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aからzまでの頭文字をタイトルにして、短編の小説を連載してます。 不定期配信。
頭の痛い A がいて、 A が頭痛中であることを知っている B がいて、 A が B に辛いことを話すときに「頭痛が痛くて…」っていうのは、「頭痛」という症状についての辛さを語る上で自然なことではないか。 B が A の頭痛を知ってるのに A が「頭が痛くて…」って言うと、 B 的に「ああ知ってるよ」みたいに微妙にミスコミュニケーションが生じる気がしませんかね。 「頭痛」を「カゼ」に、「痛い」を「辛い」、「頭がいたい」を「カゼをひく」に置き換えると、不自然さがわかりやす
朝散歩していたらうぐいすが鳴いていた。 もしかしたら私は、うぐいすを見たことがないかも知れない。 「うぐいす色」はうぐいすの色ではなく、メジロの色を指しているらしい。 梅にメジロがやってくるのと、 「梅とうぐいす」という花札の絵札が関係した勘違いから、 「うぐいす色」は生まれたとか。 花札の「梅とうぐいす」は、 花といえば梅。美しい鳴き声といえばうぐいす。 なので「梅とうぐいす合わせたら最高じゃない?」という発想で花札になった、らしい。 ただうぐいすは虫を食べるし
最近、人の数だけ信仰があるなって感じる。 宗教的な意味合いではなくて。いや、宗教的な意味合いも含めて。 で、特にそれに大きな影響をもつのが「知る」ということ。 信仰という言葉を使ったので宗教的にいうと、 終末を知る。カルマを知る。目に見えない世界を知る。 これによって、心を改めようとか、こういう生き方をしようとか、 もっというと、他の人からみて何でもないものに対して、怯えたり拠り所にしたりする。 宗教的でなくても、3.11の原発のと
「私は神様です」 「どうしたの急に」 「いろいろ頑張って、人を創りました」 「すごい。ありがとうございます」 「けど、あなたのことは冗談で創っちゃったの」 「何それ。めっちゃショック」 「ショックなの?」 「ショックでしょ。私は何のために生きてるのさ」 「案外気が楽かもよ。『失敗したー!! あ、まぁ冗談だしいっか』みたいな」 「『成功した―!! あ、まぁこれも冗談か』ともなるよね。それ」 「じゃぁ何のためにあなたは生きてるの? お金持ちになるため? 世界中のスイーツを食べつく
人に求めると辛くなる。 そこにあるのは自分だけ。 なら、その人を通して、さて、あなたは何を想い、どうしていくのさ。 それだけ考えていればいいよ。 人は人。 そう心から思えたときに、案外求めてたものが、すっと手に入るから。
なんで、失敗しないと気づけないんだろう。 なんで、痛みがないと変われないんだろう。
先日、虫の鳴き声を「声」として認識するのは、日本人とポリネシア人だけという記事を読みました。 http://www.mag2.com/p/news/233784 より正確にいいますと、「母国語が何であるか」によって、脳が虫の音を「声」として聞くのか、「雑音」として聞くのか、脳の働きが変わるそうです。 非常に面白い話です。私たちにしか感じられない幸せが、身近なところに広がっているのですね。 ポリネシアのこと、というよりもイースター島(モアイのあるところ)についても最近知
なんで目の前に見える現実よりも、起こるかもわからない未来を不安に思うのかな。積み重ねた今しか未来にならないのに。
今を生きるしかないんですよ。目の前のことにあることだけが、今のあなたのすべてなんだから。
人と話すのが苦手だった私は、学生のころから翻訳のアルバイトをしてました。ある程度英語に自信がついたころ、思い切って応募した簡単な通訳のお仕事がきっかけで、大学を卒業してからも私は通訳で生計を立てるようになりました。 人と話すのが苦手、というよりも自分というものに自信がない私がなぜ、もろに人とのコミュニケーションが必要な通訳のお仕事を選ぶのでしょうか。 その問の答えは至ってシンプル。このお仕事は、基本的に私自身がコミュニケーションのメインにはならないのです。 仲介
「いつものインストールと何も変わらなかったよ。案外あっさりしたもんだな――」 ヒロトはベッドに寝転びながらつぶやいた。 「便利なのか寂しいのかわからないわね――運命なんてものまでインストールできるようになるなんて」 ミオリの声が頭に直接響く。脳に組み込まれたICが、音声を直接電気信号に変えて脳に伝える。 「で、いつその"運命の相手"に会いに行くの?」 「ああ。明日さっそく会えるらしい。10時に駅で待ち合わせ」 「そう。気をつけて」 そっけなさが、その声の寂しさを隠してい
パチッ。 スピーカーから碁石の音が響く。女性の声がそれに続いた。 「白、4の五、コスミ」 会場に所狭しと並んだ椅子には、これまた所狭しと大勢の記者がひしめいている。会場前方上手のスクリーンには、2人の男が碁盤を挟んで向かい合っている様子が映しだされていた。上手側に座る男は、韓国のトップ棋士――イ氏である。もう片方の男の真横には、デスクトップパソコン用の大きさと変わらないモニターがおいてある――人工知能対局ソフト「BetaGo」が対局しているのだ。男性はこのモニター
西暦21XX年。外気圏を超えた宇宙空間に、一つの宇宙船が浮かぶ。地球から約10万キロメートル離れた場所に位置するその宇宙船は、月面旅行のツアー客を乗せ舵を切っていた。 「うーん。無重力ってやっぱり最高よね。文字通りどんな重圧からも解放してくれるわ。人類が地球を飛び出そうと進歩を進めてきた理由ってきっと本能的なものよ。そうに違いない」 ひとみは船内のフリードームと呼ばれる球状の部屋で、ふわふわと漂いながら猫がじゃれるような至福の顔をしてそんなことを言った。 「そうね。
「どうぞよろしくお願いします。あれはうちの美術館で一番の価値を持つ宝石なんです」 白金美術館の館長である溝口は、落ち着きのない様子で東堂警部に言った。 「ええ。我々も万全の対策をします」 東堂警部は手元の資料を見る。そのひとつに、犯行予告の書かれた手紙がある。 『8月10日 24時 少女のルージュをいただく 怪盗X』 犯行予告は怪盗Xからのものだった。『怪盗X』とはなんてベタな名前かと思うが、ベタに称されるということはそれだけ腕も本物である。 今年も8月に
「なーんていうか、一緒にいる時間が退屈になってきたのよねー」 夏海はベットにごろつきながら言った。両手を伸ばして伸びをする。 「はじめはさー、自分にないものを持ってる!って思ったの。私が思いつかなかったこととかビシィッ!と言ってくれるし」 ビシィッという効果音に合わせて突き出した右手人差し指は、力なく腕ごとベットに落ちる。 「けど、最近はそんな風に思えない。なんというか、頭いいのかなんなのかわからないんだけれど、細かいというか、理論ばっかりというか」 「夏海はいつも
騒がしいアラームの音。 掌を打ち付けるようにアラームの音源を叩く。 ベッドでうつ伏せになっていた園原は頭だけ左に向け、今しがた痛めつけたデジタル時計を見た。 時計には《7/20 Wed 27℃》の字が映しだされている。 (今年3回目の7月20日――、か) 少しそのまま物思いにふけてから、ベッドを出て身支度を整える。 ふと、机の上に置かれた日記帳を見る。手にとって、昨日――体感的には3日前に書かれた昨日の日記を読む。 『7月19日(火)晴れ 今日は夏休み前最後の