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ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒の感想(ネタバレあり)

T-JOY京都で鑑賞。
初週の土曜に観た割にガラガラだった。
スタジオライカの前作のKUBOの時は吹き替えと字幕両方あったし、お客さんもかなり混んでいた記憶があるのだけど、今回は宣伝も力が入ってない感じで客足もなかなか寂しい。
アメリカで興収大コケしたらしいのでしょうがないかもしれないけど作品のクオリティとは無関係なのでもったいない。

スタジオライカ最新作。
「パラノーマンプライスホローの謎」が大好きで新作が出たら毎回観ている。個人的に前作の「KUBO」はそれほど好きになれなかったのだけど今回は文句なしの大傑作だと思う。

理想とする英国紳士像

今作は僕の大好きな「パディントン」シリーズとかなり通じるテーマ性があると思った。
新しいものを受け入れない古い体制の有害さや、自分のプライドや名誉より誰かを思いやる事で人生は豊かになっていくという結論の描き方とかめちゃくちゃパディントンっぽい。
というか全世界に求められている僕たちが憧れる英国紳士像が「007」的な男らしさから「パディントン」的な性とかを越えた思いやりの紳士像に変わってきているのではないかと思う。
ラストの女性とのキスシーンでのハッピーエンドを否定し、女性側の自立こそがハッピーエンドに持ってくる所とか明らかにかつての「007」的な紳士像に対して「今はそれじゃないでしょ」という批評性に感じた。

何よりタイトルになっている「ミッシングリンク」という失われた進化の過程が「新しい何かを受け入れる」という僕達の小さな心の変化と繋がっているんだよ、と提示するラストが見事過ぎて本当に感動した。

豊かなストップアニメーション表現

まあしかし何といってもスタジオライカの魅力と言えば、製作の事を考えて観ると気が遠くなる程クオリティが高いストップアニメ―ションの表現。
もう冒頭からネス湖での水表現やボートの中にある小さな小道具に至るまで一つ一つの質感を味わうだけで幸せな気持ちになる。


あとライカはキャラクターのデザインが本当に秀逸だと思う。冒頭のネッシー全体像が出てきた時の「ちょっと思っていたのと違う、、、」みたいなマヌケ感とかたまらないものがある。
もちろんスーザンのデザインの愛らしさとかも言うまでもなく最高。

それと今回はロケーションの数が異常に多くてとてもリッチ。
色んな国を旅するので前作の「KUBO」の様に和のテイストで統一されている訳ではなく、ロンドンの街並み、アメリカの西部劇的なシチュエーション、何度も出てくる船や列車のデザイン、インドの遺跡(インディジョーンズ魔宮の伝説にそっくりで興奮した)、そして最大の見せ場のシャングリラの森など、テイストが違うモノが沢山観れてとても楽しいし、一つ一つ作り出しているかと思うと気が遠くなる。

しかしアクションシーンになるとストップモーションアニメらしい癖が出てくるのがやっぱり面白い。
特に何度か出てくる落ちそうになり何かに掴まっている時の重量感の軽さとかが普通の3DCGアニメとは違う味わいになっていた。

登場人物

ライオネル

パンフを読んだら監督のインタビューで「シャーロック・ホームズ」と「インディ・ジョーンズ」を話題に出してたけど、ちょうどその二人を足した感じのキャラクター。冒頭のネッシーと水中で互角に渡り合っている所とか強すぎて笑った。倶楽部の人達の様に頭が固い訳じゃないけど、名誉やプライドに縛られた心が解き放たれて「進化」という言葉を口に出す所が凄く素敵だった。

グレイテスト・ショーマンでもそうだったけどこういう若干サイコめな紳士役はヒュー・ジャックマンはお手の物だな。

スーザン

登場シーンからライオネルと打ち解けて、すぐに旅立つまでのテンポの良さがとても良かった。

誰かに教わった訳ではなく言葉や文字の書き方を全部自分で学んだ点がパディントンと違う所で、一人健気に森の奥でコミュニケーション能力を磨いた事を思うと、より孤独の悲痛さが増してくる様で切ない。

ラストは生物的な群れを探すのではなく、一つの命として自らの意志で生きていく場所を選び取る所に着地するのが感動的。かつて憧れていたシャングリラの面々に対して「僕はあなた達の様にならない。進化していくのだ。」というのを示す為にやるあれがとてもくだらないのに凄くカタルシスがあった。

アデリーナ

インディ・ジョーンズに出てきそうな強いヒロイン感で描かれつつ、結局男の腕に抱かれキスをする様な前時代なラストを軽やかに否定する所がかっこいい。夫や前彼のライオネルに愛情はあるのだけど、自分の人生を生きる事こそハッピーエンドに持ってきた所がやっぱり今の映画として圧倒的に正しい。

ライオネルのケツを引っぱたく様に怒鳴る度に声を出しているゾーイ・サルダナが浮かんできてこちらもぴったりな配役だったと思う。

という感じで何故アメリカで興行収入そんな振るわなかったのか謎だけど個人的には前作の「KUBO」より僕はこちらの方が好き。
本当素晴らしかった。

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