僕のワンダフル・ジャーニーの感想(ネタバレあり)
イオンシネマ京都桂川で鑑賞。結構混んでたけど、こういう動物モノは客層の雰囲気がいつもと違っていて面白い。特に今回は本編よりエンドロールに流れる犬の写真の所ですすり泣く人が多くて、自分の所の犬ちゃんの事を思い出しながら感情移入している人が多いのかもしれない。
「僕のワンダフル・ライフ」からの続編。
前作はまず犬を魅力的に撮るという犬映画としての完成度が抜群に高かった。犬達がみんな演技してるとしか思えない素晴らしい顔つきで全く冷める事無くストーリーに没入する事が出来て、本当犬演出の人の仕事が半端なかった。
人間ドラマ描写もかなり丁寧で何の気なしに観に行った人でも十分楽しめる映画だと思う。僕は犬好きなので犬が可愛ければ何でもいいやと思って観に行ったらかなり拾い物感があって凄くうれしいサプライズを味わった。
特に僕が好きなのはメインのイーサンとは関係ないのだけど、途中に出てくる警察犬として働くエピソード。
ここに登場するベイリーの相棒である警察官カルロスの哀愁漂う存在感が素晴らしくて号泣した。彼の最後に「犬が撃たれたんだ」と無線でつぶやく所の表情とか思い出す度泣きそうになる。
その他、黒人の大学生の女の子のエピソードとか他の話も素敵だったし、年老いたイーサン役のデニス・クエイドの存在感も良かったし、素晴らしい所が沢山詰まった映画だった。
それで観た今作なのだけど、観る前に不安に感じていたラッセ・ハルストレムから監督交代が響いたのか全体的に犬の愛らしさ描写のみが前に出て、人間ドラマに関しては続きを作る上での記号的な展開ばかりになっていたのが残念だった。
簡単に言うとこのシリーズは「犬が一緒にいたら人生に降り掛かる災難や挫折も乗り越えられる!」というテーマでずっと描いている。前作は演出力でそこをとても感動的に描けていたと思うのだけど今作は不幸の記号化がとても機械的に感じて観ていて冷めるシーンが多かった。
犬嫌いの金遣いの荒い母親、頭おかしい最初の彼氏、トレントのガン、などベイリーとCJの関係を盛り上げる為だけにあるって感じで全然心に響かなかった。
その中でも1番気になったのが、トレントのガン描写で、ベタベタ過ぎる演出がはっきり悪質だと思った。
ここは要は今付き合っているトレントの彼女を別れさせるきっかけ作りとCJとの絆を深める展開の為にやっているのだけど、本当にその為だけにしかやっていなくて、ベタな看病描写をつなぎ合わせただけで全く生身の人間が病気と闘っている様に見えなくて本当ひどい。
ラストの医者からの電話かかってきて「え!治ったんですかー!やったー!」みたいな報告の後、前と同じ様にすぐ眉毛生えてた所で本当反吐が出そうになった。
あと結構大きい問題に感じたのが結局ベイリーが彼女の人生を操っている様に見えるのがモヤモヤした。
CJとトレントをやたらとくっつけたがる理由って結局最初に会っていい奴認定したからっていう理由だし、彼女が今まで付き合っていた男を単に悪役として片づけるのはどうなんだろか。まあ最初の彼氏とかは完全にアウトな人だったのでしょうがないにしても、中盤で出てくるお金持ちの彼氏ってそんな悪い奴なのか僕にはよく分からなかった。
ベイリーの陰湿な嫌がらせがきっかけで別れる感じになったけどこれを正しいとこちらに価値観押し付けてくるの凄い嫌。
あともう一つ大きい欠点が単純に今回の主人公であるCJに全然魅力を感じない事。
幼少期や少女時代のパートは良いとしても、大人になってからのミュージシャン描写は全く駄目だと思った。
母親がお金奪ったとか不幸な生い立ちが色々あるにしても、それがミュージシャンとして成功出来ないのと全く関係しない。
だって彼女が成功しない理由って人前で歌うのが苦手という理由だもん。そりゃ売れないだろ!
いやそれならそれでいいんだけど、なんで人前で歌えないのかしっかり説明して欲しいし、それでもステージに立とうとしてやっぱり駄目で失敗するとか、人前で歌えないならネット時代だし直接音楽を配信するとか別のやり方で売れる努力をするとか、いっそ若い時のイーサンの様に夢をあきらめて別の生きる道を見つけるとか、色々な展開が出来そうなのに何もしないでずっとダラダラしているのが個人的にめちゃくちゃイライラした。そりゃ二番目の彼氏も愛想つかすよ。
トレントが彼女の曲が素晴らしいと信じているんだけど、だったら彼に曲を聴かせて感動させるシーンはいるでしょうよ。何も知らないくせに「彼女の曲は良いんだ!聴いた事ないけど!」ってずっと信じているとか狂人じゃん。
僕が何か見逃しただけかも知れないけど、母親と仲直りして、父親の手紙を読んでから自分の曲に自信が出てきて歌えるようになるのも何故かよく分からなかった、んでバーでライブして大成功してるのもよく分からなったし、その後ラストシーンで「なんか売れた」みたいな描写が入るのも意味分からなかった。本当意味分からない。
と、文句ばっか言ってるけど、超素晴らしい要素が一つあって、それは何といっても年老いたイーサン演じるデニス・クエイドの圧倒的な魅力。
ほぼ最初と最後だけど彼が出るパートは全部良かった。
段々と年老いていくイーサンとベイリーを観ているとやはり前作の子供時代の描写とか思い出して凄く切なくなる。
今回の映画で一番最初にイーサンに見守られながらベイリーが死ぬシーンで愛する人は奥さんだけになってしまったのに「次生まれ変わるなら孫を助けてやってくれ」と自分の元ではなく血の繋がらない孫の為にベイリーを送り出す所でまず泣いた。
その後月日が流れ再びベイリーを連れてCJが戻った所の、ヨボヨボした足取りや、たどたどしくなったしゃべり方だけでもうダメ、涙が止まらない。
そして最終的についにイーサンの方が亡くなってしまう。
これまで二回見送られてきたベイリーが逆に彼を見送るのだけど、その後ベイリーが亡くなった後もう転生を描かないのが本当に良かった。
今回はCJの為に何回も蘇ってきたけど、やっぱりベイリーはイーサンの魂の元へ向かうのが正しいハッピーエンド。
単純に天国に行けて良かったねとも、思えるけどベイリーが走馬灯の中で見てる幸せな夢にも思えてきて「ウゴウゴ」と変な声が出る程号泣してしまった。
という感じでかなり観ててアホらしくなる展開も多いのだけど、ラストのベイリーの旅の終わりをしっかり描ききってくれた点で泣きに泣かされたのでなんだかんだ大満足してしまった、、、
俺の負けです。