ノーザン・ソウルの感想(ネタバレあり)
出町座にて鑑賞。
最近近くの喫茶店のオムライスにハマっている。
上映からかなり時間経っているはずなのにまだまだお客さんが多かった。
予告で観た時、イングランドの貧困な若者が過激めなカルチャーに目覚めていく、まあよくある青春映画なんだろなと、あんまり興味が湧かずスルー予定だったんだけど観た人の熱量の高さが気になって鑑賞、めちゃくちゃ面白かった、、、
パンフレットに載っている監督のインタビューを読むとトレインスポッティング的な英国の若者の過激な日常を描くみたいのは主題ではなく、あくまで「ノーザン・ソウル」というアンダーグラウンドなユースカルチャー文化を知って欲しいというのがメインの映画なのにまずビックリ。
映画が出来た不思議な経緯
監督はエレイン・コンスタンティンという女性監督で今回が長編デビュー作になる。
本当はノーザン・ソウルシーンにいる若者のドキュメンタリー映画を作るつもりだったらしいが、現在ノーザンソウルに夢中な若者があんまりいなくて撮れないということで、自分の若い時の体験を元にフィクション映画として作ろうという方向転換をして出来たという面白い経緯の作品。
この辺の制作秘話やノーザンソウルってそもそも何?っていう疑問などめちゃくちゃ充実した内容でパンフレットに書いているので購入オススメ。
青春ドラマ描写
僕自体はクラブカルチャーのことは全然知らないし、そもそも音楽も全く詳しくないので劇中で流れる曲は聴いたことないものばかりなんだけど、彼らが何故ノーザン・ソウルが必要だったのかは痛いくらい伝わってくるし、ドラマとして本当に素晴らしかった。
主人公ジョンは学校では生徒にも先生にも馬鹿にされていて、両親は二人とも話が通じないし居場所がない。唯一の理解者は祖父だけど施設に預けられていてあまり会えない。
そんな彼がユースクラブでノーザンソウルで踊るマットに出会って喧嘩に思わず加勢したことで友情が芽生えていく。ここで泣かせるのがジョンが外に対して唯一アクションを起こした壁の落書きに対してマットが褒めるところ。行き場のない彼が初めて自分に共感してくれる人が出来た瞬間。
飲んだクスリのせいで完全に目がイった状態でマットからもらったテープをずっと聴いて歌詞をノートに書き写すシーンは笑える所でもあるんだけど、自分が夢中になれるモノと、自分を対等に見てくれる友人を二つ同時に見つけられた喜びがにじみ出ていて泣けてしょうがなかった。
そこから二人でワイワイしてる間はよかったけど、色々な人間が入ってくることで徐々に二人の関係性が壊れていく。
当然二人が夢を叶えるためには外の世界でアクションを起こしていかなければならないので、人との繋がりも複雑化していくんだけど、それぞれの世界との向き合い方の違いで気持ちが離れていくという青春映画の醍醐味な部分も上手く描いていた。
その後、友人の死など色々あってジョンは実家に帰ったりマットは工事現場での仕事を始めたり、二人とも大人になる事を選んでいくのだけど、ジョンがマットに会いに行き拒絶される所で、「こういう苦みを残してしんみり終わっていくラストも僕は好きだぜ」という態度を決め込んで映画が終わっていくのを待っていただけに、ジョンが二人が初めて心を通わせた曲の歌詞を壁に落書きをしているという号泣演出は歌詞の内容も相まって完全にやられた。
「あの頃には戻れないけど、子供のまま大人になる事も出来る」という作り手の優しさに溢れた目線が本当素晴らしい。
観察的な目線
泣かされたとは言いつつ映画自体は登場人物に起こる事を淡々と撮っていってる感じであまりベタベタしない印象。
かなりアウトな人たちも多数出てくるんだけど彼らそれぞれを否定も肯定もしない。あくまでこの映画でやりたいのはノーザンソウルというカルチャーの再現とその周りにいた若者の生身の実在感を表現することだと思う。特にジョンがドラッグを飲む意味が気持ちよくなりたいからではなく、気持ちよく踊りたいからという理由は凄くリアルな気がした。
あと個人的にはマット役のジョシュ・ホワイトハウスのヘタレイケメンぷりが良くて気になった。黙ってると超かっこいいのに喋りだすと残念な感じを愛嬌たっぷりで演じてた。
次のゲースロのスピンオフで主役演じるみたいなのでそちらも楽しみ。