『良い戦略、悪い戦略』
この本をお薦めしたい人は以下の3名である。
①戦略策定の基本的なプロセスを知りたい人
②良い戦略、悪い戦略の定義を知りたい人
③良い戦略の価値と活かし方を知りたい人
1, 書籍情報
今回は書籍『良い戦略、悪い戦略』の解説と見解に関して記述している。
2, 著者情報
著者はリチャード・P・ルメルト氏である。以下に簡単な略歴を記載する。
3, 解説と見解
本書はビジネスにおける戦略に関して言及されている。ざっくりではあるが目次は以下の通り。
本書籍は3部の18章で構成されている。いつものごとく"章"でまとめていたら長くなる、かつ乱雑化してうまくまとまらないと考えたため、今回は各"部"ごとに解説していく。
●序章:手強い敵
良い戦略とはどういうものか?
著者は「良い戦略の定義」を以下2つであるとしている。
①狙いを定めて一貫性のある行動を組織し、すでにある強みを活かすだけでなく、新たな強みを生み出す
②視点を変えて新たな強みを発見する
結局のところ、本書籍はこの2つの正当性を証明するために別視点から意見を提示したり、例題を出したりしているだけである。およそ400ページの書籍を読了するのは骨の折れる作業で、著者の言いたいことがわからなくなったという人もいるだろう。そんな時、この2つに立ち返ってほしい。
● 第1部:良い戦略、悪い戦略
この部では「良い戦略のもつ価値と基本構造、そして悪い戦略の定義」について言及されている。
ちなみに、この部は1〜5章で構成されている。
筆者の考える「良い戦略のもつ価値」とは以下の2つ。
①新たな強みを見出すこと
②新たな弱点を見出すこと
この2つの価値があるからこそ"良質な"戦略を立てる意味がある。
そして、良い戦略には基本構造があり、筆者はそれを「カーネル(核)」と呼んでいる。このカーネルさえ理解していれば戦略の立案→表現→評価、どれも簡単にできるようになる。
カーネルは次の3つから成り立つ。
①診断
状況を診断し、取り組むべき課題の見極め
②基本方針
診断で見つかった課題に対してどのように取り組むかの方向性
③行動
基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動
ちなみに、本書籍ではこのカーネルが頻出する。本書のキーワードかと思われるので覚えていた方が良い。
これまでは"良い戦略"について言及してきたが、本書籍ではタイトル通り"悪い戦略"についても触れられている。
悪い戦略とは以下の4つである。
①空疎である
魅力的な戦略を語っているように見えるが終始中身がない。横文字だったり賢そうな表現、ワードを使うってそれっぽく見せる。
②重大な問題に取り組まない
明らかに大きな問題があるのにもかかわらず、見て見ぬ振りor軽度と判断or一時的と判断する。問題自体が間違っていた場合、戦略の立案→表現→評価ができないため、問題解決にたどりつかない。
③目標を戦略ととりちがえている
目標達成のために具体的なアクションを述べず、希望的観測に終始している。
④まちがった戦略目標を掲げている
戦略目標とは、戦略を実現する手段のこと。これが重大な問題とは無関係だったり、アクションが実行不能だったりするとまちがった戦略目標となってしまう。
そして、悪い戦略をもたらすのは「誤った発想とリーダーシップの欠如」とされている。そのため、目標達成ができない場合、戦略の見直し("誤った発想"の修正)を図るか、リーダーを変更("リーダーシップの欠如"の修正)するか、そのどちらかが良いのかと。特にリーダーに関して、良い戦略には良いリーダーがつきものだが、悪い戦略には悪いリーダーがつきもの。"リーダーを変更する"というのは荒療治のような気もするが、ひとつの案としては有効打かもしれない。
● 第2部:良い戦略に生かされる強みの源泉
この部では「良い戦略はどのように強みが生み出され、そして活用されているのか?」ということついて言及されている。
ちなみに、この部は6〜10章で構成されている。
第1部では良い戦略の価値や定義、悪い戦略との違いについて見てきた。それでは、良い戦略はどのように強みが生み出されているのか?それは「テコ入れ効果(レバレッジ)」によってである。以下、本書籍からの引用である。
テコ入れ効果によって生み出された良い戦略は、「設計」に活用される。
設計について、以下、本書籍からの引用である。
特に「価値が最大化する最高の組み合わせを見つけることができる」という一文が印象的だ。ステークホルダーやスケジュール、コスト等の調整・管理をするのが設計というものだと考えていたが、もう一歩先にある"価値の最大化とそのための組み合わせ探し"こそが設計なのだと気づかされた。
● 第3部:ストラテジストの思考法
この部では「より良い戦略を練るために役立つ思考法」について言及されている。
ちなみに、この部は16〜18章で構成されている。
役立つ思考法について、主に以下の3つが取り上げれらている。
①近視眼的な見方をせず広い視野を持つための手段をもつ
“リスト”を作るのは近視眼的な考えに陥らないと著者は主張している。
②自分の判断に疑義の念をもつ
自分の頭の中で考えた結果、自分自身に論破されてしまうような論拠は、現実だと問題外。そうなる前にまずは自身で徹底的に疑い、理論武装しておく。
※疑義の念(ギギノネン)、、、疑わしいと考えること
③重要な判断をした際に記録する習慣をもつ
ログを取ることを習慣化すれば、その後に事後評価をして反省材料として活用できる。
4, Appendix
本書籍は例え話というか、具体例についての言及が多かった。勿論そこも大切であると思うが、不要であると感じた方は読み飛ばすかササッと目を通すだけで良いかと。
そして、以下に最も印象に残った一文を記載する。
“これ自分に言ってる?”というくらい、著者から直で指摘されているような感覚に陥った。まさに“悪い戦略”のもと、日々活動していたのかと。エネルギーとリソースの配分を明確にして、そこに集中投下していきたい。
次回は『意思決定のための「分析の技術」』についてnote投稿したい。