943年の空襲により大きな被害を受けたミラノは、空襲で焼失してしまった区域も存在し、ミラノで一番古いカフェ・コヴァなども1943年に崩壊している。

その点、タヴェッジャは、美しい姿を今に伝えている、とても幸運なお店なのである。

お菓子を選んでいる際に、真っ黒なメレンゲを発見した。

不思議に思って店員さんに尋ねると、「カルボネーネ」(carbone)、つまり炭という名前であると教えてくれた。

試食をいただき、普通のメレンゲという感じであったが、ネーミングが面白い。

店内の至る所では凝ったアール・デコ様式のデザインの装飾が見られ、うっとりしてしまう。

レジ脇にはレオーネのお菓子も。

この近くにミラノ大学があるために、筆者がここに立ち寄るのは図書館の帰りであることが多いが、テーブル席でマダムが物思いにふけり、カウンターではおじいちゃんが新聞を読みふけっており、まるで時が止まったかのようにゆったりした空間に癒される。

カウンターでマキアート1.3ユーロとパスティチーノ1.5ユーロを注文。

大聖堂近くのお店で2025年現在でこのようなお手頃価格でエスプレッソやお菓子を提供しているお店もなかなか珍しくなった。

大聖堂周辺だと、立ち飲みでもエスプレッソが1.5ユーロから2ユーロ、パスティチーノが1.8ユーロから3ユーロもするところも珍しくない。

ちょうど他のお客さんの犬が歩いてきたので撮影。

どの角度から撮影しても美しいのでついついシャッターを切ってしまった。

普通のサイズのパスティチーノよりもちょっと大きめなので、フォークがついてくるもの嬉しい。

この時頼んだパスティチーノは、ザッハトルテ(Sacher)であり、ちゃんと上にアプリコットが一つ一つの小さなパスティチーノにのっているのがポイント。

他にも食べてみたいパスティチーノはたくさん。


イタリアの漫画雑誌Linusの初代編集長のジョヴァンニ・ガンディーニ(Giovanni Gandini; 1929-2006)は次のように言った。

「タヴェッジャは、街の希少な避難所だ。

書物ができ、良い出会いがあり、洗練された会話を楽しみ、適正な値段で食事ができるそんな場所だ。」


このエリアには、老舗の有名店が多いが、静かに時間を過ごしたい時にはここタヴェッジャがお勧めである。




タヴェッジャ(Taveggia1909)

住所: Via Visconti di Modrone 2, 20024 Milano, Italia

営業時間:7:30-20:30(月曜から金曜)、8:00-20:30(土曜)、8:00-15:00(日曜)

公式ホームページ:gamberini.eu

★参考:

2017年5月3日付 zero.milano

「La pasticceria Taveggia riaccende l’insegna: «Così rinasce un pezzo di storia milanese»」『Corriere della sera』(2021年7月26日付記事)

「Taveggia scrive un capitolo nuovo su Milano: finalmente la riapertura dello storico locale con la miscela Filicori Zecchini」『Comunicaffe』(2022年12月25日付記事)

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