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8月31日は平日

 「募集中」のところに「8月31日の夜に」というお題があった。子どもの自殺は9月1日が最も多いそうだ。だから、8月も終わりに近づくと、無理して行かなくてもいいんだよ、という声が溢れる。しかし私の住む大阪府では、もう6年ばかり前から、夏休みは8月24日までになっている。ねらいは、授業時間を増やして学力を上げること、だそうだ。しかし、それで学力が上がったという話はまだ聞いていない。

 さらに言うなら、今年の夏休みは、中学生が8月1日から17日まで、高校生が8月7日から16日までだった。言うまでもなく、3月から5月の休校を埋めるためだ。日本では、授業の到達は範囲を終えた、終えないではなく、時間数で測られる。しかも、すぐにオンライン授業に対応した私立学校でさえ、その分は時間数にカウントされない。高校までは、授業として認められるのは「対面のみ」なのである。こうした状況に対し、私は三つの点から文句を言っていきたい。

1.休校中のスケジュールのお粗末さ

 これはもういろんなところで話題になり、新聞やネットニュースでも出ていることだが、公立の学校の休校中のプログラムはお粗末以外の何ものでもなかった。プリントの課題だけが配られるのだが、その内容も「課題、一応出しましたんで」のアリバイ作りのようだった。唖然としたのが中学校体育の「ラジオ体操のプリントを見て要点をまとめよう」である。写真と説明文つきでラジオ体操の動きが紹介されている。これについては、まとめるも何も、丸写しするほかはない。そして英語や数学はごくごく簡単な問題集のみ、何というか「副教科なめんなよ」という学校の叫びが聞こえた気がした。もちろんどの教科も、オンライン授業などできるはずもなく、その分の授業時間数を埋めるために、夏休みはガリガリと削られてしまった。

2.大学が叩かれる

 片や大学は、zoomやICTシステムを使って普通に講義をしていた。おかげで大学生の夏休みは削られていない。一部、新学期が5月になったところは夏休みもずれ込んだようだが、少なくとも学びはストップしなかった。それが、小・中・高が始まってみると「大学もキャンパスを開くべき」と的外れな批判が起こるようになった。今では「後期から対面をすべきだ!」「大学は勇気を出して!」などの声が上がっている。いやー、勇気があるとかないとかじゃないんですわ、人数も多いし、いろんな地方から人が集まっているので、リスクが大きいんですわ、ということだと思う。決して対面授業>オンライン授業ではないのである。

3.授業時間数と学力の関係

 休校中の課題が話題になった時、私はいろんな記事を集めていた。そして、中学生の課題に「ノートを隙間なく埋める」というわけのわからないものがあることを知った。実は、宿題をむやみに増やしたところで学力は上がらない。逆に、学ぶことの意義を見出せば、少々の遅れはすぐに取り戻せるそうだ。だから、苦行のような課題を出したり、やたら長時間授業をしたところで、あまり効果はない。

 そんなわけで、「8月31日の夜」が休みだった頃は、まだマシな時代だったのだ。もうずいぶん前から、焦燥の8月31日は姿を消してしまい、今やこの日は「ただの平日」と化しているのである。

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