待ち合わせ
考えすぎてひどく落ち込んでいたことが、そんなの全部無意味だよ、だって特別なんでしょう?と脳内に直接突きつけられた日。文字より電話より触れられる距離にいることの全てを、自分だけを追う優しい視線で思い知る。
よく考えているつもりでも、自分だけが背負うつもりでも、全てつもりなだけでなにひとつ果たしてはいない。この人の前では嘘はつけない、と思った。ほんとうのことだけが見える。弱くてだめで不安定でも、それでも大切だからどうしても守りたいんでしょう?と私の内側から声が聞こえる。その声を引き出すのも他の誰でもないたった一人。
泣きそうで泣かなかった帰り際は、真ん中の駅で待ち合わせしたからだと思う。あとは君がちゃんと帰りの電車に乗れるか心配してたし、乗れてすぐに眠ってくれて安心したからだと思う。自分の感情より優先すべきものがあって安心する。そうひとつずつ掬い上げて実感していく。
二駅くらいの距離だったらよかったのにねってよく話しているけど、下手したら飛行機でお互いの住む街までいけちゃうくらいの切符代と時間をかけて真ん中の駅で待ち合わせするの、不思議だった。
ここは新宿ですって言われればはぁそうですかって思えるくらい全国どこでも同じようなテナントが集合した商業ビルと、でも吹き抜けのエリアからは絶対的なタワーがみえて、ほんとうは川沿いも歩いてみたかったけど、雨だったしまた今度っていうのがあってもいいよ。また今度をいくつ重ねて、そのうちのいくつをもう一度迎えられるだろう。まだまだもう少し先まで続いていますように。
人生オブベストオブ人生の豆大福。調べて整理券をもらってくれてありがとう。あと雨の日に良い感じのお寺も調べてくれててありがとう。
少し発音しづらい名前のお寿司屋さんの列に並ぶ。並んで待つのは平気だよ。横顔。まぐろがとーってもおいしかった。天ぷらも食べたし、ビールも飲んだ。おいしいっていうとめちゃくちゃ嬉しそうな顔をされている気がするんだけど気のせいかもしれない。そんな愛おしそうな顔であんまり眺められると恥ずかしいんですけど。カウンターで横並びもすき。小さめのグラスで心地よく酔わせていただいて、ごちそうさま。
川沿いに向かおうとすると雨足が強くなるから、どこかに隠れたかった。タワーの中は閑散として、キャラクターにも会えなかった。七夕の日のことを思い出していた。
時間があっという間に過ぎていく。雨の日はもう少しゆっくり進んでいく気がするのに、電話してる時と同じかそれ以上のスピードで夜になる。指相撲の基本は関節を押さえること。握力は7。傘はひとつでいいのは君の肩越しにも見える景色が夜だった。いつか天気のいい日に上ってみたい。その時見える景色はひとりでもふたりでも今までとはもうきっと違うね。そうやってまたひとつ特別をいろんな場所に置いていく。甘い煙の匂いがする。
かわいいふわふわの巾着にいちごの飴を入れてもらった。ハロウィンってこんなところにもあるんだ。エスカレーターの段差はちょうど良いからすき。できたらおそろいのお土産がほしかった。形にして残したいなんて珍しいことを最近は思ったりして、まだそんなかわいらしい部分があるみたい。
ひとつひとつ負担にならない軽やかさで二人の周りに希望を蒔いてくれるから、すぐに水をそそぐ。そうして芽が出て現実になっていくのを何度でもみせてあげたい。必要なものだけが残る、特別だから惹かれているんでしょう?って言われなくても問われている。うん、と答えるだけ。それだけ。
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