ワイルドツアーの感想(ネタバレあり)
出町座で鑑賞。今日もホットレモンジンジャーが美味い。
愛おしい生活感
三宅唱監督は日常的な人と人とのやりとりの切り取り方が本当上手い。
前作「君の鳥はうたえる」も自然な会話などが印象的だったのだけど、同時にめちゃくちゃ芸達者な役者さんばかりで「華がある映画」でもあった。
今回はそういうスター性のある人は出てないし、演技未経験の人達も多い。でもだからこそ、より登場人物たちが身近な存在に感じた。
群像劇でもあるのだけど、ただ単にドキュメンタリーっぽい記録映像が並んでるだけにも見える。iPhoneで撮った映像も入ると本当に近所の学生が撮った身近な記録映像に感じる。
群像劇の要素
基本的にはウメちゃん、タケ、シュンの3人の登場人物がメイン。
彼らがキャッキャッやってるのを観てるだけで幸せな気持ちになる。最終的にどういう形で映画の中での関係性が終わるのか分かって考えると、最初の「なんていう風に呼んだらいいですかね、、、?」ってセリフとかを思い出すだけで味わい深い。ジワジワと変化していく関係性が丁寧に描かれていた。
この3人だけじゃなく悪い人は出てこない。みんなちょっとズルい所があるけどそれもひっくるめて良い人しか出てこない優しい映画だった。
今作を観た誰もが思うだろうけど、ウメちゃんは、まあ可愛い。出てきた瞬間に映画を観てるこちらも一瞬で好きになってしまうチャーミングさ。少女と大人の間って感じを絶妙なバランスで体現していた。その感じが中学生2人からすれば、「高校生になったら俺も大人みたいなもんだし付き合えるんじゃないか、、、」と思ってしまうのもめちゃくちゃ分かる。
そんな2人からすれば最後のアメリカに行くという彼女の選択は想像も出来ない程、壮大な挑戦に見えたんじゃないだろか。彼女の決心の強さと、まだ大人に届かない彼らの挫折、それぞれの成長のギャップみたいなものが描き方が切なくて好きだ。
途中シュンが女の子から告白されるシーンでウメちゃんに比べたら全く魅力を感じてないのがヒシヒシと伝わってきて相手の娘の立場になると辛い。ここの撮り方はめちゃくちゃ分かるけどリアルな意地悪さで最高。
一方のタケの告白シーンが愛しさ。あの可愛い手紙、観ながら思わず変な声でた。あと彼は平静を装っているけど内心グラグラなのが分かるのが可愛いらしい。
ラストの変な帽子のチョイスが不安な事この上ないけど、これからいい高校生活を送れる事を心から祈っている。
映画的な瞬間
ドキュメンタリーっぽさもあるけど、絵としてグッとくるところも沢山あって、例えば編集ルームみたいな部屋でこっそり見てる動画や写真が反射した状態で、登場人物の表情が写るシーンの映画的な緊張感。好きな人の画像を見てる顔をじっくり写すカットが素晴らしい。
あと「きみの鳥はうたえる」で染谷将太が服褒める所にも通じるんだけど、シュンの「その髪型いいね」とかああいうサラッとして好意を表す会話シーンの演出が三宅監督は本当上手い。
こんな感じで良かった所を書き出しているけど、この映画はそういう部分が魅力という訳でもない気がしてくる。
何気無さすぎて魅力が伝えにくいんだけど、観てる間「なんかいいなぁ」って感覚が続いてく映画だった。観て良かった。