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「カモンカモン」の感想(ネタバレあり)

マイク・ミルズ作品

前作の20センチュリーウーマンが好きだったので今作も鑑賞。
前作と同じく小さな家族の物語を通して観てるこちらの人生の向き合い方を刺激する様な素晴らしい作品だった。
それと子供と母親の関係性の描き方にとても重点が置かれている印象で、母親の役割を自分がやることで母親の存在と向き合っていくというのも監督自身が疑似体験している様な気がして「20センチュリーウーマン」から引き続き「母親」というのも作品のテーマになっていたと思う。

モノクロである事の意味もあって時代を問わない誰の人生にも共感出来る物語の持つ普遍性みたいな部分をより強調する様な効果があったと思う。

子供の世界の見え方

今作は子供の見ている世界に真摯に向き合おうとしている感じがして、彼や彼女達がどういう風に世界を見ているのかをとても深く考えて撮っている気がした。

一緒に居ることに慣れて分かった気になった瞬間にまた別の表情を見せて分からなくなる子供と向き合う描き方がとても真摯だと思った。

そしてこれが子供に限った話ではなく、「他者を理解出来る気持ちになる事」の傲慢さみたいなものも示していて、彼との関係を通して母親や妹、妹の夫、元恋人等これまで自分の周りにいる人に対しての見方が変わっていく感じが面白い。
ただ最初の方で他者の事を分かった気になる事を「ペラッペラ」と言われるんだけど、でもやっぱりその先にしか素晴らしい関係性を築く事が出来なくて、ラストで彼等の合言葉みたいに「ペラッペラ」が繰り返されて最初の印象から裏返るのがとても感動的だった。

母親を母親の役割として捉える事を真っ向から否定する様なヴィヴの苦悩にもしっかりフォーカスしているのも良かった。
そしてその苦悩をしっかり子供も見ていて分かっているというのがジーンと胸にくる。

「僕は覚えてるけど君はぼんやりとしか覚えてないと思う」というセリフがあったけど、でもだからこそ彼がやっている子供達の声をそのまま残す事の意義や、もっと広く言うとその希望を描いたこの映画が残っていく意義も感じる。

ジョニー

登場した時点から優しい人間なのは分かるが、亡くなった母親との回想でも分かるけど、それ故の優柔不断さが欠点でもある感じ。

演じたホアキン・フェニックスは当然の様に圧巻の演技力で、僕はエキセントリックな役の印象が強かったのだけど、今回はとても穏やかで自然な雰囲気。優しいけど実は他人に向き合うことが出来ていない不器用な所から段々と成長していく様子を丁寧に演じていてやっぱり凄い。

大丈夫じゃない時は大丈夫と言ってよいとジェシーに伝えるラストシーンで、彼自身も強がりをやめて人生と向き合う事が出来たのを示しているみたいで、とても胸に響く素晴らしいシーンだった。

ジェシー

今回のもう一人の主人公と言って良いジェシー。
子供っぽい面を前面に見せながらも「自分自身でも自分の気持ちが分からない」という自分の幼さをちゃんと理解できている点がかなり賢いとも言える。

親が居ない子供、子供が居ない親になるやりとり。本当の家族なのに擬似家族の寸劇をするのが家族の定義を自分の中で再確認しているみたいで無意識かもしれないけど彼の中でとても重要な行為なのだと思った。

彼がジョニーの目の前から消えるシーンが2回あるのだけど、どちらもとてもスリリングで観ていて本当にドキドキした。
特にニューヨークというのが怖くて、大都会で一瞬で子供が見えなくなる恐怖感が凄い。

「人生は思ってた事は起きない、だからこそ先へ先へ」というセリフがタイトルの意味になっているのだけど、ここのシーンがさりげないけどとても感動させるバランスで素晴らしい演出力。
本当にワンシーンワンシーンが愛おしく、観てるこちらも凄く前向きな人生讃歌的なメッセージを受け取れる大傑作だったと思う。

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