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さらば愛しきアウトローの感想(ネタバレあり)

MOVIX京都にて鑑賞。2回観たけど、どちらも混んでた。

僕自身はロバート・レッドフォード作品はさほど観れてはいないのだけど、「キャプテンアメリカウィンターソルジャー」を観た時に、ヴィランを演じたレッドフォードが出ている意味を色んな映画好きな人に解説してもらい、その繋がりで「コンドル」や「大統領の陰謀」を鑑賞。

「キャプテンアメリカウィンターソルジャー」は国のあり方をキャップを通して間接的に問いただす内容なのだけど、かつてロバート・レッドフォードが色んな映画で演じていた役柄だったそうな。
ルッソ兄弟もオーディオコメンタリーで「時代が違ったらロバート・レッドフォードがキャプテンアメリカを演じていた。」って言ってたのが印象的だった。

他の作品をそんなに観ていないので全然違うかも知れないけど、イーストウッドとかと同じくその時代その時代のアメリカを象徴する様な映画に数々出てきた名優というイメージがある。

ロバート・レッドフォード御大の貫禄

とにかくロバート・レッドフォードの魅力がこの映画の半分くらい占めている。ひたすらカッコよくてチャーミング。
実在の犯罪者を大物俳優が自分の実人生の歩みと共に好演する映画、最近だと「運び屋」にかなり近い印象がした。

それと個人的に近いというか、裏表に感じたのは「アメリカンアニマルズ」。
実録犯罪映画としてのアプローチも違うし、映画としてのルックも全然違うのだけど、改めて僕ら凡人(アメリカンアニマルズ側)は、あっち側には簡単にいけないというのが分かった。

この映画の主人公の様に破滅的なまでに躊躇なく何かに夢中になれる人間。(ロバート・レッドフォード本人の生き方も含まれているのかもしれない)アメリカンアニマルズの彼等は誰一人このフォレストの様に生きられなかった。
フォレストは彼等が息をするのも苦しそうな計画実行中すら楽しんで出来る余裕があるし、例え失敗したとしても自分の価値は下がる事はない、無謀な挑戦を続ける事こそ自分の人生の価値だと信じている。
もちろん苦味もあって、彼がこういう生き方を選んだ事によって一度も会った事の無い娘から人でなしと思われている目線もしっかり入るので、やっぱ褒められた生き方じゃないのは明白。

劇中で彼が話す内容がロバート・レッドフォードの人生論や俳優論にしか聞こえてこなくて味わい深い。
パンフレットで町山さんが、ロバート・レッドフォードのこれまでの作品のオマージュの盛り込み方を丁寧に解説してくれいてありがたいのだけど、そういうレッドフォードファンに対するサービス要素だけが全てじゃなくて、全編に現在進行形のレッドフォードの今しかない魅力が溢れ出ているからこそ、これが最後っていうのがファンじゃなくても切なくなる。

終盤ついに彼が捕まり留置所でジュエルに話す所で、これまでの脱獄シーンをダイジェスト的に見せるんだけど、ここでレッドフォードの若い時の映画のシーンが入ってきたりするので、実在のフォレストの話なのかレッドフォードの人生を振り返ってるのか境界が無くなりクラクラしながら泣いてしまった。

その後彼女の為に脱獄はやめて刑期を全うして普通の人生を歩もうとするのだけど、ここから観ていて少し辛くなってきてしまう。あのチャーミングだった笑顔が無く生気を失い、生き甲斐を無くしてる様に見える。
彼女もそれを薄々感じているのか、表面的には落ち着いた生活を送っている様に見えるのに、絶妙な塩梅でどことなくギクシャクしている感じを表現していて演出が素晴らしい。人生のままならなさが本当味わい深い。

ラスト結局は強盗生活に戻り「彼は笑っていた」「チン!」で茶目っ気を残して映画が終わっていくのも「(アメリカでは)結局引退作この次のエンドゲームになってしまってるやないか」っていうロバート・レッドフォードの偉ぶった感じがない良い意味で締まりの無い引退にピッタリ合っていて好き。(まあ歴代興行収入1位の映画が引退作っていうのもめちゃくちゃ凄いとは思うけど)

脇を固める俳優陣

他の俳優さん達も素晴らしい。
シシー・スペイセクは微細な表情の変化がとても素敵。
僕はキャリーで彼女が卒業パーティの為に口紅を塗るシーンで毎度泣いてしまうのだけど、それにもなんとなく通じる幸薄そうなのに少女の様な佇まいで、なんか涙腺を刺激されてしまう。
フォレストと彼女が一緒に過ごしているシーンは全部最高で、僕が特に好きなのは腕輪を買うシーン。フォレストに連れられて高価な腕輪を盗もうとしてしまう所で、彼女は立ち止まり二人に少しだけ距離が空いてそれが引きで撮られる。
ここで「彼女はそっちに連れていけない」というのが示唆されている様で二回目に観たらかなり切なくなった。

彼を追いかけるハントを演じたケイシー・アフレックも素晴らしかった。
フォレストの生き様を知る事によって彼の生き方も明るい方に向かっていくのが、静かに描かれていくのもとても上品。

40歳の誕生日に「ここからは下り坂」と同僚に言われたりするのだけど、常に「子供の自分が今の自分を見て誇らしいと思うか」という事をいくつになっても突き詰めてきたフォレストの生き方を彼なりに生活に取り入れ人生を楽しむ事を学んでいく所にじんわり感動する。

渋いフィルムの質感

あと映画が始まってまずビックリした16ミリフィルムで撮影された画の質感のカッコ良さ。フィルムは生産されているけど、カメラはもう作られてないなので15年以上前の中古品を探して撮影されたそうな。
このいつ撮られた映画なのか分からないのが、この作品が持つ普遍的な魅力と繋がっているし、なんていうかロバート・レッドフォードが映画にそのまま閉じ込められていく感じがして観ている間ずっと多幸感が溢れてくる。

今後俳優は引退しても隠居する気はなくて監督やプロデュース業とかはまだまだやる気満々らしいので映画には関わり続けるらしい。

スクリーンで拝めなくなるのは寂しいけど、そちらでの活躍も楽しみ。

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