ルーズリーフ

ルーズリーフ、一枚分けてよ。
ちょっとした講義を趣味で聞きに行った。
私は人の話を聞くとき、メモをするのが癖でいつもメモ帳かルーズリーフを何枚か持っている。例に漏れず今回もシャーペンとルーズリーフを持っていた。
さて、講義がまもなく始まるというときに隣の青年が何の気なしに言った。
ルーズリーフ、一枚分けてよ。
ちなみにまったく知り合いではない。初対面である。一瞬聞き間違いかと思い隣を見るときちんとこちらを向いているではないか。やはり私に言っているのだ。反射的にどうぞと差し出せばありがと、とだけ言って何事もなかったように前を向いて先生の言葉を聞き出した。
本当にルーズリーフが欲しかっただけらしい。なかなかに肝の据わった青年であった。




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