お仕事
夜の街を歩く女社員のNさん。
今やっている仕事が不調で、今日も夜遅くまで残業をしていた。
疲労と浮かない気持ちでため息が止まらなかった。
サラリーマンや若者の多い中で、一人小さな子供が街を笑いながら駆け抜けていく。
それを見てまた大きなため息をついた。
「おねぇさん」。声をかけたのは、その笑いながら駆け抜ける女の子だった。
「なんでそんなにため息をついているの?」と、その子が声をかけてきた。
Nさんは逆に質問した。「あなたはなぜそんなに笑っているの?」
「お仕事だから。」
「仕事?」奇妙な話だ。
女の子は言う。
「お仕事が楽しいから、というより・・・笑うのがお仕事だから楽しいんです。」
そう言って女の子は去っていった。
「・・? 笑うのがお仕事。笑いのが・・お仕事。」
翌日Nさんは珍しく早起きをした。
昨日のあの子の事が忘れられず、鏡に立って真似して笑ってみる。
「私・・・笑えるじゃない。」
車を動かして会社に着く。パソコンに向かい黙々と仕事を進めていく。
自然に彼女に笑顔ができる。
数日後Nさんが上司に呼ばれる。
「君この頃仕事がうまくいっているようだね。それになんだか笑顔もでて楽しそうだ。なぜだい?」
Nさんが笑って言う。あの日のことを思い浮かべて
「お仕事ですから。」
※12年前、12歳の私が書いたショートストーリー。仕事をしている今見返すと感じるものがある。